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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
245/3925

強襲、グレッセ王都!・覇王との邂逅、目を覚ます深淵その三

あー、今日はいつもより酷いかも知れない。


変なテンションで書いちゃっていつも以上に安定してないかも。


――――昼もまともに喰ってなかったし…………。


つーか、今朝まで普通に使えてたパスモが突然逝っちゃった精神ダメージが執筆に影響を及ぼしたのかも知れない…………(一万円近く残ってたのよ…………)

「オォォォォォッ!」

「流石は亡霊。言うだけは――――ある!」


 命知らずを絵に描いた様な無謀さで、亡霊ことカーネスが覇王コルヴェイ王へと接近。

 防御なんて全く考えず、攻めのみに重きを置いた攻撃的な動き。右手に長剣“ダインベリテ”

を、左手には短剣“ノズガルト”を逆手で持って切り込む。


 長剣は袈裟切りに振り降ろし、覇王がそれを一歩引いて避ける。次いでカーネスが一歩踏み出しながら短剣を斜めに斬り上げるのが、これもやはりコルヴェイ王には届かない。

 それ所か、左手を王に掴まれ回避行動を潰された。そのままカーネスの胸に覇王に相応しい威力を秘めた拳が叩き込まれてしまう。


「ぐっ――――ッ!? アァァァァァ!」


 胸へドンッと襲い来る衝撃、その所為で呼吸が一瞬停止する。しかし、カーネスは怯む事無く左足を強化しハイキックを繰り出す。掴んでいた左手を解放して王は後ろへ跳躍。回避に成功するが――――――――。

 亡霊は両手の剣を放り投げて追いすがってくる。両の脚に強化を施して加速しながら回転蹴りを繰り出した!


「脚力強化……グレッセ王の形見か? 残念だがその程度――――」


 コルヴェイ王は流れるような動きで右足を一歩後ろへ、左足を強固な軸として大きく脚を振り上げる。


「祝福に頼るまでも、ないっ!」


 彼の覇王は迎撃を選択し、その為に取った方法は亡霊と同じ。

 ――――互いの脚が激突し、凄まじい威力で身体を揺らす。


 祝福による強化で一枚上手かと思われた亡霊だったが――――。



「チッ……、オォォォォォアァァァァァッ!」

「フンッ!」


 打ち負けたのは彼の方。舌打ちしつつ、今度は左脚を繰り出せばコルヴェイ王も合わせ鏡の様に動く。

 再度の衝突。叩き込まれた打撃が脚からビリビリと流れてきて、チリチリとまたはズキズキとした痛みへ変わって亡霊となった――――少なくとも、そう思う事で死中に活を見出さんとしているその身を苛む。


(なんて蹴りだ……! 能力に頼らない身体能力がまさかこれ程とは……それに――――)


 ぶつかり合った脚を両者とも引く、今回は打ち負ける事はなかった――――が、その代わり左足はダルいほどの熱を帯びていた。

 一方はこの有り様だと言うのにコルヴェイ王は涼しげな顔だ。


「オォォォォォォォォォォッ!」


 気だるい脚を闘志によって奮い立たせ、もう一度左での攻撃。熱を帯び痛みを主張する左では軸足として使うには荷が重い。何発耐えられるか解らないが…………何とかするしかない。


 ごっ、と鈍い重低音。今度は短めに、それを三度奏でる。ミシミシと骨が軋み、筋肉が悲鳴を上げるように熱を発し続けている。


(――――これが遊びか……! 既に命亡き亡霊とはいえ、これでは身が幾つあっても…………)


 打ち合いから一度離れ、相手の強さに感嘆。そして同時に己の力量とあまりにかけ離れていると知り落胆。――時間稼ぎも満足に出来ないとは口惜しい……!

 悠理の時間を稼ぐ為に亡霊と称し、そこに統べてを賭けるつもりだったのに……自分はそれさえも!


 湧き上がる怒りを活力として亡霊となった騎士が突き刺す様な鋭い蹴りを放った。

 速く精度の高いそれはコルヴェイ王の懐へ潜り込み、胴へと突き刺さ――――。

  

「ヌ――――フンッ!」

「ッ! しま――――!?」


 ――――刺さる直前、覇王が取った行動は――――踵落とし!

 亡霊のつま先は彼の踵によって打ち落とされ、そのまま地面へと縫い付けられる。

 コルヴェイ王の脚が脚の甲をガッシリと押さえつけ、王はすかさずその脚を踏み込んだ。 


「良くやった。褒めて使わす――――が、ここまでだ」

「ぐ…………ガ……ァ……!」


 ――ゴキッ…………、そんな不気味な音だった。コルヴェイ王によって砕かれた亡霊の脚の甲……。襲い掛かる激痛に膝を着き、絶叫が喉から溢れ出そうになるのを堪える。

 所詮、亡霊と名乗っても彼は人間だ。だから亡霊の様に痛みを感じない、と言う事は有り得ない。


 最早、まともに立つ事すらままならないだろう。ここまで、こんな目の前までコルヴェイ王を射程内に捉えたというのに…………。工程は最悪でも辿り着いた結果は最良である。


「ま、だっ!」


 だからこそ“時間稼ぎ”に矜持を賭けた男は諦めない。コルヴェイ王の脚をガッシリと掴み、その身体を固定する。

 起死回生の一撃は――――ある。問題はその一撃をまともに放てるかどうか、だが…………。


「無駄だ、我とお主の間にある差は気迫だけでは埋められぬ」

「はぁ……はぁ……それは――――どうかな?」


 どうやら覇王はまだ気付いていない。油断と呼べるほどの隙ではないが、少なくとも好機ではある。

 見下ろしてくるコルヴェイ王に挫けぬ鋼の意志を宿した目で見返す。

 ――――亡霊の意地、通させてもらう。既に亡霊であるその身は不退転。死を恐れぬ、絶望になど屈さぬ。 


「――――ほぅ? 何か秘策があると?」

「ああ、今から贈る。遠慮せず受けとれ!」


 言いながら亡霊は左足の甲を踏みつけれた状態で――――――身体を倒した、後ろへ。丁度、腹筋をする様な態勢。この姿勢ならば脚は固定されており、彼の身体は安定する。


 ただ一つの問題は踏みつけられた脚がとてつもなく痛いということだ。しかし、亡霊はその激痛に耐え、不恰好な姿を晒しながら右足を伸ばした。

 伸びた足はとんっ、と軽く、コルヴェイ王の腹へと当たる――――がそれだけだ。それ以上は何も起きない。

 いや――――それは有り得ない。


「ウオォォォォッ!」

「――――!」


 腹の底から雄叫びを上げる亡霊に何かが来る、と身構える覇王であったが、反応が少し遅れ防御の機会を逸してしまう。この攻撃は、実は悠理との戦いの最中から仕込んでいたものだった。


 ――――悠理とカーネスの決戦中。二人は互いに祝福を使おうとしなかった――――と思わせて、カーネスは既に悠理のリバティーアとヘレンツァの祝福を隔離し、自分の中へと移動させていたのだ。


 しかし、リバティーアの祝福は“生命神秘の気”を攻撃に転用すると言うもの。“生命神秘の気”の使い手ではないカーネスには使用できない。唯、ヘレンツァの能力は別だ。それは問題なく使える。


 けれど結局使う機会はなかった。最後の最期に取って置きとして残していたが、悠理に勝ちを認めた瞬間にそれは永遠に失われたのだ。


 ヘレンツァの能力、それは――――――――“衝撃の増幅”。受けた攻撃を溜め、倍にして返す、と言うカウンター技。今、彼の身体には悠理とコルヴェイ王から貰ったダメージが蓄積している。

 ただし、蓄積したダメージの量が量。解き放てば反動で己の身がどうなるか解らない。でも彼が気にしてる問題はそこじゃなくて…………。


 ――――すべての衝撃を放ち終えるまで身体が持つかどうか、と言うことだった。放ったところで肉体が耐えられなければ、時間稼ぎにもならない。もっと余裕のある状態で使いたかったが、完全に放つ事が出来れば間違いなく足止めになる!


(…………これが、今出せる全力!)


 覚悟を決めて祝福を発動させる亡霊、右足を支点に彼の身体が一瞬だけ大きく震え――――。


「――――届けぇぇぇぇぇぇッ!」


 ――――ズドンッ! 玉座の間を大きく揺らす衝撃が発生し、コルヴェイ王へと叩き込まれた!  

 両者とも反動で吹き飛び、壁に打ち付けられる。――――が、各々が迎えた結末は違っていた。


「……う、あ――――」


 亡霊は凄まじい衝撃を放った代償に壁を破壊し、そのまま外へと放り出された。失墜しながら意識が途絶えていく…………。嗚呼、私は――――。


 ――――私は時間稼ぎが出来ただろうか? 最期に考えたのはそんな事。確かな死を感じながら彼は目を閉じる。カウンターを決めたは良いが、あまりも威力が大きすぎて自分の身体にも力が跳ね返ってしまったのだ。


 衝撃波で内臓や鼓膜にも深いダメージを負い、口から溢れ出た鮮血が空中を舞う。さながら花びらの様に…………。

 亡霊は『結局、国の為には生きられなかったな…………』と言う無念を抱きながら失墜していき――――グシャっと言う音を響かせた。その音を聞き取れた者は居なかったけれど…………。


 一方、反対側の壁へと打ち付けられたコルヴェイ王は――――。


「……最期まで良くやった。騎士の亡霊よ」


 彼は依然として健在。壁は亡霊と同じく、打ちつけられた衝撃で破壊されていたが、何の苦も無くその場へと踏みとどまっている。やがて、勝者は自分であると示すようにゆっくりと歩き始める

 …………いや、そもそも彼にとってはこれは遊び。


 結局、コルヴェイ王が祝福を使用する事はなかった。覇王と呼ばれる男は鍛え上げた身体能力のみで彼の亡霊を圧倒したのだ。しかし、だからと言って死力を尽くした相手を詰るのは彼も好まない。

 その奮闘を賞賛する。残念ながら本人のこの言葉は届く事はないけれど。


「…………が、我には――――」


 歩き始めてから数歩で突如王の動きが止まった。――――いいや、違う。膝をついていた。

 無意識の内だ。僅かに視界にぐらつきを覚えた王はニッと笑う。


「――――ふっ、亡霊しておくには惜しかったか……」


 ――――届いていた。亡霊となってまで時間稼ぎに全力を注いだ彼の想いは間違いなく。

 王の口、笑みを作ったその端から赤い雫が流れ落ちる。それこそが、亡霊の騎士――――カーネス・ゴートライが最期に残した成果、生の証に他ならないだろう…………。

次回、コルヴェイ王とレイフォミアの因縁。

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