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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
242/3924

強襲、グレッセ王都!・覇王との邂逅、目を覚ます深淵その一

よーし!

書けないかなと思ったけど何とかかけたー!


ちょっと体調管理には気を使ってみるべきだな、うんうん。


明日からもこの調子を続けられるように気を付けてみよう。

「コルヴェイ王ォォォォォォォォッ!」


 グレッセ城玉座の間、その天井に作られたガラス細工の窓。教会でいうところのステンドグラスに描かれた絵柄はグレッセの紋章。

 咆哮と共にそれを突き破って来たのはカーニャだった。アルフレドと戦っていた居たハズの彼女がどうしてここに居るのかは定かではないが、空を翔る剣に乗り、北方の覇王コルヴェイ王へと突撃する!


 込められたものは怒りか、それとも殺気か? いずれにせよ、カーニャのコルヴェイ王に対する感情はあまりいいものでない事は間違いないだろう。


「――――ッ!? コルヴェイ王様ッ!」


 覇王の共として随伴していた四姫“神出鬼没のルシアン”が叫ぶ。予想しない方角からの襲撃に対応が遅れ、王の護衛に回る事が出来ない。――――が、やはりそれは杞憂であったと知る。


「……ほぉ、生きていたか。久しいな、カーナリーニャ?」

「アタシをその名で呼ばないでッ!」


 僅かにその逞しい表情を笑みで歪め、コルヴェイ王はどこからともなく引き抜いた大剣でカーニャの飛翔剣“ボードスカイヤー”を受け止めてた。


 このスノーボードの様な板は紛れも無く剣。カーニャの呼びかけに呼応して現れた移動用の武器。

 とある世界で空を飛ぶ為に製作されたこの剣は、手に持ち相手を切る事は不可能。

 攻撃の際は飛び乗って飛翔しながらの特攻しかない。――――丁度今、彼女がそうしている様に。


 コルヴェイ王に本名を呼ばれて激昂するカーニャに合わせ、ボードスカイヤーは更に推進力を増して前へ前へと進む。少しづつだが覇王は押され始め、本人は『ほぅ』と、感心の息をつく。


「この力――――確かに我が()()したハズだが……。復元したのか? それに――――神の力だな?」

「アンタには関係ない事よ!」


 どうやら二人の因縁は深く、忌まわしいらしい。そして、彼の鋭い洞察力には注目せざるを得ない。ほんの少しの判断材料で的確に物事の真理を突く。

 圧倒的なまでの力任せで北方統一を成し遂げたのかと思ったが…………違うらしい。


 力だけではない、頭脳も併せ持った男だ――――と、傍観者になりつつあったカーネスはそう思った。

 それと同時に、視界に変化が起こったことに気付く。先程まで目の前に居た女が居ない。一体何処へ――――。


「いい加減になさいなカーナリーニャ!」


 その声が響いたと思えば、彼女――――“神出鬼没のルシアン”はカーニャの背後におり、羽交い絞めにしてその動きを拘束。空駆ける剣の板から強引に飛び降りた。


 主の居なくなった剣は役目を終えたと判断したのか、光の粒子となって消えて行き、コルヴェイ王の大剣もまた同じ様にして消え失せた。部下であるルシアンが押さえたカーニャを感情の読めない瞳で見つめているだけで、危害を加えようとは微塵も思っていないみたいだった。



「ルシアっ!? 邪魔しないで!」


 どうやら、カーニャは四姫とも面識があるらしい。親しげに愛称を呼びながらも暴れ、その拘束から逃れようとするが――――出来ない。密着して完全に動きを封じているのだ。そう簡単に抜け出すこと叶わぬ。

 ジタバタと抵抗を見せるカーニャに、唯一フードで隠れていないルシアンの口元だけが、叱りつける様に歪んだ。


「貴女がコルヴェイ王様に逆らう理由なんてないでしょう! 大人になりなさい! 貴女はこのお方の――――」


 決定的な、重要な何かがその口から飛び出ようとしたその時、視界の端から何かが飛んでくるのが見えた。それは――――――――短剣。


「せぇやっ!」

「――――!? 危ないですわね……」


 ルシアンの顔面へカーネスが自身の短剣を投げつけたのだ。彼女は咄嗟にその姿を消し、カーニャから離れてコルヴェイ王の傍へと戻っていた。


 全てが一瞬の出来事、瞬きする間に姿が消えたり現れたり…………原理が掴めない、とカーネスは警戒する。どうやら、突然この場へやってきたのは全てルシアンの能力らしいのは理解した、問題なのはどう対処するかだが…………。


「今の内にこっちへ!」


 今はカーニャを助ける事が先決だ。作り出した刹那の時間に後退を指示する。躊躇なく従った彼女だったが、カーネスの素顔を見たのは初めてなのでぎょっとしていた。


「だ、誰なのよアンタ?」

「話は後だ。私が時間を稼ぐ、だからユーリを頼む!」

「えっ? あ、ユ、ユーリ?」


 切羽詰った様子に言われて遅まきに気付く、この場に居るハズの、追いかけてきた悠理の姿を確認。遅れて、目の前に居る男がカーネスだと認識。しかし、後者の事は直ぐに頭から飛び出てしまった。

 何故なら悠理は血溜りに沈んでいて、傍から見れば死んでいる様にしか…………。


「ユーリッ! ね、ねぇ、返事をしてよ!」

「……………………」

「そ、そんな……」


 駆け寄ってその身体を揺すれば、ピチャピチャと血が跳ねて不快な音を奏でる。血は跳ねて広がり、跳ねずとも身体からはまだまだ血が溢れてきて止まる気配がない。

 それに、いくら揺さぶっても悠理からの反応は全くなく、唯々血が跳ね、カーニャの服と手を真っ赤に濡らすのみ。まさか――――と、最悪の事態が脳を過ぎって視界が真っ白になっていき――――。


「混乱するな! まだ息はある、急いで止血なり治療するなりするんだ! 場合によっては君の中にある神の力を使え!!」


 ――――カーネスの叱責で視界に色が戻った。確認すると確かにあまりも微弱だが呻き声の様なものが聴こえたのだ。


「わ、解った! お願い…………レイフォミア!」


 ――まだ、まだ助けられる! 希望を抱いて、それを実現させる為に内なる神に呼びかける。

 カーニャは瞳を閉じてバトンを手渡す。悠理を助ける為に、それが可能な人物の力を借りる。その代わりに自分が暗闇に沈んでいく、何も考えられず、身体の自由も段々と利かなくなっていく。


 けれど怖くはない。そう、これから表に出る存在は悪意でないのだから。

 ――――悠理を救ってくれる頼もしい仲間なのだから!


『任せてくださいカーニャ! ユーリさん、今助けます……!』


 カーニャの願いに応じてその存在が顕現する。閉じられた瞳が開かれれば、その色は澄んだ水の色から、眩い銀色へと変わっていた。それこそが、カーニャの肉体を借りて大陸の守護神――――レイフォミア・エルルンシャードが光臨した証。


 悠理の身体触れると温かく柔なかな緑色の光が溢れ、穴だらけの肉体を包み込む。唯それだけで、血が流れ出るのが止まった。あくまで止めただけ、治療はこれからだ。だがその前に――――。


『それと――――貴方にも加護を……』


 傷ついた身体でコルヴェイ王達から一瞬たりとも隙を見せないぞ――――と言う、気迫を溢れさせたカーネスにも光を分け与えるレイフォミア。


 彼がそうしていた事によってか、コルヴェイ王達はここまで何もしてこなかった。けれどそれもいつまで続くか解らない。カーネスが戦う意志を持ち続ける以上、それをサポートするべきだと判断したからだ。


「これは――――すまない、助かる」


 緑色に輝く光を浴びながら、カーネスはその効力に驚いた。負傷していた部分の殆どが回復している。

 悠理との対決で立つ事もやっとだった右足も完全とは行かないが、痛みそのものは消えていた。これなら――――戦える。


少なくとも、コルヴェイ王に瞬殺されると言う無様は晒さなくて済むはずだ。愛用の長剣“ダインベリテ”を拾い上げて再び覇王へとカーネスは対峙する…………。


「よろしいのですか、コルヴェイ王様?」


 計画の邪魔と成りうる未知の敵を叩きに来たハズ。

 なのにその男が復活するチャンスを態々与えるなどと…………普通では考えられない。しかし、王には王なりの考えがあり、深く追及するなど恐れ多い。だから、ルシアンはたった一言だけ、シンプルに尋ねた。


「良い、退屈しのぎにはなる」


 王からの返答も実にシンプル。大陸のほぼ反対側まで遥々やって来たのだ。直ぐに終わってしまっては退屈ではないか。

 ――――王の遊び心…………とでも言うべき気まぐれ。果たしてそれが吉と出るのか凶と出るのか……。

 ルシアンが判断に困っていると、戦意を漲らせたカーネスがコルヴェイ王の前に立ち、王へと問うた。



「北方アムアレアの王、コルヴェイ・ギーダ・オ・アムアレアと見て相違ないな?」


 ――――それは二十数年前に突如として北方に現れた男の名。

 彼はその短い間に“アムアレア”を建国し、広大で強国揃いの北方を統一せしめた……。


 噂に聞けばコルヴェイ王は最強の“祝福殺し”。あらゆる祝福を“支配”し、己の下に傅かせるのだと言う。

 その力が如何に強大なのかは先に語った彼の短い歴史で証明できるだろう。


「如何にも。お主はグレッセ王国の騎士、カーネス・ゴートライだな?」

「――――いいや、違うな。裏切りの騎士、カーネス・ゴートライは死んだ」


 カーネスの問いに肯定する王、だが騎士は否定した。己はもう既に死んだと宣言した。

 悠理に『生きる』と宣言したにも関わらず、彼はこの場で自分を殺めたのだ。


「ほう? ではお主は何者だ?」


 今度は王が問う。騎士でなくなった己は果たして何ぞや?

 カーネスは瞬き一つしてこう答える。己は――――。


「私は亡霊。この国を愛し、この国の為に生きた者達が残した思いによって産み出された亡霊。仮初めの存在……」


 ――――人は誰しも死ぬ時に思いを残す。或いは誰かに託す。自分は王に託された…………けれど、己は一度裏切ってしまった。もう二度と裏切らぬと固く誓うが、一度起きた事実は覆せない。


 だから――――今日がカーネス・ゴートライの命日だ。一度死んで、己を捨てて、託された思いと誓いを果たす為だけに生きる存在しない誰か即ち、亡霊。

 それが相応しい。地位も名誉ももう要らない。カーネス・ゴートライにはもう必要ない。

 国の為に尽くす……。亡霊の喜びは、それ一つで十分だろう。


「フッ、亡霊が我と戦う、と?」

「そうだ、死を恐れぬこの亡霊を止めてみせるがいい」


 カーネス――――亡霊は圧倒的不利を悟りながらも覇王から一歩も退かない。死ぬ気は毛頭ない、この場における勝利とは()()()()()()()。一秒でも長く時間を稼ぐ事だ。


 そうすれば希望も見えてくる。彼は直感で一つの可能性を見出していた。それが――――悠理。


 自由の使者、この世界を救う為にやってきた異世界召喚者。彼こそがこの窮地を脱する為の鍵である、と。だからこそ、その復活にかかる時間を稼ぐ事が亡霊の目的。


 今日この場で死んだばかりの男は、存在しないハズの命を時間稼ぎの為だけに賭ける。これはもう決定事項だ。揺らぐことは、ない!


「――――ほう、中々どうして……()()の騎士も捨てたものではらしい」


 亡霊となった男をあえて騎士と呼ぶ王の目は何かを懐かしむような、もしくは眩しいものでも見るかのように細まった。こころなしか、表情も穏やかなものに変わった気がする――――たった一瞬だったけれど。


「ならば来い亡霊、少々遊んでやる」


 次の瞬間にはもう、そこに居たのは覇王だった。バサァっと、マントをなびかせて覇気を纏う。

 無手だと言うのに、まるで無数の武器で武装した様な重苦しい威圧感を放っている。


「――――スゥー」


 焦る事無く亡霊は深呼吸。再度己に向けて自分は亡霊であると言いつけ、敬愛する王へと宣誓。

 ――――王よ、見ていてください。私は私の道を今度こそ貫いて見せます!


「行くぞっ!」


 短い宣誓を終え、亡霊が駆け出す。これが最初で最期の戦いになると、そう予感しながら…………。

次回、治療と時間稼ぎ。

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