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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
241/3922

激震、グレッセ王都!獣は自由を、騎士は誇りを胸に生きるその四

気合を入れて書こうとしたんだけど――――空回りしてるなぁ…………。


とりあえず、加筆修正案は寝ながらか、仕事中に考えるとして、実行は土日かな。


あっ、昨日記事を追加しました!

内容は10万PVの達成です。読者の皆さんへ感謝の言葉を載せております。

よろしければご確認を。



 ――グレッセ城玉座の間で起こった男と男の死闘は、虹の光に包まれ結末が窺い知れない。

 しかし、光りはいつか翳るもの。何かが落ちて転がる物音を合図に虹の濃霧が晴れていく。


「…………うっ」

「がっ……あ……ぁ……」


 玉座から少し離れた位置に転がり込む二人。両者とも先の決め技を喰らって限界を超えたのか、立とうとするも足は震え、手は石畳を力なく掻くに留まる。

 それでも、全身にあらん限りの命令を送って動こう足掻く。まだ決着は着いてはいない。


 立ち上がって証明せねば、勝ったのは――――己だと!


 この戦いに、目の前に倒れ伏す男に勝ったと言う結果が欲しい。前へ進む為に、これから先を生き抜いていく為に。何より――――己の誇りに賭けて。


 唸る、念じる、歯を食いしばる。あらゆる感情、動作で自身を鼓舞して立ち上がろうと躍起になる。

 男同士の意地の競争、果たしてそれに競り勝ったのは――――。


「――――クソ痛ぇ……」


 ――――悠理が立ち上がってカーネスを見下ろしていた。左肩と額から多量の出血、腕は鋼鉄の脚に散々蹴られた所為で所々赤黒く変色し、腫れ放題。ボロ雑巾の様なその姿を果たして勝者と呼んでいいのだろうか?

 だがしかし、立つ事叶わなかった男はゴロンと仰向けになって――――負けを認めた。


「…………負けてしまったか」

「いいや、引き分けだろ?」

「そう…………か?」

「お互い万全とは言い難かったしな……」

「そうか……」


 決着を着けた男達の表情はやけに晴れ晴れとしていた。勝負の拘りも勝った瞬間にどうでもよくなり、相手の健闘を素直に讃え、労う。

 あまりに奇妙な光景、男同士が喧嘩で殴り合って友情を深め合うと言うアレ。あの不可解極まりない現象に良く似ている様な気もする。


 とにかく、悠理とカーネスの戦いは終わったのだ。それはもう疑いようのこと。戦意も敵意も最早欠片も残っていない。それにもう一度やろうと思っても肉体は限界だ。


 今は唯、彼等は言葉を交わす。そこに専念する。思えばこれがファーストコンタクトなのかも知れない。

 漆黒の騎士と自由の使者、ではなく、カーネス・ゴートライと廣瀬悠理とが出会い、最初の会話。


「――で、どうすんだこれから? モヤモヤはスッキリしたんだろ?」

「……さぁ、な。唯――――生きていこうとは、思う」


 わだかまりや後悔が消え去った澄んだ瞳でカーネスは玉座を見た。自分がした行為は裏切りであり、一生涯許されないこと。――――だからと言って、それらに背を向けて楽になりたいなどとはもう思わない。


 向き合うを強さを、自由の使者が不器用で野蛮なコミュニケーションで教えてくれたのだから…………。


「この国の為に生きて、そして死んでいければ……。少しは罪滅ぼしになるだろう?」

「――――へっ、足りねぇよ。そんなんじゃ」

「ハハ……手厳しいな」


 悠理が笑って釣られてカーネスも笑う。お互い身体がボロボロだから『痛たた!』と顔を引き攣らせていた。それでも――――笑う。

 ああ、おかしいとも。こうしてボロボロな事も、本気で喧嘩をしあった相手とのんびり緊張感なく話し込んでいる事も。今まで間違った道を愚直に歩んでいた――――己も。


「レーレの件についてはまだ根に持ってるからな。お前には俺達と一緒に世界を救ってもらうぜ?」

「世界――――を?」


 ひとしきり笑って、悠理が意地悪い顔を浮かべて言った事にカーネスは首を傾げた。

 レーレの件については――――仕方ない。これは後で何とかしようとも。だが、世界の危機に関しては彼は何も知らないようであった。


 アルフレドの元に居たからと言って全てを訊かされている訳ではない様だ。それもそのハズで、あのチーフにとってはカーネスも唯の手駒。多くを教えている訳もない。


「ああ、後で詳しく話すが、ちょっとやべぇのさ。少なくともここで小競り合いしてる暇なんかない位にはな」

「その為に君は……この世界へ?」

「そうらしいぜ。俺も良く解ってねぇけど……。でも、ここへ来て大事だって思えるものが出来たからな。世界を救う理由にはそれで十分じゃないか?」


「――――ふっ、単純だなユーリ……」

「お前はあれこれ考えすぎだぜカーネス」


 カーネスはその単純さ、或いは純粋さに羨望を抱き、悠理も考えた末に苦悩し、苦しみ抜いた果てに自分の道を見出した彼へと好意を覚える。少なくとも彼等の関係はもう敵同士ではなくなったのは確かで…………。


 悠理が倒れたカーネスに手を差し出していたのも、きっと自然な流れだったに違いない。


「さぁ、立てよ。カーニャの加勢してアルフレドのヤツを追い出しちまおうぜ」


 まだ倒すべき敵は残っている。最早、カーネスにも迷いはなく、グレッセを混乱に導いた男へ反旗を翻すは当然の事。差し出された手を取って、何とか立ち上がる。


 さっきまであれほど苦痛にもがいても立ち上がれなかった事が嘘みたいに、すんなりと起き上がる。

 そうして二人は向かい合う。敵と言う関係を超えて、これから戦う――――同士として。

 ――心強い。全力で殴りあった仲だからこそ、尚更そう思う。


「そうだな、王の仇を討たねば私も気が済まない」


 瞳に確固たる決意を宿して頷くカーネス。騎士としての誇りを思い出した彼はもう今後一切迷う事などないのだろう。悠理はそれを祝福したいと思った。彼の肩をバシバシと叩いて――――。


「そうそう、その意気だぜカ――――」


 ――――ザシュッ! 鋭い音が鳴り響き、祝福の言葉を送ろうとた悠理の声が止まった。不自然、あまりに不自然なタイミングで。

 胸の辺りに違和感を感じてゆっくりと視線を下ろす――――と。


「――――あ?」


 ――――確認した。自分の胸を背後から貫く――――――鉄の刃を。

 ああ、だから息苦しいのか……。心臓近くに埋まった凶刃を見ながら暢気に他人事みたいな感想が脳に浮かぶ。


「――――ユーリッ!!」

「がっ!? あ…………、何処、から?」


 一拍遅れてカーネスが状況を把握。しかし、刃が突き刺さった方向には彼がずっと視線を向けていた。なのにどうして直撃するまで気付けなかったのだ?

 悠理は襲い来る傷みに膝を着いて、何が起こったかを懸命に認識しようとする。一体、誰が、何処からの攻撃だ?


 周囲一帯を見回しても姿どころか影すら見えない。ならば――――と、悠理は視界を虹色に変え――――絶句した。

 ――――不味い、ここに居てはいけない……! 串刺しになる!!


「おいっ、確りしろ!」

「馬鹿、野郎…………! 逃げろッ!!」


 突如襲い掛かってきた絶望的な現状。それを確認する認識を持たないカーネスを悠理は突き飛ばした。咄嗟に腰からリバティーアを引き抜き、彼へと放り投げて。 


「な、に?」


 全力で突き飛ばされて宙へ浮くカーネス、その手にリバティーアを受け取った彼が目撃したのは、一瞬で、あらゆる方向から現れた刃に串刺しにされる――――悠理。


「ぐっ! う、アァァァァァァアアァァァアッ!?」

「ユーリィッ!?」


 ブシャッと全身から絶叫と血液を吐き出す悠理の姿に、カーネスが叫ぶ。ゆっくりと倒れて行くその姿を信じられないと唖然と見送る。


 ――――あっけない、と。あっけなさ過ぎる。静かに倒れた彼の身体からは既に刃は消えていた。

 それが返って出血をより酷いものにしている。どくどくと、駄々漏れてあっという間に血溜りが出来上がっていた。致命傷だ、早急に手当てせねば助からない――――なのに、身体はこの数秒で置きた現実についていけない。


「一体、何が…………。――――! そこだッ!!」


 呆然とその姿を眺めていたカーネスが、僅かな気配を察知してリバティーアを投擲した。

 それは玉座の目の前、丁度グレッセ王が座った目線の高さ、空中でピッタリと制止している。


「――――ほう? 我を居場所を見抜くとは…………グレッセ王の騎士も侮れないものだ」

「でも、身の程知らずですわ。貴方様に剣を向けるなんて」


 男女の声が玉座の間に新たに加わると同時、ぼうっとその姿が露になる。

 投げつけられた剣は、男の方が人指し指と親指で摘む様に切っ先を押さえつけ、止めていた。

 指を離せばカランと音を立てて、悠理の託した剣が虚しく転がる。


「――――何者だ?」


 突如現れた、傷だらけな壮年の男性。体格が良く顔は堀が深い。身体に羽織るマントにただならぬ気配が宿っている。

 女の方は黒ずくめ。大き目のフードが顔にかかって風貌は窺い知れない。しかし、こちらもやはりただならぬ気配。


 ボロボロの身体を引きずってカーネスは問うと同時に悟る。この二人を打倒せねば、悠理が死ぬ――――と。


「我に問うか若き騎士よ? 我が正体を知って何とする?」

「知れた事だ――――討つ。そこに倒れてる男の代わりにな」

「……………………」


 血溜りに沈む悠理はきっと悔しさを感じているだろう。理不尽さに怒りを覚えているハズだ。

 その憂さを晴らさねばならない、他ならぬ自分が。それが助けられた己がすべき事である。


「――――そういえば、この男がアルフレド様の言っていた召喚者ですの? 随分とあっけなかったですけど」

「試すまでもなかったか――――興醒めだな。北方から態々出向いたというのに」


 カーネスの決死の決意を二人は意に介して居なかった。敵意剥き出しの彼ではなく、血溜りに沈む悠理へと視線は向けられており、男の目には明らかな失望。


 ――――一体、何故? そう思うよりも先にあるワードが引っ掛かる。この二人の正体を探るキーワードがあった様な…………。


「北方? ――――ッ!? ま、まさか、貴様は――――!」


 たったそれだけで、北方出身と言うだけで玉座の前に立ちはだかる男が、如何なる存在かを悟るには十分。全細胞が戦慄く、死を覚悟し、最期の最期まで喰らいつけ! 


 ――――と自分へ強い暗示をかけようとする。でなければあっと言う間に砕かれてしまう。

 誇りや決意、怒りも。人がした決死の覚悟も秘めた思いも、この男は容赦なく砕き散らす男である。

 そうこの男こそ――――。


「あら、ようやく気付きましたの? ならば震えなさい! ならば怯えなさい!! この方こそ――――」


 女が自らの主を讃えその名を叫ぼうとする――――が、それはガシャァン!、と響き渡った音で邪魔される。

 カーネスの視線は玉座の真上、天井に位置するガラス細工が砕かれた音。

 降り注ぐガラスに男が振り返れば、逆光の中から高速で飛来する影。


「――――コルヴェイ王ォォォォォォォォッ!!」


 獣の如き咆哮を上げながら現れたのは――――――――カーニャ。

 飛翔する剣に乗って迷う事無く彼の覇王へ――――吶喊!

次回から、覇王強襲編!

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