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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
240/3923

激震、グレッセ王都!獣は自由を、騎士は誇りを胸に生きるその三

あー…………、今日は夜に更新出来ないからって午前中から執筆してたんだけど…………。


何か眠いし、ダルイわで…………時間かかりずぎぃ…………。


そんな訳でいつものに輪をかけて酷い気がするけど――――ごめんね☆

「――――終わったか…………」


 敬愛していた王が座していた玉座。そこへと墜ちて行ったカーネスを見て悠理が呟く。

 狙った訳でない。そんな力加減が出来るほど器用でもない。唯、彼を思うセレイナやヨーハの気持ちがそうさせたのだろう。

 説明できる感覚ではないがそんな確信を抱き、玉座から背を向けようとして――――止まる。


「いや――――そんな訳ねぇよな? お前も諦めが悪そうだ………………そうだろ?」


 ゆらりと、ぶつかって倒してしまった玉座を元に直しながら立ち上がる影。王冠を大切そうに、愛おしそうに撫でてそっと王が座っていた場所に置く。

 瞳を閉じ、身体の痛みに耐えてカーネスが悠理へと向き直る。そうして開かれた瞳には――――炎。

 強い意志が具現化した証、そこに宿っていた。


「…………まだ、だ。まだ私は…………戦わねばならない…………!」


 吹き飛ばされた際に床へと突き刺さった長剣を抜き、ガシャガシャと鎧を鳴らして騎士が歩いてくる。

 自由の獣はそれを唯見守る。そうして、自身もヘレンツァを構えて彼を待つ。お互いの丁度いい距離感でその脚が止まって、悠理が問いかけた。


「どうやら、何か吹っ切れたらしいな。で、どうするんだ?」

「貴様を――――倒す。倒して私は己の道を行く!」


 ――カーネスが何を思い、何をしようとしているかは解らない。けれど最悪の事態にはならないだろうと、悠理は信じる。信じて、戦闘態勢を取った。


「良いぜカーネス。とことんまでやってやらぁ!」


 ここから先は――――男同士による唯の喧嘩。大儀も私怨もそこになく、あるのは愚直なまでの――――意志。

 倒す、倒してやる。前へ進む為に、己の強さを知らしめる為に。野蛮すぎる男のコミュニケーション。喧嘩の幕が――――上がる。


「はあぁぁぁぁぁぁっ」

「おぉぉぉぉぉぉぉっ」


 同時に駆け出して、双方共に得物を振り被る。――――男はつくづく馬鹿な生き物だと思う。

 自分の過ちを正す為、時に男はこうして戦い、傷つかねばならない。改心する為には、やり直す為には先ずこうして傷付こうとする。そこに理由はない。きっと生まれた時から男が男である為に持つ本能なのかも知れない。 


「――――カッ!」

「――――ダラァッ!」


 振り被った戦鎚が、一閃した長剣が衝突し火花を散らす。両者一歩前に踏み込み、鍔迫り合いを制そうと力む。少し顔を出せば頭突きが可能な距離、悠理は笑いながら、カーネスは冷静さを顔に貼り付けて、互いを押し切ろうと視線に気迫を込めて交差させる。


「動きにキレが増したんじぇねか?」

「フッ、そう言う貴様は何だか鈍っているな?」


 感情のままに褒め称えれば、冷静さで不調を指摘される。確かにカーネスの言う通り、悠理の動きには精細さが欠けて来ていた。

 ――いや、元から荒々しい動きだったから、力強さが無くなって来たと言う方が正しいが。

 とにかく、英雄の力を無理矢理に行使した事が原因なのは間違いない。今だって悟られないようにおどけているが、身体は重く、言う事を利かずにいる。


「――ヘッ、うるせぇよ!」


 しかし、肯定してしまうのは何だか悔しいものだ。だから笑って誤魔化す。そんな意味の無い虚勢も喧嘩の醍醐味。笑って腰からリバティーアを引き抜き、ヘレンツァの直撃で脆くなった胸を狙う。


「遅いッ!」


 死角からの素早い刺突。けれどもカーネスも同じく片手に短剣を握って防ぐ。そのまま数度、戦鎚と長剣、短剣同士が交錯し、暫し剣舞が披露される。

 命を奪い合い。相手の否定、敵の打倒…………。様々な負の感情、敵意が入り混じっていると言うのにその光景は間違いなく美しいと言えるものだった。


 やがて十数度の打ち合いになった時、決め手を欠くと感じたのか双方ここで一旦距離を取る。


「……チッ、やっぱりハンマーとの二刀流は厳しいぜ…………」

「ハンデが欲しいか?」

「――――ケッ、冗談!」


 使い慣れぬ得物に泣き言を漏らせば嫌味で返される。ふざけるなと吐き捨てて悠理は跳躍、空中で一回転して威力を増した振り下ろしを行う――――が。


「甘い! そんな単純な動きで私を捉えきれると思うな!」


 警戒したカーネスは余裕を持って飛び退いてかわす。彼の変わりにその一撃を受けた床が砕け陥没する。

 壊され荒れ果てていく玉座の間に顔をしかめる彼だったが、避けて正解だったと胸を撫で下ろした。あの一撃をもらって無事で済む訳がないからだ。


「じゃあ、これならどうかよ!」


 言いながら悠理はその両腕を強化し、柄が砕けるんじゃないかと言う程にヘレンツァを握りこむ。

 戦鎚を肩に担ぎ、走って床を蹴る。その状態でスイングを始め、まるで独楽の様に大回転。

 一掠りでもすればタダじゃ済まない破壊力を伴って、その大独楽がカーネスへと突撃する!


「ぬぉぉぉぉぉっ」

「そんなもの当たらなければ――――」


 先程と同じ様に余裕を持ってそれを回避しようと後ろへ跳躍の姿勢入ったカーネス。床を蹴ってその身体が浮き上がった――――直後。


「だあぁぁぁぁぁらっしゃぁぁぁぁっ!」


 悠理が回転のパワーで持って床へと戦鎚を叩き込む! 今度のはさっきよりも遥かに破壊力を増しており、床は陥没するに留まらない。砕けた石畳が飛礫となってカーネスへと襲い掛かった!


「ッ!? まさか元からこれが狙いか――――チィッ!」


 自分目掛けて飛んでくる石飛礫を長剣を盾にして防ぐ。けれど全部は受け止めきれない。幾つかは鎧にあたって砕けたが、ヘレンツァの打撃によって脆くなっている箇所が多数ある。

 運悪くそこへ当たった石飛礫は貫通し、彼に鈍い痛みを与え、苦悶の声を上がらせた。


 地面に脚を着ける頃には悠理が再び攻撃態勢に入っており、カーネスはと言えば膝を着いて隙だらけだ。

 迷う事無く追撃をかける――――が、事は単純に運ぶものではない。


「悪いが貰った!」

「――――単純だと言った!」


 ヘレンツァの間合いに入り、悠理が腕を振るうタイミングを見計らった様にカーネスが短剣を投擲。

 先程の意趣返しのつもりなのだろう。彼がそうだった様に悠理もまたその攻撃を交わし切れない。いや、両腕が塞がっている時点で彼の方が不利。


 短剣はそのまま悠理の左肩に突き刺さって刹那の間、動きが鈍る。しかし、歯を食いしばって目を見開いて耐え、構うものかと振り下ろす!


「っ、今更怯むかよぉっ」

「それはこちらもっ」


 立ち上がる勢いに任せて長剣を振るい、ヘレンツァを受け流すカーネス。ついさっきと全く同じやり取りだ――――であれば次の行動もやはり同じ。


「オラァ!」

「オォォ!」


 ヘレンツァを捨てての頭突き! だが今回はカーネスもソレに合わせて仕返しする。ごっ!、っと鈍い音が響いて、互いの頭が弾かれる。二人は睨みあってそれから三度頭突きでぶつかり合った。

 四度目で両者の額が割れ、血が溢れ、石畳が彼等の血で染まる。その頃にはどちらもふらふらの状態。


 意地と誇りを張り合った結果、脳と視界はぐわんぐわんと揺れている。

 ――――が、それは相手も同じ事だ。同じかそれ以上の痛み、或いは屈辱を味わっている。そう思うと多少は気分も晴れるというもの。


「――――クソッ、バレル!」

「――――鉄槍!」


 今度は強化した腕と脚がぶつかる。しかし、直ぐに弾かれ、再び距離が空く。

 揺れる脳が痛みと衝撃に対応しきれず、力で押し合う状態まで持続しない。その気力が湧いてこない。

 ならば――――――――手数で勝負ッ!


「ラァァァァァァァアアアアアッ!!」

「ハアァァァァァァアアアアアッ!!」


 悠理が左肩に突き刺さったままの短剣を引き抜いて左も加えて応戦を始める。

 対してカーネスは一発一発を左右の脚で拳を打ち落とす。手数では劣っているが正確さについては彼の方が上手。


 それでも負けてなるかという男の意地が、悠理のラッシュを後押しする。だがカーネスもまた同じ、襲い来る拳の連打を強化した脚で打ち落とし続ける。


 殴る――――。

 ――――打ち落とす。


 玉座の間にその音だけが響く。何発、何十発と繰り返して、お互いに披露が見え始めた頃――――。 



「ぐ……ふっ、う……あっ……」

「が…………ぬう…………」


 カーネスの右足が悠理の肋骨へ、悠理の右腕がカーネスの心臓へと突き刺さった。

 血を吐きながらふらふらと後退して、息とまた血を吐き出す二人。


 体力も耐久力も限界。お互いに能力をもっと活用すれば決着は早かったかも知れない。 

 しかし、カーネスは悠理の祝福が何であるか見出せず、行動に移す機会を逸し、悠理は祝福の発動によって“生命神秘の気”が一時的に上手く扱えなくなっていた。


 故に今回は身体能力と武器のみに頼った真剣勝負。だが、この勝負ももう終わりが近付いていた。


「これで――――終わりだ…………!」

「お前が、な…………!」


 カーネスがぐっと腰を落として屈む、悠理には彼が何をする気か何となく解った。

 ――――跳躍し、空中からの急降下蹴り。戦いを通じて悠理は彼の騎士の蹴り技が何かに似ていると思っていた。悠理の好きなとある特撮ヒーローの動きと実にそっくりだったのだ。


 この世界にそんな文化や似た様な存在が居るのかは知らない。だが、確かにカーネスの甲冑姿はヒーローそのもの。――――比べて自分はどうだろうか?


 髭面で人相も悪く、作業ズボンにしわくちゃのパーカー。真っ赤なTシャツには大きく渋い黒い“自由人”の文字。――――胡散臭いったらありゃしない。


 腕と脚は武装しているが、この戦いでボロボロ。スルハの職人には悪いと、後で謝っておかねばなるまい。――――等と考えて彼は迎撃行動に移行する。

 そうして悠理が選択した技は――――奇しくもカーネスと同じ姿勢。理由はもう腕が使い物にならないと言うこと。それと比べて脚は殆ど無傷だ。カーネスを打ち破るには最早これしかない。


 それを見た彼が驚きに目を丸くして――――笑った。付け焼刃で何とか出来るのならしてみるがいい、そう言いたげに……。


「小癪な…………行くぞッ」

「やってやるぜぇぇぇ!」


 全く同時に獣と騎士が飛び、空中で姿勢を整える。特撮名物のヒーローキック。

 問題はこれがフィクションではなく現実であると言う事。そんなとんでもない経験を悠理はしているんだな、とぼんやり考える。


「剛脚――――!」

「イリス――――!」


「――――流星ッッッ!!」

「――――ストライダァァァッ!!」


 カーネスが長剣を蹴って加速する。悠理は使えるだけの“生命神秘の気”を推進力に変換、七色の光を纏って特攻した!


「グゥゥゥッ! 王よ、私にもう一度だけ力を!!」

「うおぉぉっ! 輝けぇッ、俺の命よ! 燃え尽きる程に!!」


 空中で――――真下には丁度玉座がある状態で二人の右足が激突。一歩も退かず、譲らず、自身の意志を貫く様にぶつかり合う。


「せやぁぁぁぁっ!」

「うおりゃー!」


 気合十分の雄叫びで玉座の間が充たされ、そして悠理の身体から溢れ出た虹の光が二人の視界を埋め尽くして――――――――。



次回、決着?

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