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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
235/3926

激震、グレッセ王都!・獣達の優劣と矜持その二

う、おぉ、ぉぉ…………。


頭が働かないよぉ…………。


ブクマ減少&加筆修正コースまったなしか…………。

『ギィィィィィィィアッアッアッ!』


 倒れ伏すアズマを見下ろして勝利の雄叫びをあげるエスタラ。

 己が王者である事を示す為に、その威光を知らしめる為に、たかが通常種のディーノスには負けられない。


 いや、負けるはずもない。中々に持った方だが、やはり長止まりの力しか持たない通常種。王者を止められる資格があるハズもなし。


『ギッギッ、アァァァァァァァア!』


 ――――なんと言う驕り。王者故に、王者足らんとするからこそ生まれる傲慢。

 自分以外を見下し、否定する事しか出来ない道……それが王の道だとでも言うのだろうか?


 エスタラにとってはそれが望む姿なのかもしれない。けれど王よ、それは暴君と言うのだ。そして暴君は――――。


『ぐ…………ぐげげ……』


 志しある者に討たれるのが――――必定。


――――――

――――

――


 グラグラと揺れる視界の所為でふらふらと覚束ない足取りのアズマ。大きく頭を振り、気合を入れてその場しのぎの対処ですます。

 この時、エスタラには大きな隙があった。立ち上がったアズマに全く気付いて居らず、勝利の雄叫びを上げ続けている。


 何故なら、角付き同士の戦いは角を折った、折られたの時点で決着。これはディーノスの本能に刻み込まれた絶対の条件ルール

 それはディーノスを統べる王たるエスタラも例外ではない。


 だからこそ、エスタラにはもう戦う意思や気迫はなく、唯己の勝利に酔っていた。

 アズマの確りと大地に立ち、突撃の姿勢を取る。己の劣勢を知りながら、本能に刻まれた敗北の証に抗いながら、尚戦う意志が挫けないのは、胸の奥に主と認めた男の言葉があったから。


『絶対に負けんじぇねぇぞアズマ?』


 悠理(あるじ)は確かにそう言った。『絶対に勝て』とは言わなかった。アズマはそこにきっと意味があると睨む。多分――――勝てなくても良いのだろう。恐らく、自分の推測に間違いはあるまい。


 勝てなくても良い。けれど負けるな、屈するな、決して――――諦めるな。そう、言いたかったのではないだろうか…………、と。過ごした時間はあまり多くはなく、断言するには情報量が足りない。

 だがそれでも、彼を背に乗せ、共に大地を駆け、修羅場を掻い潜り、ここまでやって来た。濃密な数時間、数日、数週間は時に数年以上の価値を持つ。


 思えば初めて会った時も数秒がとても長く感じられたとアズマは思い出す。

 不思議な感覚だったとも。野生の本能を持つ獣として運命などという言葉、概念はアズマにとっては無縁なもの。けれどあえて使いたくなってしまう。


 廣瀬悠理とアズマは出会うべくして――――運命に従って出会ったのだと。


 一目見た瞬間、彼こそが自分の主であると、天啓めいたものが舞い降り、気付くと自らの角を差し出し触れさせていた。かつてグレッセの英雄と呼ばれたグレフにさえ、した事のない服従の仕草。


 今にすれば納得のいく話。神がこの世界を救う為に力を分け与えた救世主。それが自分の主である事は誇りであり、他の何にも変えがたい喜びである。 


『ぐ、ぐげげ…………』


 思い出を決意へと変え、キッとエスタラを睨み据えて、脚に力を入れる。

 ――――決着はお前の敗北で着いたハズだ。強者へ服従せよ!

 嘯く本能に逆らって――――床を蹴る!


『ぐげぇぇぇぇ!』


 身体を低くして一直線にエスタラへ。雄叫びを上げろ! 反逆の狼煙を上げろ!

 本能の呪縛に逆らうのだ。廣瀬(わが)悠理(あるじ)の様に! 自由を掲げろ!


『ギィア?』


 自分以外の雄叫びが聴こえて、そこで初めてエスタラの酔いが醒めた。しかし、既に目と鼻の先にアズマが居て――――――――。


『ぐげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』


 瞬きする間にアズマの一撃が見事に決まる。エスタラによって折られた彼の矜持(つの)は――――。


『ギッ!?』


 エスタラの胴体――――心臓がある部分へと深々と突き刺さっていた。唖然と、驚きのあまりに時が止まってしまったみたいに王は動けない。この結果を招いたのはエスタラが犯した――――()()()()()()


 これは角付き同士の優劣を決める戦いではない。

 生きるか死ぬか、野生の戦いだ。元より、アズマには彼の王の元へ下る意思は毛頭ない。

 自分には既に仕えるべき()()()()。故にこの戦いを生き延び、最後まで忠義を尽くすのみ!


『ギッ、ア――――』

『――――ぐげげげぇぇぇッ』


 エスタラが自らの負傷に絶叫する前にアズマが再度動く。首がビキビキと鳴る位に力を込め、突き刺した角持ち上げる。それに伴ってエスタラの身体も若干宙に浮く。

 王が抵抗する隙を与えてはならない。放心している今が最大の好機!


『ぐげぇぇぇぇぇ!』


 エスタラを持上げたまま、アズマは壁へ向かって突進! ドンッと、城内の壁がミシリと揺れるほどの衝撃。突き刺さった角から赤い血がブシュッと流れ出る。


『――――ギッ…………』


 口からもゴポリと音を立てて血の泡が吹き出る。いくらディーノスを統べる王者とは言え、こうして攻撃を直撃させれば十分なダメージを与えられる。

 ましてやエスタラは完全に無防備な状態だった。勝負がついたと思い込んでいた所為で、致命的な隙を生み、まともに攻撃を受けてしまったの痛い。


 不幸中の幸いと言えたのは、アズマの角は心臓まで達さなかったという事。先程の勝負で叩き折っていなければ即死であっただろう。


『ギィィィィアァァァアァ!』


 叫びと共に血を吐き出しながら喚く。暴れる。未だに壁に打ち付けられている所為で身動きが取れない。今はこの場から向け出さなくては…………!

 そう魂胆し、爪でアズマの顔を引掻く。ざくっとした肉の手応え、アズマの首に爪が深く食い込んだ確かな感触。


 エスタラはそのまま爪を振り下ろそうとして…………。


『ぐげぇぇぇぇぇげげっ!』

『ギッ!? ギィッ! ギ! ギギッ!?』


 ――――手痛い反撃を喰らう。しかも四度。

 爪が突き刺さったことなどものともせず、激しく首を振ってエスタラを壁へ叩きつけた。その度に壁はミシミシと音を立て、エスタラの口からは悲鳴が響く。強烈な怒涛の連打に成す術もない。


『ぐげげげ、ぐげっ!!』


 一気に畳み掛けようと、アズマは五度、六度目の頭突きをしようとして――――。

 ――――バキッ! 不吉な音が鳴る。


 アズマの矜持が、プライドの塊である角が――――――――根元から折れてしまうのだった。

次回、決着!

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