激震、グレッセ王都!・疾走、街を抜けて城内へ
何かやる気が起きなかったんですが、何とか書けました――――けど、後で加筆したいなぁ…………。
あっ、そういえばブクマ増えてまし――――あれ?
一人減ってまた一人戻っただけだっけ?
――――記憶が曖昧だぜ…………。
王都の外で各々が強敵を撃破している頃、王都を駆け抜ける二人の男はと言うと――――。
「おぅらぁぁぁぁぁぁッ!」
「はあぁぁぁぁぁぁぁっ!」
互いのディーノスを並走させながら、剣戟を繰り出す。剣同士がぶつかって甲高い金属を響かせ、その勢いで一旦離れる。しかし、直ぐにどちらかがまた距離を詰めて責める。
一体、もう何度繰り返したのか? 二人は互いにその動きや癖を読み始め、その一歩先を行こうと攻撃を仕掛け続けている――――が、これが中々通らない。
「どうした? そんなものかっ!」
「チッ、どうも地に足つけてないと戦いづらいぜ!」
再び接近して鍔迫り合い。カーネスは長剣、悠理はヘレンツァの柄でそれを受け止めている。
悠理は騎乗戦での戦い辛さを感じており、カーネスほど責めには転じられていない。ましてや得物はヘレンツァ。これが槍や鎌であればまだ違う。
だが今この手にあるのは戦鎚。騎乗しながらではロクに振るう事が出来ぬ武器。攻撃はリバティーアで出来なくもないが、カーネスの長剣とはリーチに差があり、責め辛い。
そんな不利な状況が重なっていて、拮抗状態にいるのには理由がある。
一つは安定性。これが馬であれば四足歩行で安定するが、ディーノスは二足歩行。如何に強靭な足腰を盛っていようとも設置面が少なければそれだけ安定性に欠く。
勿論、ディーノス達も柔ではない。搭乗者に合わせてバランスを保ち、動き易いようにサポートする術がある。あるのだが――――ここで二つ目の理由だ。
それはカーネスも同様に、ディーノスでの騎乗戦闘に不慣れなこと。悠理よりは多少なりとも経験はあっても、ディーノスと馬ではやはり違う。グレッセ王国一の騎士と謳われる彼でさえ、ディーノスの騎乗戦では本職に劣る。
この件に関してはクヴォリアで別れたマルコーの方が二人よりも確実に上である。戦闘力においては彼は二人には敵わないだろうが、ディーノスの騎乗経験や戦闘技術においては圧倒的な大差をつけていると言っていい。
優劣が逆転する程にディーノスの騎乗戦闘技術は奥が深い。簡単に言うのなら、悠理とカーネスはお互いの愛騎と一体化出来て無いと言えた。
故に二人の戦闘状況は膠着状態にあるのだ。
「その程度で私を倒せると――――この国が救えると思っているのか!」
「――――るせぇ! こちとら色々と疲れが溜まってんだ、よっ!」
「ぐっ…………!」
鍔迫り合いの中、悠理が左足で蹴りを繰り出す。騎士として正道を心がけるカーネスはそう言う邪道に弱い。全くもって無防備にその蹴りを銅に受ける。
ダメージはそれ程無いが、ぐらりとその姿勢が崩れた同時に鍔迫り合いの均衡も崩れた。
「技術が無い分は――――」
長剣を押しのけ、悠理が上半身を捻る。上手く止めなければ致命的な隙が出来てしまうが…………今はとにかく距離が欲しい。
「情熱でカバーしてやらぁ!」
「チィッ、だが――――!」
捻った身体と勢いを持ってヘレンツァをスイング。カーネスは大きく離れて避けると、前を向いて加速していく。
「あっ、待ちやが――――もう城に着いたのか…………」
先に進んだカーネスの背中を追いかけていると、街中を抜け城門は目と鼻の先。
カーネスが開け放たれた城門を潜り抜け、悠理もその後を追う。立派な城だ――――と思い馳せそうになったが、今はそんな余裕は無い。
「俺の身体――――もうちょっと持てよ?」
胸に手を当てて弱気を吐き出す。英雄としての力を無理矢理発動させた負荷は確りとその身体に残っている。
カーネスとの決着が間近に迫っているのを感じながら、悠理も城門を潜ってく…………。
――――――
――――
――
「オラオラァ!」
グレッセ城内に粗野な声が響き渡る。
――――絶対にディーノスで入るのは厳禁なんだろうな。そう思いながら、城内の走り回る。
先行するカーネスを追いかけつつ、ヘレンツァを振る。当然の如く避けれるが、空ぶった一閃は壁や、飾ってあった鎧や壷にぶつかって破壊音を奏でていた。
「くっ、貴様! 城内の物を壊して回るな!」
「ヘッ、何だいそりゃあ? 兵士の命を盾に取ってる悪人が城の心配かい?」
「――――ッ、黙れ!」
悠理にそんな事を指摘され、カーネスは何を思ったのかは解らない。ここで重要なのは彼が急反転し、突撃を仕掛けてきたと言う点だ。
「おっと……! 気張れよアズマ!」
『ぐげっ!』
「エスタラ!」
『ギィィィッ!』
アズマとエスタラ。二体の角付きディーノスは、リーダーの証たる角をぶつけ合う。ごっ、と凄まじい音が鳴り、二体は一歩も退かず脚を踏み込んで、相手を押し切ろうとする。
しかし、やはりと言うかどちらも譲らない。踏ん張って、首に力を入れ、相手の角をへし折らんとする。
「喰らい――――やがれぇぇぇ!」
「――――させんっ!」
制止状態である今が好機! そう睨み、悠理が身体を捻ってフルスイング。その一撃を阻止せんとカーネスも長剣を振り下ろし――――。
「オォォォォォォォォオッ!」
「アァァァァァァァァアッ!」
長剣の刃と戦鎚の柄が激突、力をあらん限り込めて互いを打倒しようとする。しかし、やはりここでも拮抗。力押しは互角で、でもその均衡は突如崩れた。あまり意外な方向からの抗議で。
『ぐげげげげっ!』
「アズマ? ぬぉっ!?」
『ギギィィィア!』
「むっ、エスタラお前――――」
アズマとエスタラが暴れ、主である二人を背から退かせたのだ。
――――ディーノスは忠誠心が高い生物で、この様に主を背から叩き出すような事は滅多にない。
しかし――――。
『ぐげ! ぐげげげげげ!』
『ギィア、ギギィィィィ!』
同属同士の、それも角付き同士の戦いに発展したのなら話は別。
アズマとエスタラ、二体の獣は角付きとして決着を望んでいる。そこに搭乗者は不要。
これは――――――――ディーノス達が行う野生の戦闘!
「――――成程、お前にはお前の意地があるってか…………絶対に負けんじぇねぇぞアズマ?」
『ぐげっ』
「エスタラ、王者の風格を見せ付けろ」
『ギィアっ』
悠理達はその意思を汲み、各々の愛騎から離れる。それを確認すると再び角をぶつけ合い、戦いを始めるディーノス達。
「さぁて…………、俺達は俺達で――――」
改めて両手でヘレンツァを握り、カーネスと対峙する悠理。それを見てカーネスは右手に長剣、左手に短剣を構えて応じる。
「――――戦いの場へ行こうか!」
二人は互いに視線を向けて対峙したまま走り始める。彼が決着をつけるべき、相応しい舞台を目指して。
次回から、ディーノス達の戦い。