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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
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激突、グレッセ王都!・巨人達の咆哮その一

ふい~、俺タワーのイベント回してたら遅くなってしまった…………。

 ――時はメノラやレーレが各々の敵と激闘を繰り広げている最中に戻る。彼女達がそうであった様に、岩石と鋼鉄の巨人達の戦いもまた熾烈なものとなっていた。


『バァァァァァァァッ!』

『ごぉぉぉぉぉぉぉっ!』


 戦場に響く巨人達の咆哮。打ち付けられる岩石と鉄の拳。

 前者は兵士たちの鼓膜を、後者は衝撃波となって彼等の身体を揺らす。


 もうずっとこの状態が続いてる。二体の巨人は一歩も退かず、相手を砕かんと拳を繰り出す。真っ直ぐな、真っ直ぐすぎる戦いだった。


 技らしい技もなく、唯々互いの拳を打ち付け合う。


『バ、バァァァァ!』


 ――――おかしい。グレプァレンは焦りにも似た感想を抱いた。何がおかしいって自分の拳がエミリーの身体を打ち砕けない事が、だ。

 己は鉄で、相手は岩石。強度が違う。しかももう数十発も打ち合っている。なのに、なのに砕けない。


『バアァァァァァァアッ!』

『ごおぉぉぉぉぉぉおっ!』


 再び衝突。轟音を響かせ、地面を踏みしめながら拳を更に押し出す両者。互角――――と思いきや、ここでようやく均衡が崩れる。若干打ち負けたのは――――。


『バ、バアッ!?』


 まさかの――――自分。そんなバカな。どうして、何故だ!

 怒りすら露にして、自分の負けを認めたくないとでも言うようにもう一度拳を打ち出す。


『ごおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!』


 エミリーもそれに合わせて鋭く、速く、拳を叩き付ける!


『バ、バァァァァ……!』


 そしてまたもや打ち負けたのはグレプァレン。まさかの二連敗に暫し呆然……そしてこれがエミリーにとって好機の隙。


『ごっ!』


 今までは常にグレプァレンが先手を取って攻撃していた。数十発続いた拳の打ち合いで、これがエミリーから仕掛けた初めての攻撃。

 そして隙を晒していたグレプァレンがその動きについていけるハズもない。


『バッ!? バァァァァァァッ!!』


 ――――顔面にクリーンヒット。そのまま腕を振りぬかれ、殴り飛ばされる。数十センチほど巨体が浮いてそのままゆっくりと背後に倒れて行く。

 ズゥゥゥゥンッ、と大きな音と鳴らしながら地面が盛大に揺れる。あまりの重みで地面がグレプァレンの形に歪む。


倒れた方向には誰も居なかったのが幸いだった。もしも居たなら――――全身の押し潰されていたに違いない……。


『――――――――バ?』


 ――自分は何故倒れているのだろうか? 一撃を貰ったというのは理解している。…………しているが、納得はできない。エミリーは強い。少なくとも平凡ではない事だけは確かだ。

 しかしそれでも、グレプァレンには己が強者であり、自身を形成するこの鋼鉄に絶対の自信を持っている。その事を誇りに思っているとも。


 だからこそ、プライドが今の負けを認めない。今のはきっと偶然だ。傲慢にもそう結論付けて起き上がる――――が。


『バ? ババ?』


 身体を起こした際にパラパラと何かが零れていくのを感じた。それは自分の顔から。顔に土でもついたのだろうか? 暢気にも程がある予測をしつつ、顔に手を伸ばし――――。


『バッ! バ、ババァァァァァァァァッ!?』


 何が顔から落ちたのか知り、絶叫。キラキラと太陽を反射しながら落ちていくのは――――顔を覆う鉄。グレプァレンのプライドそのもの。


 先程の一撃によって鉄が砕かれていたこと。そして、己のプライドに傷をつけられたショックが彼を徹底的に叩きのめす。精神的なダメージに頭を抱えて悶えていた。


『ごー、ごっ!』


 エミリーは拳を振りぬいたポーズのままに自身の一撃を褒め称えた。――――が、彼女の拳からもパラパラと岩石が欠けては剥がれ落ちていく。

 ――いや、さっきからずっとこうだったとも。だから驚きも無い。当然だ、鉄と岩石だったら考えるまでも無く前者に分があるだろう。


 量と質によっては岩石が勝る事もあるかも知れないが、重量が大体同じであるという点でそのセンは消える。質も――――大体変わらないだろう。


 では、だったら何故、エミリーの拳は鉄の巨人へ届いたのか? 疑問が浮かぶ。双方とも共に500年以上前の生まれ。故に祝福の質にも大きな差は無い。むしろ、“ノレッセアの審判”で負傷したエミリーの方が遥かに不利。


 勝敗を分けたのは――――気持ちの差だ。

 ――――ノレッセアの審判の時、自分は大切な親代わりの存在と、自分達を守護石として大切にしてくれた国の民を護れなかった。後悔――――それは辛い記憶。


 けれどエミリーは後悔の海に沈んでダメにはならなかった。同じ轍は踏まない。今ここに居るのは自分の仲間だ。共にここまで旅をしてきたかけがえの無い人達だ。

 ならば、今度こそ護らねば。


 その強いは力を生む。エミリーにもファルールの祝福効果は付与されている。だからこそ、弱体化によって喪った能力を一時的に取り戻す事に成功していたのだ。


 “強固なる意志の拳”。己の意思を反映する身体強化能力だ。

 意思に揺らぎが無ければ無いほどにエミリーの力は増す。しかし、代償にその気持ちが揺らげば最後。一気にあらゆる身体能力が下がり、下手をすれば一瞬で砕かれる事になる。


 ハイリスクハイリターンを地で行く能力はまさに賭け(ギャンブル)

 エミリーは己の命を天秤に乗せこの戦いに挑んでいる。まさに不退転。


『ごぉぉぉぉぉぉおッ!』


 絶対に負けないと吠える。この戦いに勝利し、リスディアと共にゆったりと遊ぶ時間を作る為に。

 死に物狂いで戦う動機がなんであったとして、命を賭けて挑み続ける者に幸運の女神は微笑む。


『バ…………、バァァァァァァァア!』


 対して怒りに吠えるはグレプァレン。彼にもこうして戦いに赴く理由はある。しかし、今はプライドを傷付けられて頭に血が昇っているだけ(鋼鉄の塊だが)。そこにはエミリーの様な高潔なる意思は欠片もない。


『ごっ、ごっ、ごっ、ごっ!』

『バァッ、バァッ、バアァァァァァア!』


 そうして、殴り合いが再開される。怒りで力が水増しされたのか、エミリーに押し勝てずとも、押し負ける事はなくなっていた。

 ――――どちらかが倒れるまで続くこの肉弾戦は、まだまだ終わりの果てが見えない。

次回、鉄の巨人が戦う理由。

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