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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
225/3924

激突、グレッセ王都!・神速の男と、騎士の女その一

あー、頭働いてないぞっぉぉぉぉぉぉ!


ブクマ減ったちくしょう!


ドラゴンズドグマオンラインに夢中になってた所為だって言うのかよ!

 アイザックはレーレを乗せたディーノスが走り去るのを黙って見逃しながら思う。『賞賛に値する』と。


「ここはレイフォミア様が用意した結界の外――――」


 恐らく、ギニュレアはギニュレアで本気を出していなかったのだろう、とアイザックは推測する。彼女はアレでいて悪に徹しきれない優しい心の持ち主。

 全てを破壊する力を宿して居ながら、戦いには全く持って向いていない。


 ――それでも、神獣化した彼女を退けたレーレの力は凄まじいものだ。一度は祝福を奪われた身でありながらこうして戻ってくるとは…………。賞賛に値する。

 だがしかし――――自分は違う。


「だから僕は()()本来の速度で動ける……。君を奇襲した時と同じか、それ以上にね」


 アイザックだけは本物では無いものの、レイフォミアの力を封じ込めた精霊石で触れられて能力を封印されている。だから結界内を出ても本来の力は発揮できないが――――そうじゃない。

 違うというのは、手心を加えないという事だ。ギニュレアと違って、彼は自分が何をしているかも、世界やレイフォミアにとって敵となる事も厭わない。


 覚悟がある。野望がある、願いもある。だから――そう、だから。

 ――――目の前に立つ騎士を蹂躙する事も平気でやるとも。


「そうだろうな。――――しかし、それほど大きな問題でもあるまい?」


 アイザックの鋭い敵意を感じつつも、ファルールは深刻な様子が無い。

 それはどこか――――廣瀬悠理の言動に似ている気がした。敵の兄弟を知って尚挑む愚か者……。

 しかし、悠理の事を詳しく知らないアイザックにはそんな事は解らないだろう。


「へぇ? 何か秘策でもあるのかい?」

「――――あるさ、取っておきのがな。出来れば使いたくは無いが…………」

「出し惜しみして勝てると?」

「思ってないさ。だが、切札は常に諸刃の剣でもあるからな……」


 やり取りの中にも余裕を喪っていない態度。けれどファルールはアウクリッドを正眼に構えて油断無く構えている。焦ってはないが、警戒は厳にしている、という事だ。


 眼前に立つは、目にも止まらぬ速度で飛び掛ってくる猛獣――――――ともなれば、その選択は正しい。

 ――――けれど、その警戒心が身を結ぶかどうかは些か疑問である。


「ふぅん、そうなんだ。まぁ――――」


 アイザックが剣を構え身を低くして、地面を力強く踏みしめ――――。


「――――使う前に終わらせるけどねッ!」


 ――――加速ッ! ファルールの視界から一瞬で姿は消え、気配を追おうにもあまりに速すぎて追いきれず。

 また、感覚で捉えた所で肉体が反応できるかすら解らない。


「――――後ろかッ!」


 感じ取った気配にアウクリッドを振りぬく。そこにはアイザックが! 

 ――――取った!、と思った瞬間、それは間違いだと知る。アイザックの脇腹に叩き込んだハズの剣はすぅっと、彼の身体をすり抜けたのだ。

 ――つまりは残像。故に。


「残念! 右だよ!」

「……ぐっ…………!?」


 ファルールが振り向いて剣を振るう僅かな時間、アイザックは機動を変えて真後ろから彼女の右側へと移動していたのだ。脇腹を思いっきり蹴られた彼女は、叩き込まれた衝撃に息を詰まらせながら吹き飛ばされて無様に地面を転がっていく。


「この程度をまともに喰らっておいて、僕を倒す? ハハハッ――――笑わせるな!」


 間髪いれずに再び加速。相手は――――もう立ち上がっている。けれど、立ち上がったところで!

 そう、心の中でアイザックは嘲笑した。つまりそれは――――――――油断した、と言う事ではないだろうか?


「――――アウクリッド!」


 愛剣に力を注ぎ込み、ファルールはその場で一回転。

 アウクリッドを全力で振り回したのだ。


「ハァッ!」


 それが一体何を意味するか? ファルールの剣、アウクリッドは遠距離からの斬撃だけで巨大な建築物さえも両断する代物…………。今は斬撃ではなく衝撃波しか飛ばせない仕様になっているが……。

 ――――その衝撃波は特大の威力を持つ事を忘れてはならない。


「何ッ!? う、うあぁぁ……!」


 如何にアイザックが速かろうと、三百六十度を丸ごと衝撃波で薙ぎ払えばどこかで引っ掛かる。

 衝撃の余波を喰らった彼は動きを止められ、今度は自身が吹っ飛び、地面に転がる事となった。


「――――笑いたければ笑えば良いさ…………」


 身体を起こそうとするアイザックにファルールは強かに笑う。こんな戦いは無様かも知れない。もしかしたら、邪道と言われるかも。だがそれでも――――。


「だが私は騎士だ! 主の剣となり進むべき道を切り開く為に存在する!」


 無様でも邪道でもいい。騎士の誇りとはどれだけ主君に忠義を尽くせるかで決まるものなのだから。

 

「――――舐めるなよ神の私兵? 騎士の誇りと女の意地は、無理だろうと無茶だろうと止められはしないのさ!」


 再びアウクリッドを正眼に、アイザックを迎え討とうとするファルール。彼女の精神は今非常に穏やかで安定している。

 ――では、彼女の方が有利なのか? そう聴かれれば答えはノー、だ。


「……たった一度の…………傷にもならないっ…………こんなっ、この程度の攻撃で――――」


 ヨロヨロと力なく立ち上がったアイザック。身体にダメージらしいダメージはない。

 ――――傷をつけられたのは。


「――――僕を倒すなんて言ったのかぁぁぁぁぁぁッ!」


 ――強者としての矜持……、だったのかも知れなかった。

 怒号を上げながら加速体勢へ、進行方向は…………。


「――――速いッ!? だが、真正面なら!」


 さっきまで以上に速度が上がっているのに、移動先が真正面だと解ったのは彼の激情が溢れ出ているからに他ならない。ならばこちらも小細工無用と、ファルールは渾身の力でアウクリッドを振り降ろす!

 一点集中の特大の衝撃波。しかし、それを――――。


「遅いって――――言ってんだろぉぉぉぉぉぉお!」

「う――――あっ!?」


 ――――アイザックは回避した……。いや、正確に言うのなら、身体を掠めるギリギリラインを通り抜けた、が正しい答え。そのまま感情と共に爆発した彼の速度は止める事などできず。


 ファルールは鎧の隙間に剣を押し込まれ、右肩を貫かれてしまう。一瞬の事過ぎて、痛みよりもその速度の方に気を取られてしまい、口からは悲鳴なんて出なかった。


「次は左足ッ!」

「ぐっ…………!」


 ――そこからは遊ぶように、いとも簡単に簡単に左足を切られる。痛みで反射的に膝を付けば、それが次の攻撃への隙になる。


「ほぉらッ、今度は右足だぞ!」

「――――チィッ!」


 言われた通りに右足を守る為、上半身を捻って左手に持ち替えたアウクリッドを背中へ回し、そのまま薙ぎ払う。これで右半身――――百八十度は攻撃範囲に出来たハズ…………だが。


「残念でし――――たッ!」

「う、あぁぁぁあああっ!」


 背後から迫っていたアイザックは、それをスライディングで避け、すれ違いザマに右足を突き刺した。

 宣言通りに行動に遂にファルールから絶叫が迸る。


 アウクリッドを地面突き刺して倒れる事は免れたが――――これはピンチだ……。

 その様子を見たアイザックは冷ややかに笑う。ざまぁない、と言わんばかりに。


 ファルールの言動が悠理に似たモノになってきているのなら、アイザックのそれはアルフレドを彷彿とさせるものだった。互いに主君を持つものとして、意外な共通点がここにあった訳だ。


「――――もう終わりかい? あっけないね…………」

「まだ……はぁはぁっ……左腕が残ってるさ……」

「関係ないよ、さっきので解っただろ? 僕が本気を出せば、例え真正面からでも君にはどうする事も出来ないよ」

「――――試してみるか?」


 もうその場からレーレは立つことすら出来ない。片腕でだけでアウクリッドを使いこなすもの難しいだろう。だとしても、彼女は退かない。レーレは相手が神獣であっても退かなかったのだ。だから自分も――――。

 ――――ミスターの役に立たなければ! 例え立てずとも、意地と対抗心がその身体を確りと支えていた……。


「――――騎士っての言うのは頑固者だよね…………良いよ、これで――――」


 そんな彼女にアイザックは呆れた様だった。安い挑発に乗ったのは彼にも意地があったからかも知れないけれど。脚に力を込めて――――蹴り飛ばす!


「終わり――――!」


 パァンと鳴った音は彼が一瞬で音速まで辿り着いた証。今回の戦いに置いては文句なしに最高スピード。

 ――――――――なのに。


「――――終わるのは」

「――――え?」


 ファルールの声が鮮明に聞こえた。目にも止まらぬスピードで接近し、首を跳ねるべく動いたのに。

 ――――アイザックの身体は剣を振り下ろす状態で止まっていた。一体、何故? そう疑問に思うよりも遥かに速く――――。


「お前の方だ。アイザック…………!」


 ――――ファルールの一閃がアイザックの胴体に直撃した!

次回、勝利できた訳。

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