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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
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番外編・世界の認識が狂えばいいのにと、少女は願ってしまった

残業の所為でやる気ゲージが……。あと、最近はまた頭が微妙に働かなくなってきてね……。


なので、今回は久々の番外編。

頭がぼーっとしてて、何かグチャグチャになっている、自信はある!

 ――――ギニュレアの過去と言うものは語れる程の出来事が殆どない。

 強いて言うならばその半生は迫害と忌避、悲哀と憎悪で構成されている。


 神獣という種は生殖能力が極めて低い。元々、これは亜人種以外の祝福によって変質した動物全般も同様。しかし、中でも一際その能力が低いのが神獣。

 そもそも、神獣というものは基本的に唯一(オーダー)無二(メイド)。与えられた祝福は世界中何処にも同じものが存在しないとされていて、その力は強力無比。


 けれど、神獣達も生物――――であれば、当然の如く子孫を残そうと考える。祝福によって変質し生まれた生物の性質は、あまり高くない確率で遺伝する。つまり、祝福そのものが遺伝する場合があるのだ。

 勿論、その確率は大きくない。そして、それは同じ種族同士で交配したら――――の話。


 ――唯一無二である神獣に番は居ない。であれば、当然子孫を残せるハズがない。

 何かしらの動物から派生した生物であるとはいえ、神獣はかなり特殊な生態を持つ。


 当然、適当な種を見繕って交配――――と言う訳にはいかない。

 ――――いかないが、試してみる必要はある。そう誰かが言った。それは神獣だったのか、()()()()()だったのかは解らない。だが、ある時を境にして神獣が様々な生物を攫って生殖行動をし始めたのは確かだ。


 言うなれば“交配実験”。――――胸糞悪いにも程があるが、一先ずはそれが適正な表現なのは間違いない。

 ――――ギニュレアはそんな“交配実験”にて生まれた神獣と獣系亜人種とのハーフ。

 これは実験の果てに解った記録だが、確率は限りなくゼロに近いが多種族との間に出来た子供には確実に神獣の力が遺伝する事が判明した。無論、多種族の血(ふじゅんぶつ)が混じった為にある程度の能力低下は否めないが。


 ギニュレアが生まれた後、父親である神獣は母親を解放し、彼女と共に人里へ帰した。

 子孫が生まれて満足だったのだろう。そこに愛情などあるハズもない。


 彼女にとって幸いだったのは、母親に愛されていたこと。

 十数年の日々はとても穏やかで、温かくて、心の底から幸せだったといえる。


 そして不幸は神獣との子であるギニュレアを、周囲の人々は認めようとしなかった事だ。

 同年代の子やその家族にまで罵倒を浴びせられ、石を投げつけられ……。酷い時は鉈で切りかかられた事もあった。彼等は酷く臆病で小心者で愚か過ぎた。


 単に自分たちよりも強大な力を持つ彼女が怖かっただけだ。浅ましい事に、ギニュレアが抵抗しないから恐怖はいつの間にか増長し、狂気となって彼女を傷付けるに至った。


 それでもギニュレアは決して力は振るわなかった。彼女自身もよく解っていたからだ。

 ――使()()()()()()。だからダメだ。使ってはいけない。そう幼い少女が自分を抑止し続けることで村の平穏は守られていた。とてつもなく歪な形で――。


 そんな過酷な日々でも癒しはあった。母親と居ること、頭を撫でて貰う事、一緒に食事をして、一緒にお風呂に入って、一緒のベッドで寝ること……。何処にでもありふれたそんな些細な事がやはり幸せで愛おしかったのだろう。


 ――――だから、それが壊された時、ギニュレア自身も――――壊れた。

 ある日のこと、彼女が家に帰ったとき出迎えてくれるハズの母の姿は無く……。


「おかあ――――さん?」


 迎えたのは血まみれの我が家と、やはり血で濡れた鉈を持つ数人の村人。そして――――――――バラバラになった母親……。


「い、いやぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


 ギニュレアの悲鳴に気付いた村人が、ケタケタと気味の悪い笑い声を上げて近付く。自分も母親の様に殺される――――そう思った。それと――――。


(許せない!)


 そう思った。母親の死体を見て恐怖で胃の中を全てぶちまけたい気持ちと相反する衝動。

 それを肯定した時――――――――全てが灰になった。初めて神獣としての能力を使い…………村は一瞬の後に壊滅した。


 一夜明け、ギニュレアは母親の墓を作ると、灰と化した村から旅立った。そこからは幼い少女の一人旅。

 決して楽な道ではなかった。普通に生きる事は難しい。半神獣であることを隠すのが既に困難だった。


 どうしてだって力を使えば、その異常性は際立つ。それに力を使えば使うほど――――尾が増えていく。

 通常の獣系亜人種は外見にその様な変化は起きないからである。ましてや尾が複数ある時点で存在を怪しまれてしまう。


 問題は尾だけではない。その身体に浮かんだ紋様である。これは如何なる能力であっても隠すこと叶わず。その異様な出で立ちに疑問を持つ者も多く、それで正体がバレる事も少なくなかったのだ。


 正体を知られれば人は皆自分を遠ざけ、あまつさえ殺そうとする。人を助けたのに、その人には石を投げつけられ。国を救ったつもりが、国に追われる身になっていた。


 “忌み子”、そう呼ばれた。邪悪な神獣の血を受け継ぎし災厄だと。

 人々は彼女を恐れ、決して受け入れぬ。


 最初の100年は地獄だったと思う。気の休まる時は無く、常に周囲は敵だらけだと疑心暗鬼に駆られていた。そしてその十数年後。


『私はレイフォミア・エルルンシャード。貴女の力を貸してくれませんか?』


 ――――大陸の守護者と出会う。彼女達と共に“ノレッセアの審判”を生き抜き、その後は天空幻想城で100年近くの間、心の傷を癒した。

 そして今から200年前、丁度レイフォミアが眠りに付いた後のこと。彼女は久々に天空幻想城から地上へ降り立ち。そして――――絶望した。


 ――――人々は全く変わっていなかったからだ。“ノレッセアの審判”時、半神獣達の多くはレイフォミアに力を貸し、戦争終結に尽力したと言うのに。レイフォミアは数百年駆けて半神獣の印象が良くなる様に、様々な試みを大陸全土で試していたと言うのに……。


 何も変わってなどいない。相変わらず人々は自分を恐れ、剣を付きつけてくる。

 彼女は一瞬悲しそうな顔を浮かべて、地上を後にした。後々になって『故郷と同じ様に焼け野原にすればよかった』と愚痴を零す事になったが。


 ――この時より、ギニュレアはチーフ――――アルフレド・デディロッソに組する事を決めた。

 目的は――――世界の認識を変えること。“半神獣”達が何悲しむ事無く、普通に接してもらえる様な世界……。数百年かけても認識は変わらなかった。ならば世界再生の時にその“認識”までも書き換えてしまおう!


 ――それはあまりに悲しい願い。自分や同胞に“優しい世界”を作るべく、世界を作り変えようとする。

 あまりも不器用な話だが――――それがギニュレアの原点(ルーツ)だった。


 そしてそれはそのままそっくり、レーレと戦う理由になるのである。

明日はきっと本編更新

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