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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
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激突、グレッセ王都!・淫魔達の流儀その五

あー、今日は書けない日だった様だ。後半頭が働いてないしなぁ……。


とりあえず、今日はこれで切り上げて明日の英気を養う事にしまーす。

『――――――――――――――――』

『……死んでしまえばこれはこれで美しいのかもね』


 最後の瞬間まで快楽を感じ歓喜だけを抱いて死んだアルレイン。その笑みは気味悪くすらあったが、延ばした左手で見開いた目を閉じてやれば、それは美しい最後を迎えた者の表情と言えなくもない。


『――さて、残りはアンタだけだけど』

『グオッ、グオオオオオオオッ……!』


 メノラの呼びかけに隣で大人しくしていたニルギアンが咆える。鼓膜が潰れていてもビリビリと震える空気が全身にに襲い掛かった。

 ――怒っている。歯を、敵意を、憎しみを剥き出しにして怒り狂っている。威圧で自由の利かない身体を懸命に動かそうともがく。……仇を取る為に。 


『へぇ……、主の死に怒れる位には懐いていたみたいね?』

『グゥオオオオオオオンッ!』


 再度ニルギアンは咆哮。結局、かの神獣と大淫魔にはどう言う関係が築き上げられていたのか解らずじまい。けれど、圧倒的力の威圧を撥ね退けてまで主の仇を取ろうとしているのだ。

 事実はどうあれ……、ニルギアンにとってアルレインはそこまで出来る相手だったという事だろう。


『良いわ、ニルギアン。拘束は解いてあげる。けど――――容赦はしないわ』


 真っ直ぐに神獣を睨みつけ、宣言通りにニルギアンの拘束を解く。


『グオオオオオオオアァァァァァァッ!』


 自由が戻ったのと同時に何の躊躇も無くメノラに拳を振り下ろすニルギアン。鋭く、速く、必殺を込めた一撃。先程のまでの恐れはやはりない。

 威圧を解いても、受けた恐怖は簡単に取り除く事は出来ない。しかし、それを上回る強い思いがあるのなら反抗するのは難しくはないだろう。


 ニルギアンは怒りを抱き、その咆哮に乗せる。主を仇を討つ、そうしなければならない――――ではなく、そうしたい。唯、それだけが神獣を動かす原動力。


 ――美しいとメノラは思う。世の中には敵討ちを望んでも、恐怖に屈して逃げ出す者が多い。

 そんな中で真っ直ぐに目的を果たそうとする姿は唯々美しい――――その願いは叶わないけれど……。


『――――サヨナラ』


 送別の言葉はそれだけ。いつの間にかメノラは左手に“淫魔の微毒”を握っていて、ニルギアンの腕が振り下ろされるよりも速く刺突を繰り出す。

 “淫魔の微毒”が()()()()()()()()、神獣の心臓へと狙い違わず()()


『――――――――ッ!? グゥ……オオ……オオオ……オッ…………』


 ――貫かれた事に唖然とする。ついさっきまで刺さる事すら難儀していたのに。まるで身体が土塊か何かに変わった様にあっさりと刃が通った事に疑問を抱く。

 疑問の答えは胸に突き刺さった()()()()()――――“淫魔の微毒”にある。


 この刺突剣は、淫魔の力に呼応して能力を高める力がある。“淫獄の魔眼”を解放したメノラの身体能力は通常状態と比べて桁違いのレベルに到達しており、大淫魔を軽く凌駕し淫魔神に近しい能力を得ていると言っても過言ではない。


 メノラにそこに至るまでの才能と、力を許容できるかと言えば――――難しいと言えるだろう。だがしかし、その身体には間違いなく淫魔神の力が溢れ出ているのだ。望む望まない、可能不可能ではなく、力を御しきれるか否か以前に、力自体は行使できる。


 “淫魔の微毒”はその力を吸って、武器として限界近くまで進化を遂げた。無論、メノラが“淫獄の魔眼”を再び封じれば刺突剣もまた以前と変わらぬ性能へと落ちるだろう。

 だが今は強化状態にあり、そうなった“淫魔の微毒”であれば神獣の身体を貫くもの容易。 


『ォォ……ォ……ォォ』


 淫魔の力を反映できるこの剣は、皮膚を突き破って心臓へ、心臓を突き抜けて背中をも易々と貫く。

 刀身に傷付けられた心臓が、滲み出た毒によって溶かされていくのを感じる。不思議な事に痛みはなく、アルレインが感じていた快楽もなかった。


 ――それはメノラがそう調整したからである。ニルギアンにそうする必要はあるまい。

 相手が同族であったからこそ、淫魔としての力で用い屠ったのであって、神獣であるニルギアンにはこうした方が相応しい気がしたのだ。


『――――――――――――オ……』


 唸り上げ続けていた声が途絶える。ピクピクと痙攣していた身体も直ぐに動かなくなる。

 ――拳はメノラに当たる寸前で止まっていた。あと少し、ほんの少しで主の仇を討てた――――そう考える間もなく、ニルギアンの意識は消えて行く。


 全身の力が抜けていくのを感じ、制御の離れた身体はズゥゥゥンと音を立てて、仰向けに倒れた。砂埃が舞って周囲を包む。

 しーん、と静寂が場を支配し――――――――戦いの幕が降りた……。


『――あー……、やっと終わったわね……。って、痛タタタッ!?』


 砂埃が晴れれば、そこには背伸びをしようとして激痛に悶えるメノラの姿。

 完全決着を迎えた今、彼女が放つ雰囲気はどこか緩い。


『くぅッ! 淫魔の力で痛みを誤魔化しているとは言っても、右腕は粉砕、肋骨全損はキッツいわねぇ……』


 左手で前髪を弄り、“淫獄の魔眼”を隠す。深手を負っているのでまだ解除できないが、あまり晒し続けていていいものでもない。何せ、この魔眼の魅了は自然現象すら意のままに操れるのだ。

 ――メノラには出来ないとは思うが、瞳の持ち主――淫魔神メルチェドレアは普通にやってのけた事実がある。暴発はしないハズだが、念には念を押しておくべきだろう。


『さて――――と』


 いつもの髪型に戻ったメノラは眷族精霊を召喚。“淫獄の魔眼”を解放している間は、召喚に対するコストを気にしなくていいのが利点とも言える。

 呼び出したのは炎のフリュと、大地のシェガリー。

 彼女は呼び出した眷属に一言伝える。


 まずはシェガリーが動く、彼女が指パッチンをするともぞりと土が盛り上がった。そのまま土は椅子へと形を変えていく。しかも普通の椅子じゃない。お年寄りが使うような、もたれかかるとゆらゆらとゆれるタイプの椅子だった。


『――ふぅ、じゃあ、後はよろしくね……』


 作らせた椅子に背を預けるとメノラは次の指示を出す。

 フリュはアルレインに近付くと、その死体を持上げ、ニルギアンの胸元へと運んでいく。


 シェガリーは再び土を盛り上げてニルギアンの腕を同じく胸へと持っていき、最後はその手を組ませた。

 腕の中には安らかな笑みを浮かべたアルレインがいる。


『アナタ達の間に愛情があったかなんて知らないけど……、ワタシなりの礼儀だと思って受け取ってもらうわ』


 合図を送るとシェガリーが土でドームを作成。あっと言う間に大淫魔と神獣の遺体を覆い隠す。――が天井部分には煙突状の筒があった。

 そして最後に、フリュがドームの中へ火を入れると周囲にはたちまち熱気が立ち込める。


 メノラの礼儀――――それはアルレインとニルギアンの火葬であった。既に彼女達は屍だ。

 だから本来なら効かないであろう精霊の炎にあっさりと身を焼かれていく。


 ――――炎よ、どうか彼女達を安らぎに導き給え……と、唯の人間だった頃に教わった供養の言葉を捧げるメノラ。戦いが終わってしまえば怒りも憎しみも無い。

 ならばこうして死を悼むのもおかしなことではないだろう。


『疲れたわぁ……。少し休んだら、ミスターの後を追わなきゃ……ね……』


 ドームから微かに上がる煙を見上げ、メノラは瞳を閉じる。

 “淫獄の魔眼”の影響で身体能力が向上している為に、傷は徐々に塞がってきている。


 しかし、完全回復にはまだ時間がかかるのだろう。そして――――。

 ――――自分が駆けつける頃にはもう決着がついているに違いない。


『ミスター――――カーネスを……』


 ――お願いね? 呟きは最後まで発せられる事無く静かな寝息へと変わっていた。

 時は無常に進んで行く、状況は変化し続ける。今この場でついた決着は、誰かの戦いの幕開けかも知れない……。そう、きっと今も誰かが戦っているのだろう。


 一つの勝負が終わりを迎えてもこの戦いはまだまだ終わりを迎える事は、ない……。

次回より、レーレvsギニュレアの予定。


――あっ、タイトル変えるって言っててずっと忘れてるけど、どうすっかなぁ…………。

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