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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
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激突、グレッセ王都!・淫魔達の流儀その一

スプラトゥーンのフェスに思ったより時間をとられてしまい、結構ギリギリになってしまった。


うーん、やっぱり後で加筆して修正だな。

 ――グレッセ王都郊外、敵国ヒャルアイ方面に続く道を二人の淫魔が飛んでいく。

 こちらの方角はあえて道が整理されておらず、大地は荒れて歩行しようにも路面は最悪の状態。


 しかし、だからこそメノラはこちら側へと飛んできたのだ。ここは既に王都から一km半は離れているし、周囲には操られそうな生物もロクに居ない。ここが最適だ。


『――流石に大淫魔ともなると厄介ね……』


 ディーノスほどではないが、それでも走るよりはかなり速くメノラは空を駆け抜ける。背後を見ればピッタリと付いてくる大淫魔の姿。


『オラァ、待ちやがれこのアマァッ!』


 未だに怒り心頭らしく、汚い言葉を撒き散らしながら血眼で追いすがる大淫魔アルレイン。

 コウモリの翼を大きく羽ばたかせ、風切り音を響かせながらメノラを追い詰めようとする。


『待つわけないで――しょっ!』


 上半身を捻り僅かに後ろへと傾ける。再びその胸から大量のヴェンディガヴを召喚。アルレインを足止めせんと襲い掛かっていく。

 ――が結果は解っている。彼らでは相手には叶わない、一蹴される。解っているとも。

 だから――――――――。


『そんなモノいくら召喚したって!』 


 殺到したヴェンディガヴの群れを右腕で無造作に薙ぎ払う。唯それだけで彼等は身体をブチブチと引き裂かれ、死体へと変わる。


『さぁ、追い詰――――ッ!?』


 ヴェンディガヴを殲滅し、その先に居る標的を捉えようとした時――――目の前に飛び出てくる何かを見た。


『締め上げなさいエルガバブ!』


 それは――――二匹の大蛇。メノラが特注で製作したゴスロリドレスの裾からそれは伸びていた。先程のヴェンディガヴは囮。アルレインの視界を塞ぎ、注意を引き寄せる為だけに召喚したのだ。


『――チィッ!』


 この作戦に見事引っ掛かったアルレイン。舌打ちする彼女の両腕には大蛇が素早く巻きつき、確りと拘束した。大淫魔ほどの相手なら簡単に引き千切れるかもしれないが、その暇は与えない!


『そぉ、れッ……!』

『うぉぉぉぉっ!?』


 メノラが空中でグルグルと回転を始める。すると、二匹のエルガバブで繋がったアルレインもつられて回転する。言わばジャイアントスイングの様なものだ。

 さしもの大淫魔も遠心力に釣られてさるがまま。十分に回転を重ねた所でアルレインを地面へと投げ飛ばす! この時、エルガバブ達は大淫魔の全身に絡みつきその動きを封じていた。


 しかも、それだけではない。絡みついたエルガバブ達は石化していた。

 ――祝福によって変質したノレッセアの固有種である蛇“エルガバブ”は、自分の死を悟ると石化する習性があるのだ。だがそれで終わりではない。


 石化したエルガバブはその身体から毒ガスを出す。それは神経ガス、通常の人間や動物であれば即死効果があるような強烈なもの。――が、恐らくアルレインを殺す事は出来まい。

 精々、数秒間行動を封じる程度だろう。だがそれで構わない。

 狙い通りに大淫魔は動きを封じられ、無様に地面へと落ちていく。ズザザッ、と背中から。


『間髪入れずに決めてやるわ!』


 態勢が整わぬ内に止めを刺さねばならない。カッコつけて相手を引き受けたものの、自分と彼女では力に差があるのはメノラにはちゃんと解っている。

 ――認めたくは無いが、余裕は無い。故に、作りあげたこの隙を最大限に生かさねば。


『淫魔メノラに傅きし者共よ、我が敵を討ち滅ぼせ!』


 自身の最大の力。使うのは数年ぶり、大淫魔リリネットに従って南方の淫魔や人間と抗争を繰り広げて以来か。精霊界への扉を開き、眷族精霊を召喚する。

 空間が歪み、彼女の周囲に七つの穴が生まれる。


『フリュ、ダヴィル、コディッシュ、アー、シェガリー、ニズン、リレノ!』


 穴から這い出て来たのは――――生まれたままの姿を晒す七人の精霊。例外なくすべてが女性、しかもその身体はあまりに幼い姿であった。彼女達の裸体を包む様に舞うモノが各々の属性を良く現している。


 フリュは炎を、ダヴィルは水と氷を、コディッシュは風、アーは雷、シェガリーは土と石つぶて、ニズンは闇を、リレノは光を。

 ノレッセアにおいて存在を定義されている全ての属性がそこにはあった。これ即ち――“七つの自然摂理”。


『――――痛ってぇ……って、へぇ? 各属性の精霊を眷属にするとは――――やるじゃねぇか?』


 地面に落とされたアルレインが気付いた頃にはもう攻撃準備は終わっていた。その光景を見た彼女は素直に感嘆する。いくら多種族を魅了し従わせる淫魔でも、ここまで精霊を眷属に出来る淫魔はそうそう居ない。

 少なくともアルレインがここ数百年で見ていないのは確かだ。敵は格下ではあるが、優秀な淫魔である様だ、と心の中で賛辞を送る――と同時にメノラの攻撃が開始された!


『喰らいなさいな! “七色の光槍”!』


 精霊達が己の属性を凝縮した槍を宙に作成、掌をアルレインへと向けたかと思うと凄まじい勢いでそれは発射される。

 高速で迫る槍は途中で惹かれあうように交じり合い、互いの属性を否定しながらも融合、分解、分離を繰り返す。この時、属性同士の否定と言う矛盾は新たな属性を生むキッカケとなる。


 あらゆる否定の行き着く先、絶対的な滅び――――虚空。あらゆる存在を否定する絶対的な暴力がそこに生まれた――――がそれは糸か針かと言う程に細い。

 メノラが使役する眷属の力では“虚空”を生み出せてもこの程度なのだ。


 だがそれでも威力は絶大。“虚空”の針はかたず目標に突き刺さり、特大の衝撃波を発生させ、盛大な砂埃を上げる。


『――皆、ありがとう。帰って頂戴』


 それを見た直後、決して砂埃の中心から目を離さないままに、メノラは眷族達へそう告げた。

 精霊達は少し戸惑った様な顔をしたが、命令に従いその姿を消していく。元より、今の一撃で彼女達をこの世に存在させるエネルギーは尽きていたので帰るしかなかったわけだが。


『これで終わったハズないでしょう? いい加減出てきたら?』


 この場から彼女達が居なくなったのを確かめ、メノラは声を張り上げる。倒せた――――なんて始めから考えてはいない。間違いなく生きているとも。

 そして――――聴こえたてきた高笑いと、それと共に吹き飛んだ砂埃が予感が正しいものだと証明した。


『――――クククッ、アーッハッハッ! 眷属を帰したのは良い判断だ!!』


 アルレインは生きていた。生きていたが。左手の指は全てが()()()()()()。切り飛ばされた、千切られた、弾けとんだとも違う。

 ごっそりと指の根元から抉り取られている。直撃はしたが左手で防ぎきったのだ。代償として指を喪失したがなんて事はない。


『――そうね、淫魔同士の戦いじゃ眷属はむしろ足手まといだもの』


 渾身の一撃が大したダメージを与えられなかった事にさしたる驚きは無い。むしろ、損傷させただけでもよくやった方と言えるだろう。

 次なる一手を模索する為に、メノラはアルレインとの会話に興じる。


『ああ、そうさ。何せオレ達淫魔は相手を魅了し、操り従わせる存在…………』

『その淫魔が同族と戦う場合――――』

『――相手を自分の魅力で従わせた方が勝ちになる。しかも、格上と戦うときは間違っても眷族は出さないのが普通。眷属が魅了されたら一気に不利になるからな』


 淫魔同士の戦いにおけるルール――と言うヤツだった。それでも眷属精霊を召喚したのはアルレインの頭に血が昇っていて、短絡的な行動しかしてこないと踏んだからである。

 だがそれも――――。


『――醜い本性を晒した癖に随分と冷静じゃない?』

『オホホ、もう無駄ですわよ? ワタクシ、攻撃を受けると冷静になりますのだって――――』


 ――スイッチが入った。アルレインが淫魔としての性質を曝け出そうとしているのを感じ、背中に怖気が走る。


『アアッ! この痛み! 数百年ぶりにまともな痛みを感じられるなんてッ!! やはりいいものですわッ!!』


 彼女は消滅した左手の指部分を見つめて恍惚に顔を歪めた。そこに快楽でも見出して入るのだろうか?

 頬は確かに赤く染まり、吐き出す吐息は何とも艶やかな妖しさを秘めている。


『ヤバ、変なツボ押しちゃったかも……』


 メノラはこの時、死を覚悟した。勝つ気持ちが揺らいだと言う訳じゃない。しかし、それでも自分は死ぬ。そう確信せざるを得なかった。

 大淫魔の発する狂気が彼女にその決意を促したのだ。背中に嫌な汗が浮かんで止まらない。


『アハハハッ、この喜びをッ、この快楽をッ! アナタに教えて差し上げたいッ!! このワタクシの――――』


 痛みに歓喜し、その場でくるくると踊り始める大淫魔アルレイン。彼女がステップを踏む度に巨大な力が空間を歪め――――叩き割ろうとする。

 眷属を召喚するつもりだ――――メノラは身構えた。とんでもなく嫌な予感を覚えつつも、何が来ても決して臆すなと心に活を入れる。


『――可愛い可愛い、家畜でッ!!』


 大淫魔が踊りをやめた瞬間、ひび割れた空間から手が伸び、空間を引き裂こうと掴んで穴を広げようとし――――。


『グオォォォォォォォォンッ!』


 ――――その巨大な姿を見せ始めた。まだそれはシルエットだけであるが、メノラはその正体に気付いて声を上げる。先程、何が来ても臆さないと誓っておきながら、彼女はあっさりと臆し、声を上擦らせた。


『ちょっ!? ちょっと! そいつってもしかして――――』

『そう――――“神獣”ですわ』

次回、神獣相手に勝てるワケねーって。

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