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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
209/3923

潜入、グレッセ王都!・変貌せし騎士

うあーん、頭がぁ、頭が働かないよぉ!


――あっ、更新前に見たらブクマ一件追加されてました。


ヤッター、ありがとうございます! ありがとうございます!!

「グッ……ァ……!?」


 カーネスの振るった剣は炎に転化しかけたアルフレドの身体を問答無用で切り裂き、盛大に飛び散った血がタイルを穢す。胸板を深く斬られ、どうっと前のめりに倒れるアルフレド。

 血溜まり沈むとはまさにこの事で、斬られた箇所からドクドクと流れ続ける命の源はあっと言う間にタイルを染めていく。


『――――アルくん………』


 先程あれだけ酷い仕打ちを受けたというのに、その姿を見たレイフォミアは辛そうな顔。何しろ300年以上の付き合いだ。気持ちを裏切った、見限ったなんて関係なく、そんな長い付き合いならば悲しいのかも知れなかった。


「――おいおい、何が起こってるんだ?」


 レイフォミアと同じく、倒れ伏したアルフレドを見つつ怪訝な顔の悠理。ピクピクと身体が動いているかた死んだ訳ではないだろうが……。

 何しろいきなりの展開だ、裏切った――――いや、『芝居は終わり』と宣言した以上、正気に戻ったと言うべきだろう。カーネスは悠理達に向き直り、左手を開いてアルフレドから奪い取った水色の宝石を見せて言う。大きさは掌大のひし形だ。


「この宝石が何か解るか? これは騎士達を操っていた首輪と連動する祝福を与えられたもの。私はずっと――――これを奪う機会を窺っていた……」


 そう言われて気絶している騎士の首を見れば、確かに首輪を付けていた。そしてそこにはビー玉サイズの水色の宝石――――精霊石が埋め込めれている。成程、どうやらカーネスの手にあるひし形宝石が命令を出して、首輪が受信するという形式らしかった。

 八千の騎士を洗脳状態に陥らせるのだから、ひし形宝石は余程高純度の精霊石である事が窺える。


「――フンッ」


 説明し終えたカーネスは宝石を握り潰す。水色の宝石はキラキラと煌めきを残しつつ、タイルの上に落ちていく。カーネスは残骸を見向きもせずにそれを踏み潰す。グリグリとなじって完全に粉砕した。

 最後に残ったのは彼の掌にある――――水色の輝き。


「――何の為に奪った?」

 悠理の疑問。それは二重の問いかけ。

 どうして直ぐに破壊しなかった、どうして――――その手に“祝福”を隔離したのだ?


 今、カーネスの手にある光は彼の能力によって隔離された“祝福”そのもの。何も言われなくて悠理には解った。だから問うたのだ。

 ――その手に奪ってどうするつもりだ、と。


「――――フッ、こうする為さ!」


 カーネスもまた悠理の問いかけの意味を十分に理解していた――――故に行動で持ってその返答とする。

 光が収まった左手を鎧越しに自分の胸へと押し当てる。すると、光は徐々に彼の身体へと吸い込まれていき……。――完全に消え失せた。


「カーネス!? 貴方何をッ!」

『祝福を……取り込んだ? 一体、何の為に……』


 傍観者であったヨーハとレイフォミアも彼が何をしでかしたか悟る。カーネスの祝福殺しは相手から祝福を切り離す事が出来る。――レーレにそうした時の様に。

 そして切り離した祝福はどこかに保管しなければならない。それがルール。精霊石の中か、彼の保有する亜空間か――――己の身体か。


 祝福はこの世界で生まれた生命が必ず持つ力。必ず一人、もしくは一体、或いは一匹だが、一つは祝福を授かって生まれてくる。

 ――が、それは祝福が一つしか持てないと言う事ではない。現にアルフレドは自分の祝福とルカから譲り受けた祝福を身に宿している。


 そしてカーネスの様な祝福殺しはその特性上、必然的に多くの祝福を奪う機会に恵まれる。まぁ、強奪したからと言って本人の力が伴っていなければ意味が無い。

 ――しかし、彼はその条件をクリアしている。つまりは使用出来る。そう、先程奪った祝福すらも自在に!


「ミスターフリーダムと言ったな? 騎士達を助けたくば――――私と闘え……!」


 突然の申し出に周囲が騒然とした。ヨーハが何か言いたそうにパクパクと口を動かしていたが、かけるべき言葉が見つからないらしい。


「――――へぇ、願ってもないが……何故だ?」

「私の願いを叶える為だ。断るなら騎士達を操っていた道具にある効果で彼等を殺す……!」


 他の皆と違い、悠理は申し出に驚いた様子はなかった。何となく直感だったが、アルフレドを倒してはいお終い! ――とはならないと思っていたからだ。

 何を考えて彼がそんな事を言い出したのかはようとして知れない。知れないが、騎士達の命を盾に使う辺り、余程悠理と戦わねばならぬ理由がある――――のだろう。


「待って! 待って下さいよカーネス!! 洗脳は解けたんでしょう? だったら――――」

「ヨーハ、君は勘違いをしている」

「え?」

「私は――――操られてなどいなかった。己の意思で行動していたとも」


 だがヨーハにはそこまで考えが追いつかない。幼馴染の暴挙に唯々困惑するしかなく、そこに更なる衝撃的な事実が加われば困惑は混乱へと悪化する。

 飲み込めない、そんな事実は簡単には飲み込めない。


「――そん、な……、こんな事に加担して一体何の意味があるんですか!」

「……………………」

「カーネス!」


 ワナワナと震え、いつもは明るい表情を一瞬だけ悲しみに染めた後、ヨーハはキッと堕ちた騎士を睨みつけ、その行いを糾弾した。黒き騎士は名を呼ばれても、非難の声を浴びせられてもその問いには答えない。


「――下がってなヨーハ」

「で、ですけどユーリ様!」


 見かねた悠理がヨーハの肩を掴んで下がらせる。まだ言い足り無さそうではあったが、カーネスはきっとだんまりを続けるだろうと確信に似た何かを感じていた。正直言ってそれじゃあ埒が明かないだろう。

 だから、悠理は一歩進み出て宣言した。


「良いぜカーネス。レーレから祝福を奪った件でお前に礼がしたかった所だ――――が、その前に――」

 込められるだけの私怨と、皮肉をたっぷり込めた毒を吐く。今すぐにでも悠理は決闘に応じたいが、どうやら先に文句を言いたい人物が居るらしいと、肩を竦めた。


「――そっちの眼鏡はまだまだやる気みたいなんだが……どうするよ?」

 カーネスの背後に立つ人影。ゆらりと生気を感じさせない幽霊ゴーストの様に、それは立つ。


「――君達、どこまでボクの計画を邪魔する気だい? もう――――おふざけはここまでだッ!」


 出血多量で動けないハズのアルフレドは、怒りを煮えたぎらせて立ち上がっていた。上半身を“神獣の炎”で炎に転化すると、流れ出た血も共に燃え上がって彼の身体へと戻っていく。


 ――炎とは破壊の象徴、であると同時に、再生の象徴でもある。ましてや彼が使う炎は“神獣”のもの。一度振るえばあらゆるものを灰燼に帰し、一度燃え盛ればあらゆる傷を炎で癒す事も出来るだろう。


 つまりは、先程の致命傷は既に完治し、相手はる気満々のオーバーヒート状態なワケである。


「アルフレド、邪魔をするなら――――先ずは君から退場してもらおうか?」

 黒き騎士は怯まない、半身だけ身体を燃え盛る神の使いへ向け、剣を突きつけ宣戦布告。


「面白い! 二人纏めてでも、この場に居る全員でも構わない!! さぁ来い、蹂躙してやる……!!」

 どうやら頭の中まで炎上中らしく、この場に居る何もかもを燃やし尽くそうという腹積もりらしい。

 ――やれやれ、そこにはレイフォミアだって居るでしょうに……そう()()()()は呆れた様に呟き……。


「――へぇ、だったら()()()の相手をしてもらおうかしら?」

 ――久々の出番を喜びながら、アルフレドへ向かって一歩前へ踏み出す。その少女はまさしく――――。


「この懐かしい感じは――――カーニャか!」

 そう、カーニャであった。いつの間にか瞳の色が銀色から元に戻っており、その口調も間違いなく彼女のものである。


「フフン、どうユーリ? アタシが引っ込んでる間は寂しかったんじゃない?」


 そう思ってくれてたら良いな、と密かに願いつつ、カーニャは胸を張って――――いや張るほどと言うか、全く無い胸を惜しげもなく前にだしていた。

 しかし、今の状況でその問いに答えてやる暇はどうやらなく――――。


「レイフォミアはどうした?」

 ――――聞きたいことだけ聞くことにした様だ。それを聞いたカーニャはズッコケそうになって……。


「久々の再会だってのに扱い酷くない!? ――レイなら()()()()()()。アレとは全力で戦えなさそうでしょ?」


 凄まじい勢いで悠理に詰め寄った――――が、確かに再会に浸るのは今じゃなくて良いと考えたのか、質問に答える。聞いた限りでは精神の主導権を無理矢理奪ったと聴こえるが…………深くは突っ込まないでおく。

 それにしても――と悠理は思う。彼女は戦うと宣言した。つまりそれは、カーニャもまた、祝福の復元を完了させたという事。


「――――任せて良いのか?」

「勿論、足手まといにはならないわよ」


 短いやり取り、瞳と瞳を合わせる。カーニャがふっと微笑み、悠理もやれやれと笑った。

 ――じゃあ、後は任せたぜ?

 ――ええ、任せておきなさいよ!

 そんな声無き声が聞こえたようで、近くに居たヨーハが羨ましそうな顔をしていた。


「――って事らしい、良かったなカーネス。晴れて俺とお前、サシでの勝負だ」

「感謝する。では決着に相応しき舞台へ移動しようか、ミスターフリーダム」


 この後に及んで礼を言われた事に、悠理は複雑な気持ちになりつつも提案に応じる。

 ――が、完全に蚊帳の外にされた人物は大変ご立腹で……。


「――ボクをコケにしているのか? 無視なんて許さな――――!」

「おっと、人の話聴きなさいよ。アンタの相手はアタシよ」


 この場から離れようとした二人目掛けて、アルフレドが飛びかかろうとした瞬間、カーニャが素早く短剣を投擲していた。燃え盛る上半身ではなく、狙ったのは足。

 あくまで牽制の意味合いを込めて狙いは甘め。ほんの少し、撫でる様に太ももを切りつけただけだ。


「邪魔をするな、カーナリーニャ……!」

 邪魔をされたのが気に喰わないのか、手加減が気に障ったのか、その両方か……。激昂しながら、ここで始めてカーニャを敵として認識し、迎撃に移ろうとするアルフレド……。


「――ホントに話聞いてないわね……アタシを――――」

 ――だが彼は忘れている。重要な事を、天空幻想城のやり取りを。

 だから彼女は――――激怒した。言ったハズだ。その名は――――禁句タブー


「その名で呼ぶなって言ったでしょうがッ!」

 カーニャの感情に呼応して空間が揺らめき――――銀色の刃の群れが殺到する。

 ――我等が女王の怒りを静める為、彼の者の首を捧げよ! とでも言うように殺気に満ちて……。

 ここに彼女の祝福は確かに顕現した。その名を――――――――“剣舞の(ダンシング)女王(クィーン)”!

次回、グレッセ王都での団体戦は終わり告げ、いよいよ個人戦に突入!

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