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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
205/3923

決戦、グレッセ王都!・作戦は成功せり

うぉぉぉ……。何かいつもの倍以上は時間かかってるな……。


今日は書けない日だったか。


だが嬉しい事に! ブクマが一件追加されてたぞウヒヒャホロレヒィッ♪


明日起きたらもう二、三件は増えてても良いのよ?


いや、そう言うと何か逆に減ってそうな気がスルハ――――あっ、素で間違えた。


気を取り直して――――何か逆に減ってそうな気がするわ……。

『……ワタシがここに居る事はそんなに意外ですかアイザック?』

 ――自身の登場によって唖然とするアイザックに意地の悪い笑みを浮かべるレイフォミア。

 悠理と同じく、早々にこの場へ駆けつけなかったのは作戦を成功させる為の仕込をしていたからだ。

 つまり、彼女がここに居るという事はその仕込みは完全に機能していることを示す。それにアイザックやアルフレドは気付けているだろうか?


「――――アナタの性格を考えれば、囚われの民を助けに行くと思ってましたが……」

 これは絶対と言っていい話だった。何よりも誰よりもこの大陸に住まう命の平穏を願っていた神レイフォミアならば、間違いなくそうすると。そんな相手に仕えられているのが彼にとって誇りだった。


 今はこうして敵対する関係になってしまったが、今でもそう思っているのは確かなこと。敬意と呼べるものがそこにはあった。

 だからこそ――――やるせない気持ちになったのは否めない。今ここに居る彼女は助けを求める民を見捨ててしまったのだろうか? だとしたら……嫌な気分だ。敵として戦う事は覚悟の上でも、理想を捨て去った彼女の姿を見せ付けられるのは――――とても嫌だった。


 心に黒いもやが蔓延っていくのを感じ、陰鬱な気持ちになりつつあるアイザックに悠理が言う。


「この作戦は絶対に失敗の許されねぇ戦いだ。だから裏を掻いたのさ」

「――成程ね……、でも僕達にここまで戦力を割く必要があったのかい?」


 未だに納得できない気持ちを瞬き一つで切り替えようとするアイザック――――がそれは果たして上手くいったかどうか……。そこに気付かないフリをして戦闘態勢を整える。

 悠理はとっくの当に襲いかかる準備を終えていたからだ。


「ああ、勿論さ。さっさとテメェを倒して皆と合流しないと――――なっ!」

 一気に地面を蹴ってアイザックの首へ蹴りを叩き込もうとする――――が。悠理の右足は虚しく空を切っただけだ。


「――遅いよ」

 彼は“神速”の二つ名を持つ祝福の持ち主。加速状態にある時は直線的な動きしか出来ないが、小刻み数回に分けて動く事によってその弱点を補う事が可能である。

 移動した先は真横、ファルールやルンバが居た場所とは反対側に来てしまい距離が空く、だが恐らくは悠理の目論見の内なんだろう。


「ッ!? ()()()()()()……。()()()()()()()()! オメェ等は前線で敵を押し返せ!! アイザックの相手は()()がするぜ!」

 アイザックの速度を体感した悠理が目を細め、背中に庇う形となったファルール達へ指示を飛ばす。

 二人が前線から引き離された事によって敵が徐々に勢いを増していた。アーキダインやヴェンディガヴ、兵士や淫魔達が善戦しているお陰で大した被害は無いが……。


 こちらはそもそも相手を殺す気がないのに対し、操り人形に成り果てた彼等は平気でこちらを殺しにかかってきている。そこが問題だった。ある程度手加減をしなければならないのに、敵の一撃は殺意を秘めて己が身に襲い掛かる。

 戦力の質と言う点ではこちらに分があるが、数はやはり向こうが圧倒的。しかも、こうして質の高い神の私兵が最大戦力を削ぎに来るという事態だ。――――余裕なんてものはやはり有りはしないものと言えた。


「承知した! 立てるかルンバどの?」

「うむ、この程度はかすり傷よ!」

 悠理の指示を受け二人は素早く立ち上がり、口笛を吹く。彼女達のディーノスがそれに応えて走ってくる。しかし、アイザックが黙って見逃すなんて事は有り得ない。


「逃がさ――」

 ――加速して二人の首を刎ね――――ッ!? 様として背中にとんっと、触れられる。誰かに。

『――それはこっちの台詞ですよアイザック?』

 声は聴き慣れた相手。だが聴いた事の無い様な悪戯っぽさがあった。初めて向けられた敵意が彼にそう感じさせたのかも知れないが。


「ッ、いつの間に!?」

 さっきまでは確かに悠理の後ろに立っていたレイフォミアが自身の背後へ回っていた。どういう理屈かは解らないが、これが自分の犯した最大のミスだと言う事はアイザックにも解る。もう、遅かったが。


『――レイフォミア・エルルンシャード名において貴方の力を制限します!』

「ぐぅっ!?」

 触れられた手からバチッと、電撃が放たれた様な音。そして本当に電流を受けたかの様にアイザックはビクッと身体を仰け反らせて跪く。先程までの余裕は最早そこにはなく、能力制限の影響で身体が重くなった錯覚を彼は感じていた。


『――さて……、これでもまだ戦いを続けますか?』

「――勿論ですよ……」

 跪き、息を荒げるアイザックを冷たく見下ろすレイフォミア。しかし、彼だってこれ位で退くほど、その胸に抱いた志は安くは無い。戦うに決まっているとも。


『ごぉぉぉぉっ!』

『バ、バァァァ……』


「――――他の者達も能力を制限され始めましたか……」

 息を整えたアイザックがチラリと横目を向く。グレプァレンがエミリーに押され始めている。鉄と岩であれば前者の方が有利なのにも関わらず、だ。それは間違いなく、レイフォミアの力によって能力を封じられたが為だ。


 どうやら自分たちはまんまと“能力封じの結界”に足を踏み入れてしまったらしい。警戒はしていた、注意も怠らなかった。それでも()()()()()()、気付かぬ内に罠へ嵌っていたらしい。 

 ――が、アイザックの場合は特に強力である。何しろ直に触れられたのだから。グレプァレンが受けている枷よりも更に大きい負荷が彼を襲っていた。


「――弱ってる所で大変申し訳ねぇが……。一気に畳み掛けるぜ?」

 焦りが滲み出た様なアイザックに更なる追い討ちがかかる。悠理が黒き片刃の巨剣を両手でしっかと掴み、彼へと近付いてきていた。


 ――この時、既にレイフォミアはアイザックの傍に居なかったが、その事を気にはしなかった。いいや、する必要が無かった。彼女は神なのだから、本来の二割程度の力しか持っていない今でも、一瞬で近付き、一瞬で離脱する位はやってのけるだろう、と。

 そう思って注意と思考は全て悠理へと向けられた。それが重大な誤りであるとは微塵も考えずに。


「それは…………グレフ・ベントナーが鍛造せしグランディアーレですか……」

 手に持つ黒き剣を興味深そうに観察するアイザック。その口調はどう考えても知っている言い方。悠理は思わず溜息を吐いてしまう。


「――本当に何でも知ってんだなテメェ等はよ……。こいつの存在は()()()()()()()()()()()()()()()()ハズだが……。それともカーネスにでも聴いたか?」

「さぁて、ね……。ご想像にお任せするよ……。でも、君の方こそ詳しそうじゃないか?」

「あん?」

「まるで()()()()()()()()()()()?」


 苦し紛れなのか、それとも能力を封じられた事で少なからず有った圧倒的強者の驕りが消えた為なのか。

 アイザックは悠理の発言に秘められた違和感を突いていた。無論、意識した訳ではない。思ったことを口にしただけだ。しかし、無意識の内でも()()()()()()()()()()()のは流石と言うべきかも知れない。


「――ヘッ、気のせいだ――――ろッ!」

 それに対して悠理は特に何か反応を見せる訳でもなく、会話は終わりだと言わんばかりに襲い掛かっていく。最初は――――唐竹割り!


「――加速ッ!」

 能力制限でどれ程に力が落ちたのかを確かめるべく、あえて今出せる限界ギリギリと言うラインで力を使行使し、避ける。問題なく回避成功。しかし、やはりキレは落ちている。


「オラァァッ!」

 悠理は気にした風も無く、彼に追いすがり、身体を捻りながら銅を断たんと二撃目――――横薙ぎの一閃を放つ!

「――舐めるなッ!」

 ――だが、やはりそれは掠りもしない。続けて突き、袈裟斬り、振り下ろし――からの斬り上げ……と、悠理は連撃を繰り出すが、アイザックの加速には追いつけず、こと如くを避けられてしまう。


「チッ、ちょこまかと……」

 苛立つ様に舌打ちを一つ、焦りは無いが思った以上にアイザックは強敵だ。能力を封じられても尚、神の側近――――私兵の名が伊達でない事を痛感したとも。

 ――どうやら俺様も漫然とは戦っていられないらしい。――――と、彼は能力を駆使する事を決める。もう、十分に役目は果たしただろう。そう思ってニヤリと笑う。それは全力を出せる喜びだった。


「――――? 制限は確かにされているが――――思った程じゃない?」

 一方、アイザックは奇妙な事に気付く。確かに能力の質は普段よりも低下している。――にも関わらず、無いと思っていた余裕がいくらかある、と言う事実に到達した。

 しかし、真実を知った彼は大いに当惑する事となる。


(何だ? さっきから妙な違和感を感じる……これは何だ?)

 不意に頭の中に過ぎったのは自分が先程述べた言葉。グランディアーレの件について、悠理が当事者の様な口調だと、アイザックは指摘した。それが――――何故か気になる。

 ミスターフリーダムは異世界人――――召喚者なのだ。そんな事は有り得ない。


 ――――でも、なら何で自分はそう感じたのだろうか? 彼の言う通りに気のせいだと?

 それで片付けるにはどうも引っかかる……。だが、そんな疑問を追及している暇は――――ない。


「せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇやっ!」

 今までは最も速い動きで悠理が斬りかかって来ている。しかし、かわせない速度ではない。

「そんな直線的な――――違う……後ろかッ! ッ!?」

 冷静に対処しようとして背後に違和感――――振り向く!、が、そこには誰も居ない。慌てて前方に視線を戻してもやはり姿は見えず――――。


「――真横だよ間抜け!」

「がっ!?」


 突然、何の気配も無く真横から姿を現した悠理が、アイザックの身体にグランディアーレを容赦なく叩き込む。彼の剣には刃が付いていない。

 しかし、悶絶するほどの打撃を味わうのは必至。アイザックとて例外ではなく、一撃をまともに銅に受け、小柄な身体はあっけなく吹き飛び地面に転がった。


 ――これは幻覚系の能力? 彼はこんな力まで持っていたのか?

 久々に感じる強烈な痛みの中、やはり浮かぶのは疑問。


(でも、これは……違う。明らかに違う……)

 ヨロヨロと立ち上がりながら、彼は疑問に答えを出そうと思考を回転させる。襲い掛かってくる痛みには強がって気付かないフリをして。


 数日前に対峙した時、アイザックは一瞬にしてやられたが、その瞬間は鮮明に覚えている。虹の光に恐怖こそ覚えなかったが、唯ひたすら得体の知れぬ能力だと思った。

 ――今もあの光を警戒している気持ちに変わりはない。変わりはないが……。


 どうもさっきから自分が受けている攻撃は得体の知れないものでは無い様に感じるのだ。

 考え始めると違和感が次々と襲い掛かってくる。レイフォミアからの制限――――しかも、直に触れられた割に能力の低下は想定よりも大分軽いもの。

 そして、悠理の戦闘スタイル。門番兄弟の証言では、虹の光を多様した奇妙な攻撃、二刀流による型に嵌らぬ変幻自在な動き……。幻覚を見せる様な能力があったとは訊いていない。


 教えられたモノとは一致する情報が少なすぎる――気がした。勿論、天空幻想城において彼が手の内すべてを晒してない可能性はある。――――が、あるにしても虹の光を使って来ない事に関しては説明がつかない。


 それは間違いなく彼の切札にして最大の武力であるだろうに……。

「ま、まさか……?」

 不意に、不意に頭の中で何かが囁く。戦闘開始から未だ二十分程度しか経っていない。だがしかし、彼等の内の何人かが地下道を通って王都へ侵入を目論んでいるのはチーフが確認済みだ。

 迎撃の準備も整っている。ミスターフリーダムとレイフォミアがこちらにいる事すら既に把握しているだろう。

 だがその情報は本当に――――正しいものか? 先程、自分が受けた攻撃の様に――――幻ではないのか?


「――気付くのが遅かったなアイザック? 作戦は――――成功した!」

 背後から聞こえた声に迷わず短剣を振りぬいて――――しまった! とアイザックは後悔する。そう、もう既に遅い。

「オォォォォラァァァァッ!」

 真正面にいた()()の拳を受けてアイザックは数十メートル先まで吹っ飛ばされ、数秒の間、その意識を失う事となる。しかし、意識が途絶える瞬間に彼はハッキリと視た。

 フワリと、振りぬいた拳と共に揺れる長い――――()()()()()()()()()()

 それが――――その情報を伝えられなかった事が、この戦いの命運を大きく分ける要素になるとはアルフレドにとって最大の誤算だっただろう。

次回から、舞台は一旦グレッセ王都内へ。

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