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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
201/3922

決戦、グレッセ王都!・突撃数秒前

はーい、今回から第一章のクライマックスですよー!


――と言うか、今日に限ってやたらアクセス数が多くて、ブクマも沢山増えてたんですけど……。


さっき気付いたけど、いつの間にか完結済みになってて、もしかしたらそれで人が来ちゃったのかなぁ?


うーん、解らんなぁ……。

 ――悠理とレイフォミアが風呂場で言葉を交わしてから五日後……。

 時刻で言えば正午を少し回った頃のこと――――彼等はついに到着したのだ。

 ――グレッセ王都に…………!


「――おー、おー、派手なお迎えだねぇ!」

 王都へと繋がる道に立ち、悠理は彼方を見渡して笑った。その瞳が捉えたのは王都を囲む壁、そして――――大勢の敵の姿。武装した騎士、ディーノス、騎兵、弓兵……。

 街の門へと集結し、いつでも迎え討つ準備が既に完了している。


『ざっと七千人強って所か……残りは王都内って事だな……』

 特訓により己が祝福の力に覚醒したレーレがその視力を強化し、2kmは先に居る軍勢を大まかに把握。七千人と言えばグレッセが保有する正規騎士の9割に当たる。


 ――成程、アルフレドが物量で押すなんて単純な作戦をそのまま実行するとは思えない――が、確かにこれは効果的。何せこちらは千にも満たぬ寡勢、結局悠理達はアルフトレーンに着いた援軍から人員を補充しなかった。

 故に白風騎士団とルンバ隊、そしてメノラが集めてくれた眷族の淫魔達――――合計でも七百は超えない……。対する相手は十倍の数だと言うのだから、どう考えても――――蛮勇。


 しかし不思議な事に、誰一人としてこの状況に絶望する者、逃げ出そうとする者は現れない。悠理はそれが嬉しかった。

 目の前にした圧倒的物量に怯まない騎士と兵士の意地、誇りと呼ばれるものが確かに見えた気がして、自分の事の様に誇らしい。


 悠理はそのまま敵を見据えて、背後に居る頼もしき仲間たちに呼び掛けた。


「良し、手筈通りに連中を釘付けにしてセレイナ様たちの侵入を助けるとしようぜ! ――てめーらぁ! 準備は出来てっかぁ?」

『オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!』


 呼び掛けに応じ、兵士達の声が街道に響き渡る。きっと今は大音量に感じるこの声も、敵とぶつかればあっという間に飲み込まれて消えてしまうのかも知れない。

 ――だが常に結果がありふれたものとも限らない。勝てる算段もない行動なら蛮勇だが、彼等は算段つけてここに居るのだから!


「よっしゃ、じゃあファルさん! ノーレ! 派手に頼むぜぇッ!!」

「任せろミスター!」

「はいっ、ユーリさん!」

 

 仕えるべき主に力一杯の声で応えた騎士と、強い決意を瞳に宿した少女。

 ここに至るまでの道中、彼女達は祝福の復元を成功させていた。ファルールは前線に立っての戦闘指揮。ノーレは後方でのバックアップ。

 どちらも今回の作戦には欠かせない重要な役割を担っている。



『よっしゃ、メノラ! エミリーッ!! 俺達も行くとしようぜ!』

『アッハッハッ! 任されたわ!』

『ごぉぉぉぉぉぉ!』


 レーレはメノラとエミリーを従え、単独行動を取る事になっている。一般兵士と同じ場所に組み込んでも彼女達の戦闘力は生かせないだろうとの判断だ。

 彼女達個人の強さを軸に戦況を有利なものへと運んでいく、と言うのが基本方針。

 ――なのだが、恐らく連中も何の対策もしていない訳ではあるまい。何せグレッセ解放軍は個人戦力のオーバースペックを頼りにここまで進んでこれたのだから。


 ――そして、今この場に見えない、セレイナ、ヨーハ、鎧三兄弟、リスディア、マーリィ、レイフォミア

は別の作戦準備中である。これが敵を欺く為の――――秘策。


「――さぁ、始めようぜ!」

 ――背中から感じる仲間の力強さを感じながら、悠理は宣戦する!


――――――

――――

――


 ――一方、悠理達が彼らを認識した頃、彼らもまた己の敵を認識していた……。

 グレッセ王都を囲う外壁――――その上に人影があった――いや、人と言うにはその姿は異様で、何よりあまりにも美しかったのだ。


「――レイフォミア様がついて居るからって、あんな寡勢で挑むつもり? わたし達も馬鹿にされたものね?」

 そう悪態を吐いた彼女は純粋な人ではなく、獣系の亜人種。狐の耳に、狐の尻尾――――尾は九つと九尾の狐を連想させる。


 腰まで届くような黄金の髪を何故か首に巻いて口元を隠してるのが特徴的。身体的特徴といえば各所に痣と言うか紋様がある。体格は――――悪くない。身長も高く、脚もスラリと伸びて非常に健康的だ。

 ――胸までスラリとなだらかなラインを保っているのも健康的、という事にしておく。 


「それは油断だよ“陽炎のギニュレア”」

『そうね、アイザックさんの言う通りだわ。貴方の尻拭いなんてワタクシはゴメンですわよ?』


 近付くその声に振り向けばそこには、チーフことアルフレド・デディロッソの腹心、“神速のアイザック” とこれまた美女と称するべき麗しい女性が立っていた。

 ギニュレアと呼ばれた女性は美女の言葉に狐耳をピクリと動かし、丁寧な、それはもう丁寧な言葉でもって応対する――――顔は精一杯の力を込めたしかめっ面で。


「あっら~? 賞味期限切れの大淫魔“夜蝶アルレイン”さんじゃないの~。――まだ干乾びてなかったワケ?」

 麗しき美女――アルレインは見た目は殆ど人間だ。平凡な灰色のボブカット――ただし、頭にヤギの様な角が、背中からはコウモリの様な羽根が生えている。


 大淫魔と言えばリリネットを連想するが、彼女は清楚に見えていやらしさが溢れているのに対し、アルレインは見るからに妖しい。人を惑わす、かどわかすといった言葉が相応しく、人をそんな風に狂わす妖しげな魅力を放っている。


 全体的に胸も含めて平均的なスタイルだ。特筆すべき点は見当たらない――様に見える。普通なら。

 しかしこれが彼女の武器なのだ。どこにでも居るような平均的だが美人としては申し分ない外見。

 だからこそ惹かれる。手の届かない宝石よりも、ほんの少し手を伸ばせば届きそうな花であった方が人は惑わしやすいもの――――彼女の本質は紛れもない悪女。


 ――それが、アルレインがリリネットと決定的に違うところ。


『オホホホ…………、テメェこそ神獣との混血で忌み子なもんだから、嫁の貰いの手の一つもねぇだろうがッ!!』

 ――そしてそれはいとも簡単に曝け出される。穏やかな、もしくはおしとやかに笑っていた表情が一変、怖気を催すような醜悪さに歪む。例えるならそれは蛇のよう。

 目は大きく見開かれ、眼光鋭く、口も邪悪な笑みを浮かべ、そこからは下劣なあまりに低俗な言葉が飛び出す。


 リリネットは大淫魔としての器を与えられたが、本人はそれに戸惑い苦しんでいた。故に彼女は力に狂う事無く、人らしい優しさを残している。

 ――だがアルレインは違う。完全に力に溺れ、自分の欲望を満たす以外は考えない。自分が世界の中心であり、他の誰かは全て自分を飾り立てる為の供物でしかないのだ。

 だから他人を傷付ける事を厭わないし、タブーを突いて挑発する事に罪悪感を抱くハズがない。


「――アンタ今……一線越えたわよ?」

 ゆらり――と、ギニュレアの九つの尾が揺れ赤い光を纏い始めた。アルレインの発した言葉は真実だ。彼女は600年以上も前に生まれた人と“神獣”とのハーフ……。災いをもたらす象徴として“忌み子”と呼ばれ、迫害された過去を持つ。


 故にそれは彼女のタブー。触れた者は誰であろうと許さない、特にアルレインの様な下劣に責め立てる相手は絶対に――――殺す。

 ――既に戦闘態勢は完了。いつでも、賞味期限の淫魔を切り刻む事が出来る。


『上等だゴラァッ! 下等な人間を皆殺しにする前に先ずはテメェを血祭りに――――ッ!』

 背中の羽根をバサリと広げ、大淫魔も戦闘態勢を取る――――が、突如、自分達の居た場所に大きな、大きな影が射す。

 ――そんなバカな、ここはグレッセの中では城を除けば最も高い位置にある。真昼間に影が射すなんて事は――――あった。


『バァァァァァァァッ!!』

 それは巨大な鉄の塊だった。どこからか飛んできた塊は咆哮を上げ、ギニュレアとアルレインの中間にその巨体を沈ませた。

 ドンッ、と壁全体を大きな揺れが襲う。振動が収まってその塊が落ちた場所を見れば、その部分は大きく凹んでいた。外壁を形成する石材が着地の衝撃で粉々に砕け散り、煙が立ち込めていた。


「――良くやった“倒壊のグレプァレン”……」

 アイザックは煙の向うに居るであろう鉄塊に声をかける。――そう、彼こそが今回チーフ側が用意した神の私兵、その最後のメンバー……。

 ――アイアンゴレムのグレプァレンであった。


「――ゲホッ、ゲホッ……、ちょっと! 危ないじゃない!」

 煙のモロに浴びたのかギニュレアは激しく咳き込みながらも抗議し――。

『そ、そうですわ! 元はと言えばこの女が悪いのであってワタクシは――

!』

 何とか鉄塊の着地を回避したアルレインも同じく非難の声を上げるが――。


「いい加減にしないか! 敵を率いる男は僕やチーフを退けた男なんだぞ!! それにレイフォミア様が確実に僕らの能力を制限してくるハズだ。一方的な戦いには決してならない……なのに仲間割れしている場合か!」

 アイザックの怒気を孕んだ声に圧されて、何も言えなくなってしまう。

 そう、ここまでの戦力を集める事がそもそも異例で異常事態。

 呼ばれた意味を軽くみてもらっては困るのだ。


「――――フンっ、解ってるわよ……。わたし達にとってこれが虐殺じゃなくて戦闘だってくらいはね……」

 ギニュレアが不貞腐れた様にそっぽを向く。今回は戦闘になる――――当然理解してはいる。

 ――油断も慢心もしていないとも。


『チッ――まぁ、確かにワタクシ達が争っていても良い事はありませんわね……』

 目立つ様に舌打ち一つ、アルレインもこの場は矛を納める。油断はない――が、慢心はある。

 ――自分が負けるハズがない。800年以上も生きてきた己が遅れを取るハズがない、と。


『バァァ……』

 グレプァレンはその巨体を僅かに上下させ、姿勢を正した。どうやら静かに闘志を燃やしているらしい。

 ――久々の出番だ。とくと活躍してやろうではないか、と言う意気込みがアイザックには伝わってくる様だった。


「この戦い――負けられないのは僕等も同じだ。ここで世界再生の邪魔をする者共を一掃する――――チーフとルカさんの願いを叶える為に……」

 ――彼等は悠理達にとっては紛れもない悪であり、敵だ。しかし、彼らにも事情や、叶えたいと願う望みや希望がある。

 だからこそ、正しいと世界に胸を張って言えない悪だとしても彼等は――進む。


「――わたしは世界の認識を覆す為に……」

『ワタクシは世界を塗り変える為に……』

『バァァッ、バァァァァァァァァッ!(我は世界に存在を示さんが為に!)』


 アイザックに続き残りのメンバー達も己が願いを掲げる。そう、心の底から願った想いならば――――叶えなければ。


「――――さぁ、行くよ!」

 ――アイザックが叫び、外壁を飛び降りていく。それに習って三人も次々と飛び降りていった……。

 果たして彼に対し悠理達はどう立ち向かうのか?

 何れも強敵、現在の低級ドラゴンに匹敵する彼等の力に対するする術はあるのだろうか……。

 長い長い決戦の日は――――こうして始まった。




今回は新キャラが三人も出て外見を説明するのに疲れたよ……(言うほどの描写能力は無いとしてもね)


次回、ファルールの祝福発動!

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