番外編・悪巧みをしよう盛大にな
あー、ダメだ、書く気力が……
今回は番外編で許してくださ――ぶひぃっ!!
「やれやれ……、酷い目に合ったよねボク等はさ……」
――天空幻想城の奇襲から早二日。寝室の補修作業も一段落した頃、アルフレドがぼやく。
あの時、レディ・ミステリアこと、里見流歌の双子の妹である里見流海と少しだが会話した。その時の事をぼんやりと思い出す。
彼女は――――。
「今回の事は私から流歌を奪った事への仕返しです。ですが、流歌の選択を否定する気はありません。私の介入はこれが最初で最期だと思ってください」
――――それだけ言うと音も無く消え去った。
尋ねたいことは幾つかあったが、それらを言うタイミングを与えられないままに謎の女との会話は一方的に終わりを告げられたのである。
まるで過ぎ去った嵐の様に後には混乱と、疑問の山が積み上がった。主も連れ去られ、まさに散々だったとアルフレドはやや大げさに嘆く。
「これからどうするつもりですかチーフ?」
そんないつもの調子に戻りつつある主に次の指示を仰ぐアイザック。対する返事は全く持っていつも通りの口調で――――。
「グレッセで迎え撃つしかないんじゃないかな?」
「――向うにはレイフォミア様が……」
「大丈夫、そこの辺りはちゃんと考えてあるよ」
迎え撃つと言われても向うには我等が神が居る。能力の一部だけとは言え“神”を手中に収めたのだ。相手は一気に戦力を増強したと考えた方がいい。
無論、アルフレドもそれは重々承知しており、既に対策まで織り込み済みだ。アイザックは彼の表情から自信の程を窺うと、納得し頷く。
「解りました。こちらからの援軍はどうしますか?」
「“倒壊”と“陽炎”、“夜蝶”にボクとキミとカーネスかな?」
“倒壊”、“陽炎”、“夜蝶”は何れも天空幻想城においては500年以上生きた手練の猛者。アイザックとほぼ互角に近い力を持つメンバーだ。彼等を出すと言う事はアルフレドが如何に本気かを示している。
「――“夜蝶”まで出すのですか……」
しかし、その名の人物については腹心の顔が渋る。チーフに付き従うメンバーの中でも問題児だからだ。
「向うにはレイフォミア様が居るからねぇ……。やり過ぎってことはないだろう」
「確かにそうかも知れませんが……」
――だからと言って問題児を切り出すのはどうかと思うが……。それが彼の考えだと言うのなら深くは聴くまいと、アイザックは諦めたように溜息を吐いた。
「あっ、それともう一人だけ助っ人を呼んじゃおうか」
「助っ人……、外部の協力者から力を借りる、と?」
「そうだよ、念には念を入れてね」
世界再生を掲げるアルフレド達には世界各地に協力者がいる。それは一国の主から一般人まで幅広く居り、偽装工作等で活躍するのが主な仕事だ。
しかし、中には荒事を任せる腕自慢も多数居る。今回はそちらの人脈から取り繕うのだろう。
「――成程、あの男を警戒しているのですか」
「まぁね、得体が知れなさ過ぎるだろう?」
あの男とは言うまでもなく悠理のこと。実際にぶつかった今だからこそハッキリと解る。あれは間違いなく異端の力である、と……。
「――了解しました。では一体誰を呼ぶおつもりで?」
「最高戦力を引っ張ってくるつもりだよ!」
「チーフ……、まさかとは思いますが……」
「ああモチロン、彼に決まってるじゃないか!」
妙にテンションを上げて張り切る主にアイザックは嫌な、嫌な嫌な嫌な予感を覚え、アルフレドのやたら悪そうな笑みを見て確信する。
――ああ、これで今回の勝利は磐石となってしまった……。
「――さぁ、彼の敵を打ち倒してもらおうか?」
その場でくるりと一回転し、アルフレドは祝福を発動させて一人の男を覗き見た。
玉座に座った壮年の男、鋭い眼差しと傷だらけの勇ましい顔、逞しい身体つき……。まさに絶対的強者と言っていい風貌の男。
彼こそは――――。
「――――コルヴェイ王よ!」
――大陸北方を牛耳る恐怖の王その人也!
次こそ本編――かもね!