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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
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番外編・謎の女の謎・前編

食事に行ってて時間が……。


なので今回は番外編でご容赦を――しかも、分割商法になってしまった……。

 ――それは悠理達が天空幻想城を去った後のこと……。

「――さて、私も目的を果たすとしましょう」

 謎の女、レディ・ミステリアは彼等が無事にこの場を脱出したのを見届けると、自らの望みを叶えるべく部屋の奥へ進んでいく。


「ま……、待て……!」

 その背中に制止の声が飛ぶ。ぜぇぜぇと整わない息で何とか搾り出した声。

 止めるだけの力のないそれを無視できるにも関わらず、レディは律儀に止まり振り返った。


「おや、もう動けるのですか?」

 計算が外れたと言わんばかりに、自身を呼び止めたアイザックを見て形だけ驚いてみせる。

 実際、驚くべき事だった。彼の身体には未だ虹の光が絡み付いており、その動きを制限しようとしている。


 ――だが、アイザックの能力は“加速する”こと。いくら身体の自由を奪われようともそれを上回る

速さで動けば問題は無い。

 普通はそれが先ず困難なのだが……、そこは仮にも“神速のアイザック”と呼ばれる男。

 今は良くても後で肉体に大きなダメージが跳ね返ってくる事に想像に難くないが……それは承知の上。


「ここに残って何をするつもりだ……異世界の神よ……!」

 ――今は目の前に居る規格外を何とかしなければ……! 軋む身体と痛みを無視して動く。

 レディと直に刃を交えたアイザックは思う。あの男、ミスターフリーダムよりも彼女の方が厄介である、と。

 ――この謎の女は神に近しい力を持っているのではないか?

 それは奇しくも、レーレが敵として悠理と戦った際に抱いた感想と同じであった。

 アイザックはレディの祝福を喰らっている。その事で抱いた疑問から、彼女を“異世界の神”であると考える。しかし――。

 

「――勘違いですよ、私は人間だ。少々、普通の枠からはみ出てますが……」

「――――笑えない冗談だね……」

 感情のないレディの返答にアイザックはしかめっ面をする他なかった。

 普通から少々はみ出た程度で、アルフレドの“神獣の炎”喰らって無傷なハズがない。

 あのミスターフリーダムでさえ、何とか打ち勝ったからこそ傷を負わなかったのであって、直撃したのにも関わらずダメージを受けないと言うのはやはり異様だった。

 

「安心して下さい。貴方達を皆殺しにしたりはしません」

 あくまで戦闘を望まないとアピールするレディ。しかし、その言葉を裏返すのなら、彼女はアイザックや天空幻想城の面々を返り討ちにするだけの力を有している――と考えられる。


「天空幻想城をここまでメチャクチャにしておいて信用出来るとでも?」

 目の前に居る謎の女へ更に警戒を強めるアイザック。そして彼に加勢する様に二つの大きな影がアイザックの横に立つ。

『――アイザック様の言う通りであるな……』

『うむ、全く持って信用ならん』

 それは悠理によって倒されたハズの門番兄弟――アインツとドゥエンツであった。


「起きたか二人とも……」

 心強い助っ人の登場にアイザックはフッと笑う。正直言って、こんなものは焼け石に水。

 この謎の女を前にしている以上、彼等に勝ち目など――――ない。

 それでも心強いと感じたのは彼等に置く信頼の深さ故か……。


『侵入者に遅れを取った事の汚名は――――』

『――この者を打倒して返上致す!』

 敵として見定めた女に戦闘姿勢を取る二人。

 ――だが、お得意の嵐と雷は現れない。それはここが神聖なるレイフォミアの寝室であるから――と言う以上に、悠理が放った大技――“狂い咲き虹龍”によってアイザックよりも深刻な事態に陥っていたからだ。


 祝福は殆ど使用できない。喪った訳でも、機能不全に陥ったと言う訳でもない。唯単純に、再び使用可能になるまでは時間がかかる。

 ――祝福を封じられてしまったのだ。アイザックの場合は肉体、門番兄弟は祝福使用の“自由”を奪われた。そう言う事だ。

 しかしそれでも一歩も引かない辺り、二人は真に門番として優秀と言えるだろう。


「私は戦いたくないのですけどね……」

 溜息を一つつく、いくら自分が胡散臭い存在だと言ってもここまで敵意がない事を信じてもらえないとは……。

「君は僕達の聖域に侵入した不届き者だ。見逃すわけにはいかないな」

 だが、この場に置いてはアイザックの方に正当性がある。我が家に土足で入り込んできた見知らぬ相手を信用しろとは土台無理な話。


「――なら、奥の手を使いましょうか」

 仕方ない、と割り切ってレディが右手を顔の前に掲げ――。

「アインツ、ドゥエンツ! 彼女の祝福には気を付けろ!」

 ――その仕草に、アイザックが二つ名の如き速さで忠告する。

『合点――――』

『――――承知!』

 門番兄弟は何をされても反応できる様に、レディの出方を注意深く観察するのだが――。


「いえ、祝福は使いません。唯、この仮面を取るだけです」

 ――彼女はそう言って、顔を覆い隠すマスクに触れるだけだった。


『何?』

『一体何の意味が……』

「――その仮面は力を封ずる類いのものかい?」

 戸惑うアインツとドゥエンツ、アイザックも言葉の意味を図りかね邪推をしてしまう。

 しかし、それは完全な杞憂であった。


「いいえ、私のお手製である事以外は普通の面と変わりません」

 本人がそう告白したからだ。しかし、着ている服は“神獣の炎”によって損傷したのに、完全に無傷な仮面が“普通”とはどういう事なのだろうか? どうやらアイザックの緊張と警戒はまだ解けそうにない。

 そんな彼に構う事無く、レディは『ですが――』と前置きしてこう言った。


「ですが、これを取った瞬間に貴方達を無力化する自信はあります」

「何を――」

 ――言ってるんだ?、と言い終えるよりも先にレディが仮面に手をかけてゆっくりと外していき……、悠理にも見せなかったその素顔を――――遂に晒した。


 そして、その結果――。

「…………っ!?」

『ば、馬鹿な……』

『あ、貴女様は……!』

 ――彼女の宣言通りに彼等は無力化された。

 その顔を見た瞬間、時間を驚愕で氷付けにされた様に動けなくなったのだから。

「――さぁ、これでもまだやりますか?」

 レディの一言に答えられる者は居ない。

 ――素顔が晒されたことで更に謎が深まったこの女の目的は未だ解らぬままである。

後編へ続きますが、それはまた後日で。

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