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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
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それは悪魔の契約か、はたまた神の施しか?

うへぇ……、か、書けたぜ……。


何かいつも以上に筆が遅くて書けないかとヒヤヒヤしたんだな……。

「――さて、一夜が明けた訳なんだが……」

 ――悠理達の帰還からおよそ10時間後……。時刻は午後を既に過ぎた頃、就寝したのが深夜3時を越えていたから、皆して起きたのは数十分前だ。

 今は一同食堂に会し、朝食代わりの軽い昼食を取ろうとしている。食事と言っても、これは作戦会議も兼ねているので多少の緊張が場に漂う。

 そんな中、セレイナがテーブルの一角をチラリと見やると……。


「うーん……、ユーリ様ぁ……」

『ユーリぃ……むにゃむにゃ……』

「あー、愛が重くて首が痛いぜ……」

 そこには寝ぼけながらも悠理の首に抱きつく――と言うよりも、彼の首にぶら下がったヨーハとレーレが居た。

 レーレはともかく、普段のヨーハなら侍女らしく主よりも早く起きて食事の準備をしているのだが……。どうやら今日は未だ夢の中らしい。二人の寝顔は幸せそうで頬が緩み、ヨーハに至っては涎を垂らしている有様だ。


「お前らはもうちょっと緊張感持てや! 昨日の『世界を救ってみせる!(キリッ)』は何処行ったんだよ!!」

 その様子を見てやはりセレイナは黙っていられなかったようだ。ガタッと、椅子を引いて立ち上がり、だらしなさを責める。

 悠理の発言を聞き、グレッセ王国の危機を世界と同等に見てくれた事、そこに感動すら抱いた彼女にとってはこの落差はあまりにも酷いものだった。


「ま、まぁまぁ、セレイナ様、今から気を張っていては気疲れするだろうし、これもミスターの良い所だと私は思うのだが……」

「そうは言うけどな――――」

「兎に角、会議を始めてまえば自然と緊張感が出るかと」

 ファルールのフォローに渋い顔と溜息で返すセレイナに、台車で運んで来た食事をテーブルに置きながらマーリィがそう提案した。

 一方、マーリィの主である所のリスディアだが……。


「――うー、まだ頭がぼんやりするのじゃ……」

 未だにレイフォミアの“神の威光”を受けた影響か、頭をさすりながら目を瞬かせていた。

 レイフォミア曰く、精神に悪影響を及ぼす様な効果は無い、とは言っていたが、リスディアの様な子供故に成長しきっていない未熟な精神には刺激が強かったのかも知れない。


「わ、私も……、さっきファルールさんから大体の話は聴きましたけど……」

 隣に座ったノーレも同じく“神の威光”で気絶し、起きたのは20分ほど前だ。まぁ、彼女の場合は寝起きに気絶している間の事をファルールに掻い摘んで説明されたのが原因だと思うけれど。


「あー……、じゃあ、始めるとすっか……。議題は『グレッセ突入の策』だが――――」

『セレイナさん、ワタシに案があります』

「じゃあ、頼むわ神さ――――レイフォミア」

『はい、承りました』


 会議はそんな切り出しで始まった。昨晩は皆一様に疲れていたのでこの議題についてまでは触れられなかった。今回はそこから始めなければならない。

 そして、意外――と言う訳でもないが、レイフォミアは積極的にこの問題に関わろうとしてくれていた。

 昨晩、ファルールに言っていた事を思い出し、セレイナはレイフォミアを仲間として迎える為に名を呼んだ。返事をした彼女は何処か満足げな笑みを浮かべて、発言を続ける。


『グレッセ王都には国民、正規兵及びコルヴェイ軍、そしてアルフレド達が居るハズです。貴方達はスルハからの補給物資を受け取り、援軍にここを譲った後、グレッセに少数精鋭で突入し攪乱、個人戦力を持って敵勢力を打倒……大まかな流れはこんな感じでしたよね?』

 カーニャの記憶を探ったのか、彼女の口から出た作戦はメレッセリアを出てアルフトレーンに着くまでの間に立てた仮の策であった。

 ――いや、仮だとしても策と言うにはあまりも杜撰なものであるのは明らか。カーネスの襲来やチーフ達の戦力を把握した今となっては計画の見直しは必須、だから今回の会議でマシな案を出さねばならないのだが……。


「ああ、以前ヨーハが祝福を使って調べた際に、軟禁状態だが民達は無事なのが解った。――だが正規兵の連中はカーネスと同じく操られてるみてぇなんだ」

 以前と言うのは、悠理とヨーハが初めて“共鳴”を引き起こした数日前の事。アルフレドの足跡を辿るのが目的であったのだが、その過程でグレッセ王都情報も引き出していたらしい。

 操れているとは言え、国の正規兵が守るべき王都の民を軟禁し、監視している姿は見るに耐えないもので、ヨーハはそれを見た所為で少し落ち込んでいて、悠理にやたら甘えるのはその悲しみに似た感情を癒す為だったのだろう。少なくとも、生まれた時から共に過ごしているセレイナにはそう思えた。


「何とか連中を出し抜いて皆を助けなきゃな……。神の側近なんて要素が出てきて見直しが大変だがやるしかねぇ……」

 このまま住民を盾にされでもしたら圧倒的に不利だ。そうなる前に何とか救出するべきだが、チーフ達が待ち構えているとなればそれは難しくなる。――しかし、こちらにもまだ手段は残っていた。それがレイフォミアの存在だ。


『側近達の事はワタシに任せてください。彼らの能力を制限して弱体化させます』

「そんな事が可能なのですか?」

『今は落ちぶれていますが、これでも大陸の守護神ですから』

 詳しい方法は明かさなかったが、レイフォミアは自信たっぷりに頷いて見せた。皮肉めいた物言いにマーリィはバツの悪い顔をしてしまう。

「――レイフォミアどのは意外と根に持つ方だったか……」

 ――ファルールのこの一言は、きっとマーリィの心を代弁したものだったに違いない。

 二人の反応を見て満足そうにレイフォミアが悪戯な笑みを浮かべていたのだから。


「あの……レイフォミアさんが力を振るっても姉さんは大丈夫なんですか?」

 おずおずと手を挙げ、一抹の不安を抱きつつノーレが質問する。

 人間の祝福と違うレベルにあるのは“神の威光”直接受けて体感済みだ。問題はそれを振るう側――カーニャの肉体がそれに耐えられるのか、と言うこと。


『ええ、勿論です。仮に私が“生命神秘の気”を使おうともカーニャさんに危害は出しませんから』

 優しく微笑んで応じるレイフォミア。そこに悪意も隠し事の気配もないと感じたノーレはホッと息を吐いて安堵した。カーニャの意識が未だに表面化してこないのもあって心配していたのだ。

 そして、今度はその横に居たリスディアから疑問が飛ぶ。


「しかし、それで戦力差が埋まる――などと上手くは行くまい。どうるのじゃ?」

 弱体化させる――とは言ったが、無効化出来るとは言っていない。更に、側近達に加えてグレッセ王国正規兵8千人と、コルヴェイ軍の兵も居るのだ。

 こちらは精々が1000名に届くかどうかと言う所で、大半が“祝福喪失者”なのを考えると不利な要素しかない。

 その点についてのレイフォミアの返答は――。


『それについても策はあるの。カーニャさん、ノーレさん、ファルールさんの力を借りる事になるけど』

 ――対策アリ。口調がレーレと喋る時と同じになっているのはリスディアをまだ子供だと認識しているからだろう。口には決して出さない――それが何よりの肯定……。


「えっ、あの……私は戦力には……」

「私も“祝福喪失者”ゆえ、戦力差を補う程の力になるかどうか……」

 指名されたノーレとファルールが俯く、力を貸すのはやぶさかではないが、その期待に応えられるだけの能力が今の自分たちに不足しているのは身を持って知っている。

 けれど、そんな彼女達の不安を払拭する魔法の言葉をレイフォミアが放つ。


『その“祝福”を再び手に入れられるとしたら――――どうしますか?』

 放たれた魔法は難解すぎてその場に居た悠理以外の者達の時間を凍り付けにした。

 その一言がどんな意味を持つか気付いた時、凍りついた時間は動き出し、少女達は再び“牙”を取り戻す事になるだろう。

 ――戦う為の鋭き牙を……。

次回、戦力強化の巻。

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