ありふれた世界の末路を語ろう
眠くて頭が働かん……。
今回は台詞多め。
二人の会話の詳しい説明はまた明日。
『この世界は――――いずれ消滅してしまう運命だから……』
神である少女から告げられた言葉に一同は絶句する。あまりに唐突。今ここに確かに存在している我々が、この大地が、消滅してしまう? そんな未来を想像した事などここに集まったメンバーには居ない。
いつか訪れる死なら誰もが想像できる。だが、この世界の滅び――消滅なんて事象までは考られなかった。
今、悠理一行はグレッセを救い、そこからコルヴェイ王を打倒、背後に居るチーフを討ち世界を救う……。そんな感じのフロートチャートが頭にあったハズ。少なくとも陰謀を叩き潰せば世界は救われると考えていただろう。
――だが実際は違った。何の根拠もないが、神がそう言うのならそれは何にも勝る説得力がある。
敵を倒すだけでは世界は救えない――のであれば、今自分達が行っている事は一体なんなのか? グレッセを救った所でいつか消滅してしまうのなら――――意味など無いではないか……。
そんな雰囲気が場に流れ、一気に重苦しい空気が流れる――――しかし、この男はその程度では怯まない。怯みはしない。皆それを知っているハズだ。
「へぇ、それはどんな具合にだ? 完全消滅?」
悠理が興味深そうに問う。絶望などない。自分達がこれから行う事が無意味なものになるとは微塵も考えていない。諦めるにはまだ早すぎる、少なくとも彼がそう思うのならまだ希望はある。その胸の中に必ず。
『はい、まだ数年の猶予はあると思いますがある日突然全てが闇に呑まれて消えるでしょう。この星で残っているのはもうこの大陸だけだと思います』
「成程、じゃあその間に世界を救えば良いって訳だな、方法は?」
『ワタシはその方法を200年前に部下に託して眠りについたので残念ながら……』
普通に会話を続ける二人に唖然したまま一同は動けない。悠理が全く気落ちしていないのにもそうだが、レイフォミアから語られる事実が衝撃的過ぎて言葉を差し挟めずにいた。
そうしてる間にも会話は続く。
「この“生命神秘の気”でどうにか出来ないか?」
『それはもうワタシが試しましたけど――――失敗してしまったのです』
「ああ、やっぱりアンタにも使えたんだな。でもどんな方法を取ったんだ? 世界中の“生命神秘の気”を同調させて世界そのものを変質させる位しか思いつかないんだが」
『――まさにソレですよ。でも、流石に星一個まるまるを包み込む規模の“生命神秘の気”はワタシには操作出来なかったんです……』
「ワオ……、でも神様なんだろ?」
『忘れている様ですが、ワタシもこれでも元人間ですよ? それにワタシはこの大陸を守護する神であって、この世界そのものを守る神ではないのです。確かに絶大な力を持ってはいますが、この大陸の中だけの話なので』
「――アンタも大変だねぇ……。他の大陸がなくなってるなら力を借りる事も出来ねぇしなぁ……」
『はい……、だから一人で挑んでみたのですが……結果は失敗。その代わりと言ってはなんですが、大陸周囲には結界を張ってありますので消滅を遅らせる事は出来たはずです。――まぁ、それも200年前の話ですが……』
「結界の効果は後どれ位持つんだ?」
『さっきも言いましたが猶予は少なく見積もって数年です。当時、ワタシの力全てを注いで作った結界ですからあと100年位は持つかも知れませんが……』
「――アンタの身体の方が持たない?」
『――――その通りです。貴方もご存知だと思いますが、“生命神秘の気”は簡単に扱えるものではなく、扱えたとしても使い手の身体を徐々に蝕んでいく……。そして使い手が死ねば、“生命神秘の気”で作り上げた形あるものは消えてしまう』
「察するに、チーフはその結界が破壊されない様にアンタをあの生命維持装置に入れた。勿論、そこには奴なりの感情論、主であるアンタに対する忠誠心とかでそうしたんだろうけどな」
『――ワタシ自身あの装置の事は良く知りません。あれは20年程前に作られたもので、眠りに付いていたワタシの預かり知らぬ所で作成されたものだから……』
「――ふーむ、考えるこたぁ山積みだが……どうしたもんかねぇ……」
悠理は頭を捻りながら顎を擦った。ジョリッと言う髭の音が鳴る。
話を聞く限り八方塞がり――とまでは言わないが、“世界を救う方法”が解らない限りは消滅の危機は回避できない。しかもそれには制限付きときている。諦めてはいないが、闇雲に行動してはダメだと言う事も解った。
ならこれからどうするか? と、悠理の中で脳内会議が始まりそうになった頃、レイフォミアが残された唯一の可能性を提示した。
『――でも、貴方に与えた祝福なら可能かも知れないんです。あらゆる困難を打倒し、不条理を超えて世界を救う力……奇跡を起こす者……その名を――――』
そう、その名は……告げられる前に、あらぬ方向から割って入った人物によって掻き消されてしまった。
『ちょっと待てぇぇぇぇッ!』
――レーレだった。ぜぇぜぇと荒く息を吐きながら待ったをかける。
「えー、何だよ、今良いところ――――」
『うるせぇ、何、平然と話続けてんだ! 簡単に受け入れるんじゃねぇ!』
突然に世界の終わりを告げられて放心状態だったが、それを無視して会話を続行する二人へのツッコミが今炸裂したのだった。
『えっ、解らなかったのレーレちゃん?』
『解らねぇよ! いいから解り易く纏めろ!!』
「えー……」
こうして話は一旦区切られ、誰にでも解り易く今の会話と内容を伝えるべく、暫しの間、話を纏める為にレイフォミアは目を閉じた……。
瞼の裏には200年前の自分の姿がハッキリと見え、彼女は当時の記憶を掘り起こしていく……。
――と言うわけで、次回は説明回になる予定です。