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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
178/3920

神は再び眠りの淵へ……

アブねー! 夢中になってたら日付変わるギリギリだったぜ!!


でもまだ完成してないので24:30~1:00までには間に合わせますからご勘弁を……。

『おい、これは一体……』

 目の前で起きた変化に驚きを隠せないレーレ。緑色の液体が真っ白に――まるで凍った様になってしまったのだから、それも仕方ない反応。中に居るレイフォミアは無事なのだろうか? その疑問は本人の口から答えられた。

『――ワタシの本体には何の変化もないみたい……』

 それは現状維持と言う事だ。祝福を封じてくれと頼んだハズだが何とも無い。レイフォミアはほんの10分の2ほどの力を精霊石に移していたが、正確にはそれだけしか入らなかったのだ。それほど神の力とは強大なモノであるらしい。それを受け止めきったカーニャも凄いとしか言い様がないが。

「ふい~、何とかなったか」

 手応えを感じているのか悠理はやりきった表情と安堵の笑みを同時に浮かべる。正直言って成功するかどうかは解らなかった――と言ったらレーレに怒られそうなので黙っておく……。心中ではそんな事を考える彼にレディが声をかける。その様子はどこか興奮しているみたいだった。声に感情と抑揚が無いのが相変わらずで、あくまで気がする、程度のものだけれど。


「流石は廣瀬さん。やはり、“生命(オルゴン)神秘(ミスティック)の裏(リバース)”を使える様になれましたか」

「ええ、まぁこんな事もきっと出来るんじゃないかなー、と。――でもそれって、ここだから出来た事ですよね?」

「――本当に流石ですね。私、嬉しくなってしまいます」

 新しく出た“生命神秘の裏”と言う単語を元に二人だけの会話が始まる。無論、意味を理解できていないレイフォミアは首を傾げ、レーレはワナワナと震えた。面白くない、悠理とレディの会話が。勿論、そんな感情を抱いた彼女がいつまで我慢出来ると思えない。何処かで、いや直ぐにでも――。

『おいコラ! これは一体なんだって訊いてんだろうが!! あとその話も詳しくな!!!』

 ――爆発するに決まっていた。

『レーレちゃん、ヤキモチ?』

『違ぇーよッ!』

 古い友人――レーレには友と呼べる相手が居なかったので、唯一の友達である所のレイフォミアの発言に鋭い突っ込みに否定を入れるが、それが嘘である事は言うまでもない事だ。


「あー、何をしたかだったな? それは――――」

 綺麗なキレ気味の突込みが決まった所で悠理が説明に入る。

 何をしたか? それは彼らが言った“生命神秘の裏”を紐解く事にもなるだろう。

 悠理があの球体に触れ、その中に満ちた液体に虹の光が触れた時だった。直感した『これは“生命神秘の気”だ』と……。しかも高濃度の“生命神秘の気”を何らかの手法で液体に加工したモノであると理解できた。そして液体をそのまま利用する事にした。

 ここでおさらいするが、“生命神秘の気”とは“生命の進化や、変質を促すエネルギー”である。それは何処の世界にも少なからず存在する。なら、と悠理はいつしか考えるようになった。ならばその逆は?

 光があれば闇がある様に、表があれば裏がある様に、水と炎はいがみ合う様に……、どんなモノにも“対”がる。それは“生命神秘の気”も然り、必ず真逆に位置する力があるに違いない。

 そう、それが即ち――――“生命神秘の裏”。“生命の退化とエネルギーの停止”を司るチカラ。

 先に答えを告げておくならば、白へと変色した液体は()()だ。“生命神秘の気”をそっくりそのまま“生命神秘の裏”に()()()()。 


 廣瀬悠理が“生命神秘の裏”に気付いたとしても、彼はそれを自由自在には操れないし、そもそも生み出せない。――だが、変換する事は可能だった。彼は二つの“生命神秘の光球”を生み出してぶつけ、互いを変質させようとした。結果は暴発、同一エネルギーが交わるのではなく、別の何かに互いを無理矢理に変質させようとする。何度も何度もそれを繰り返していくうちに限界が訪れ――破裂。

 そこにはもう“生命神秘の気”はなく、あるのは真逆のエネルギー“生命神秘の裏”。全てを停止させる――――言い換えれば“死のエネルギー”だった。

 生まれた停止の力は一瞬で球体内の液体から、生命の活力ともいえるモノを奪い去った。

 ――が、全てではない。球体の真ん中には胎児の如く丸まったレイフォミアが居る。彼女はボール状になった緑色の液体に浸かっていた。間違いなく生きている。

 その周りにぶよぶよとした白い皮の様なモノが覆っていた。これは例えるならば――――オムツとでも言えば良いだろうか? それは進化と退化、変質と停止の両方を兼ね備えた不思議な中間のエネルギー。どっちにもなれないが、どっち側に傾く事もない。


 内側は液体が漏れないように蓋をする“変質”のチカラ、外側のぶよぶよは中に危害を加えない為の“停止”のチカラ。悠理がした選択はレイフォミアの要望を半分受け入れた形になる。祝福を奪う事が出来ないように干渉妨害壁を作り、彼女の命に危害が及ばぬよう命の揺り籠を作成した。

 恐らく、この球体の防護壁を破るのは不可能――――とは言えないが、アルフレドでも困難を極めるハズだ。

 ――何せ、悠理にももう解除方法が解らないのだから。いつかは見つけようと思うが、今は無理だ。

 それがレディと二人で話していた“ここだから出来た”の理由。この天空幻想城にて悠理はある違和感を感じていた。自分の力がまるで何倍にも膨れ上がったみたいな、ずーっと絶好調の状態を維持し続けられる様な感覚を。

 その理由に気付いたのは門番兄弟との戦いの中だった。アインツはこう言っていた。

『我が雷は自然の猛威を模したもの、なれば本物を操る事も可能。ましてやここは天空幻想城なるぞ?』

 天空幻想城の真上にある雲を操り極太の雷を落とした時だ。

『侵入者よ、これで解ったであろう? この場において地の利は圧倒的に我等にある!』

 天高くに浮いていると言うのに“地の利”とはおかしなものであるが……。だがそれがキッカケだった。彼等が言う“地の利”は悠理にもあったのだ。


 ここ天空幻想城にある“生命神秘の気”は、地上にあるソレと比べて驚く程に濃い。それを正確に把握できたのは球体の液体に触れたからだ。

 今思うと、悠理が地上で全力を出してもここ程の力は発揮できないだろう。虹の羽根も出来て10数枚、敵の攻撃を吸収しても頑張って翼を片方生やすまでいけるかどうか……。

 言うなれば悠理は天空幻想城に助けられたと言っても過言ではない。ここがもし地上だったら――――彼に勝ち目はなかっただろう。唯でさえアルフレドの“神獣の炎”に打ち勝ったのは奇跡的だと言うのに。


「――って事なんだ。解ったか?」

 以上の事を悠理は簡潔に伝えた――つもりだ。何せ自分でも推測の域を出ない部分がある訳で。でもどうやらレーレやレイフォミアはちゃんと理解して驚いていた。

『ユーリお前……、マジで何者だよ? もうお前が神なんじゃないかって気がしてきたぜ……』

「冗談でもよせよ、俺が神様だったら――お前の事も、アイツ等の事も救えたさ……」

『――ワリィ……』

 二人の間の空気が重くなる。どちらかが悪いと言う訳ではない。強いて上げるなら悪かったのはタイミング。まだグレイスとテオを喪ったのは昨日の事だ。その無念と悲しみがたった一晩で癒えるハズもない。

 神であるならば二人とも助けられた――いいや、絶対に助けた。でもそう出来なかったのは悠理に力が足りなかったからだ。ほんの少し、それともかなりなのかは解らないが……確かに力不足だった。

 レーレもそんな悠理の悔恨が伝わったのだろう。自らの軽率な発言を心中で責める。心の傷が癒えてないのは彼女も同じだが、レーレは精神世界で語り合って納得した部分もある。自分が生きていれば彼女達の死が無駄にはならないのだ、と。

 でも悠理はそうじゃない。レーレを生かした事で彼女達の願いは叶えたが、無念は残ってしまった……。


『あの――ごめんなさい……』

 場が静まり返る中、沈黙を切り裂いたのは落ち込んだ様子のレイフォミア。多分、カーニャの記憶を覗いたのかも知れない。状況は把握しているのだろう。気持ちを丸々と理解は出来なくても察することは難しくないのだから。

「何でアンタまで謝るんだ?」

 意識して穏やかな声を悠理は発する。個人的に神様と言う存在が嫌いな為に、素だと棘が出てしまうからだ。そんな見るからに罪の意識に苛まれた表情をされてはたまらない。カーニャの顔だからか尚更……だから、優しく接してみる。――上手く行ったかどうかは解らなかったが。

『ワタシにも責任があるから……。ワタシが世界を救いきれなかったから、この世界は……』

 別の意味で再び沈黙が訪れる。そこには“謎”と“問題”が含まれていた。薄々気付いていた事ではあるが……どうやら世界規模の大きな問題があるみたいだ。

 どんなものかは彼女が語らぬ限りは謎のまま、だが。


「――今は暗くなっている場合ではありません。ここから脱出しなければ」

 パンパンと手を叩いてレディがその場を取り仕切る。

「そうだった! で、帰りもレディさんが送ってくれるんですよね?」

 その合図を逃さず、すぐさま立ち直ったのは悠理。レーレ達も自分に釣られて元気が出れば良いな、と、明るい声で。

「いえ、私はここに残ります」

「え、えぇっ?」

 返ってきた言葉に素で驚く、では一体どうしろと? と言うのは、口にせずとも表情が語っている。

「少し野暮用がありましてね……だから――」

「へっ?」

 スッとレディが悠理に近付いてその顔を両手でロックし、間を置かず顔――と言うか仮面を近づけ――――。

「んぅ、ちゅっ……」

『んなっ!?』

『きゃっ!?』

 そのまま唇を重ねた。いや、仮面が悠理の唇に触れているだけで、レディの唇は触れていない――――ハズなのに、それでもレーレやレイフォミアが反応したのは、唇に吸い付く艶かしい音が耳に届いたから。

(え、仮面にしては柔らかいんだが――――ってこれ本物の感触だよ! レーレとは少し違うけどスゲェ柔らけぇもん!!)

 いきなり過ぎてさしも悠理も大分テンパっている。けれど、これは多分だがレディの能力だと言うのは直感――と言うより、身体で理解した。

 レディ・ミステリアの能力の前では壁は意味をなさない。周囲には仮面が触れている様に見えても、彼女の力により唇部分だけが仮面をすり抜けて悠理の唇を奪っていたのだ。

 ――恐るべしレディ・ミステリア!

 

「ぷはっ……、私の力を一度だけ使える様に廣瀬さんに渡しました。使い方は既に頭の中にあるハズです」

「は、はい、それは解りますけど……他に方法は無かったんですか?」

 キスされた事にドキドキしながらも、出来ればこれ以外でお願いしたかった悠理。何と言うか――――心臓に悪い。

「あら、嫌でしたか?」

「嫌な訳じゃないですが……レーレが怒り狂いそうで……」

『ガルルルッ!!』

 狂いそうというか、既に怒り狂っていた。レイフォミアが『ま、まぁまぁ』と押さえてつけていたから良いが、離したら間違いなく飛び掛ってくるだろう。しかし、女と言う生き物は火に油を注ぐのが好きな生き物らしい。

「フフッ、まぁ、私も女ですから。異性のカッコイイ姿を見て興奮してしまった、とでも言っておきましょうか?」

「こ、興奮ですか……」

 普段通りの感情を感じさせない話し方なのに、言葉のチョイスは巧みだ。あっさりと悠理は顔を赤くしてドキドキし始めた。

『ユーリィィィッ! ガブッ!!』

「痛ッ!? あだだだっ、噛むなって!」

『もうレーレちゃん、はしたないよ?』

『うおぉぉぉっ、離せレイ!』

 レイフォミアを振り切って駆け出したレーレは悠理の首筋に容赦なく噛み付く。やはりレイフォミアがばりっとレーレを剥がし助けてくれたたが、羽交い絞めにされても彼女はジタバタと暴れている。嫉妬の執念恐るべし。


「くっきり歯型残っちゃいましたね? フフ……」

「まぁ、可愛いから許しますけど……」

『――ッ!』

 首についた痕を見て妖しく笑うレディ、悠理は首筋を触りながら別に満更でもなさ気で、嫉妬の執念レーレも『可愛い』と言われただけで顔を赤くし、暴れるのを止めた。

「惚気ですか? ――と、悠長にしている暇は無さそうです。お早く」

 いつの間にか話し込んでいたらしい。部屋に多くの足音が近付いてくるのが解った。

「確かに……! レーレ、神様っ、俺に捕まれ!」

『応よ!』

『はいっ』

 レーレは悠理の背中にぶらさがり、レイフォミアは腰に抱きついた。

「じゃあ、レディさん……幸運を」

 彼女をこんな敵地に残して行くのは気が引けたが、恐らく何か訳があるのだろう。信じて送り出すことがレディにしてやれる唯一の恩返しかも知れない。そう思い、いつか誰かがそうしてくれた様に悠理は声援(エール)を送った。

 ――アナタの目的が果たせますように、と。

「はい、貴方も幸運を」

 レディも微笑んで見送ってくれた気がした。仮面に隠れていてもそれが伝わったのだ。

 そんな彼女の姿を目に焼き付けて悠理達の姿はその場から消えて行く……。

 天空に浮かぶ神の居城での騒ぎはこうして幕を降ろした――――が、それはやはり新たな騒動の幕開けとなるのだろう。

 けれど今はこれで終わる。そうして物語は繰り返すように再び動き出すのだから……。



――やっと終わった……。


“生命神秘の裏”辺りに説明をかけすぎてしまった。


でも省けない箇所だったからこうして延長戦までしたんだぜ!


――いつも以上にグダグダになってたら御免よ!

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