番外編・心の中を沈み行く少女は何を見るのか
ちょっと、色々あって遅れたので番外編で。
しかも、かなり中途半端なんで一旦上げますが完成版は24:30頃になりそうです。
――神の意識が宿った宝玉を口にしたカーニャ……。その意図は成功をみるものの、彼女の意識は心の中深くまで沈んでいた。
(あれ……アタシ、どうなったんだろ?)
見渡す限り真っ暗闇……と思いきや、遥か上方に光らしきものが見える。手を伸ばそうとするが――――動かない。そもそも、身体の自由が何一つ利かないと気付く。
それもそのハズ、彼女の身体の主導権は現在レイフォミアに渡っているだから。
「――そっか、アタシは神様に身体貸しちゃったんだっけ……」
朧気だがそんな会話を交わした気がする。そう確か――――。
『ごめんなさい、少し身体を貸してください。私の部下と話をつけてきます』
レイフォミアは申し訳なさそうに告げてカーニャの代わりに外へ出て行った。つまりは肉体を操作する権限はここから出ない限りは得られないのだ。
「まぁ、それは良いんだけど……ここって心の中よね? アタシの心ってこんなに真っ暗なわけ?」
視界に移るのは一つの光以外は総て闇。自分が立っているのか、寝そべっているのか、はたまた浮いているのかさえも不明。人の心――精神世界と言うのはこうも殺風景なものなのだろうか?
「――確かにロクな人生歩んできてないけど、もうちょっと、ねぇ?」
苦笑しながら肩を竦める。精神の世界に潜り込んだのは初めてだが、少なくともこんなにも何も無いとは思わなかった。そう思う一方で、何も無い事に納得もしているのだけど。
「こう言うのも祝福の影響なのかしらね?」
カーニャは“祝福喪失者”、祝福とはこの世界に生を受けた者なら誰しもが持つ自分の個性。祝福を喪うと言うのは個性を失くすこと、そして――――平凡を剥奪される事と同義だ……。
本来ならここは彼女の個性と平凡で形作られた世界であるハズ。しかしそれが存在しないのはやはり祝福を持たざる者だからなのか……。
「――あー、考えてもキリがないわね……」
現状やこの世界を彼女なりに分析しようとしたが、頭がキリキリと痛む……。やはり肉体労働担当には脳を使うのは向いてないのかも知れない。
「どうしたもんかし――――ん?」
髪をぐしゃぐしゃと掻き乱して、どうしようか迷っていると……。
「……お姉ちゃん誰?」
「えっ、子供?」
いつの間にか目の前に子供が立っていた。水色セミロングの少女だ。その手には兎のぬいぐるみを抱いている。
「ここはあたし達のお家なんだよ?」
少女が警戒する様にぬいぐるみをぎゅっと抱きしめ、ジリジリとカーニャと距離を取る。まるで不審者から必死で自分の大切なモノを守ろうとするみたいに。
「は? 家なんてどこにも――――ちょっと待って」
――そう、どこにも見当たらない。以前として景色は真っ黒で家なんてものは見えない。だがちょっとまて、何かおかしいのだ。何故だか目の前に居る少女に酷く見覚えがある気がする……。
「アタシはカーニャ。アナタのお名前は?」
カーニャは屈んで少女と目線を合わせる、一瞬ビクッと震えたが、育ちが良いのか正直者なのか恐る恐るその質問に答えた。
「あたしは“かーなりーにゃ”。お父様とお母様には“かーな”って呼ばれてるの……」
「―――――ッ!?!?」
その名前を聞いた瞬間、カーニャは自分の意識が急速に遠退くのを感じた。――見覚えがあるに決まっていたのだ。
何せ目の前に佇む少女は紛れも無く――――――過去の自分だったのだから……。
(ああ……、やっぱりここはアタシの心の中で間違い無さそう……だわ……)
既に心の奥底に沈んでいる己が、更に何処か得体の知れぬ場所へと沈んで行くのを感じながら彼女は思う。
――やっぱり、過去ってのは見ないフリしてても消えないものよね、と……。
さぁて、時間がなかったもんでレイフォミアと体が入れ替わってる間のカーニャの話を書いてみました。
チーフが言いかけたカーニャの本名がここでバレましたね。
――彼女が今まで本名を隠していたと言う事は……?
※↑更新しようと思ったら一気にブクマが二件減ってて、ショックのあまり饒舌(?)になる作者の図。