目覚めし者の名を知る者は居るや、否や
だぁぁぁっ、眠いけど書いたぞー!
後半眠くてグダグダだったけど、後で補正しますから許してくださ――ブヒィッ!!
――天空幻想城、神の寝室にて巻き起こった火柱はおよそ一分ほど続いた。与えられた祝福が重要な意味を持つこの世界において、チーフが放ったその一撃はまさしく最高峰。あくまで借り物の力に過ぎないが、かつてノレッセアの歴史に名を刻んだ“神獣”の炎はあらゆるものを灰燼に帰す。
これを受けて無事で居られるものは“神”と呼ばれるに足る祝福を持つ者だけ……のハズだ。
「――私の一張羅が台無しですね……」
立っている。謎の女、レディ・ミステリアは五体満足で立っている。着ているライダースーツは所々焼け焦げ、その健全な肉体の一部を晒すが……それだけ。ダメージは零に等しいようだった。
「――割りと本気でやったんだけどなぁ……」
これには流石のアルフレドもたじろぐ、主たる神が眠る球体の近だった為に多少手加減はした。――――したが、これは彼にとって切札中の切札。裏技に近い能力を駆使しても傷を与えられない、となれば打つ手は――――ない。
「僕が撹乱します。チーフはその間に大技を」
“神獣の炎”が全く効かない……。その事実を重く受け止めたアイザックはこの場を乗り切る為に捨て身の覚悟を決めた。
「――解ったよアイザック。ちゃんと避けるんだよ?」
「了解」
最初はアイザックに全力を出させるのを渋ったアルフレドだったが、こうなってしまった以上は止められない。今ここで負ければ彼等が200年をかけて計画した“夢”が潰える事となる。
それだけは――――ダメだ。ここまで歩いてきた道を引き返すことも、閉ざされることも許されはしない。既に犠牲も代償も支払ったのだから……。
決死の想いを抱き、神の側近達は再び謎の女に攻撃を仕掛ける算段に移る。
「来なさい、ちょっと本気で遊――――」
それに対してレディも戦闘態勢を取――――ろうとしてピタリ、と止まってゆっくりと振り返った。とてつもない気配を感じたからだ。敵意は無かったが、想わず動きが止まってしまう程度には重圧がある。
「あ、ああ、あ……っ」
――アイザックに至っては致命的だった。何者かが発するその空気に触れ、そして平伏す。足は勝手に膝をつき、身体は意図せず頭を垂れる。身体中から狂ったように流れる体液が止まらない。目からは涙、鼻から鼻水、額や背中には異常なほどの発汗……。恐怖、畏怖、本能からの警告。彼の無意識がその存在を恐れ、勝手に、無様に降伏したのだ。
「アイザック!? この威圧感は――まさか……」
「――早まりましたねカーニャさん……」
同じ空間に居ながらアルフレドとレディはアイザックの様な影響を受けていない。幸運と言っていいのか、はたまたその逆か。二人は微動だにしなままで、その威圧を放つ人物の発言を待つ。
『アルくん、ザック。200年ぶり……でいいのカナ?』
球体の裏側から歩いて来たのは――カーニャだった。しかし、その瞳は普段とは違う銀色に光輝いている……。これがどういう事態なのか、それはもうこの場に居るもの全てが理解している。直感も本能も関係ない。明らかに次元の違う相手はやはりその存在感も常人とは異なるものなのだ。
「――――そうですよ。我が主――――レイフォミア・エルルンシャード……!」
どうやらカーニャが行った行為はどうやら良い方向へと転んだようだ――今、彼女の中には神が居る。それは精神と力のほんの一部分。でなければレディ――はどうか解らないが、アルフレドもアイザックの様になっていただろう。
久しぶりの再会を喜ぶことは出来ず、アルフレドは仕えるべき主に敵意の視線を向けた。
『――変わったねアルくん……。そんな目でわたしを見ることなんて無かったのに……』
「――変わってませんよ、ボクは今でもこの世界を救う為に生きている」
200年の間に何が起こったのか神は知り得ない。それほどの長い月日がアルフレドをどの様に変えたのかも正確なことは何も解らない――ただ……。
もうあの頃は帰ってこないと言うことだ。どんなことをしても。カーニャ――その内に宿ったレイフォミアは俯く。痛みに耐えるように悲しげなで痛ましい表情を浮かべて……。
『この子の記憶を少しだけ見させてもらったの……クヴォリアの住人に酷いことしたのは貴方達ナノ?』
今のレイフォミアはカーニャと共生状態にある。だから彼女の見聞きした情報は任意で共有できるのだ。脳裏に浮かぶのはクヴォリアの住人達が苦しむ様……。それを自分の家族とも言える部下がやった、などと信じたくは無い……けれど――。
「ええ」
――現実は残酷だ。少なくとも神の切なる願いさえ覆す程度には。
『どうして?』
「世界を救う為ですよ」
『…………貴方の言う世界って何?』
「この大地に息づく全ての命が安らぎを得られ、豊かに暮らしていける土地に決まってます」
主の質問に淡々と答えるアルフレド。彼は微塵も揺るがない。自身の行いに対して気負う所がないのだ。それがどんなに悪逆の限りを尽くしていたとしても彼には彼の正当性があるのだろう。
だから揺るがない、揺らぐはずもない。その答えに身体を震わせてレイフォミアが叫ぶ。
『じゃあアルくんのやってる事は何なノ!』
きらり、と何かが目元で輝いたのはきっと気のせいではないなかったハズだ。
「クヴォリアの住人達から安らぎを奪っておいて世界を救うなんておかしいよ!!」
ありったけの想いを言葉でぶつける。そうじゃなかった筈だ。ワタシ達の目指した、作り上げようとしたのはそんな世界では……。理想を思い出せ、気高き心を取り戻せ! そしてもう一度やり直――。
「――貴方が……」
――せる訳が無い。レイフォミアも忘れてはいないだろう。アルフレドがどれだけこの世界に尽くそうとしていたかを。今度は怒りを込めて彼が叫ぶ番だった。
「貴女がそれを言うのか!? 世界の再生を諦めて永い眠りについたレイフォミア様、貴女が!!」
『そ、それは……でも、私が望んだ世界の再生は、こんな…………』
「――――綺麗ごとですよ、それは……」
『アルくん……』
二人の間で他者には解らない会話が続く。いつの間にかレーレがレディの横に並び、事の成り行きを見守っていた。
(世界の再生? 諦めた?)
放たれた言葉とレイフォミアの動揺をレーレは見逃さない。それは間違いなく重要な話であるのは考えるまでもないこと。しかし、一体何の意味を持つ話なのか……。二人の会話でそれらを拾おうとするレーレだったが……。
「ようやく解りましたよ、ボクはもう貴女に必要じゃないって事が」
――一方的に会話は打ち切られる。あからさまな失望を浮かべ、冷徹な眼差しをレイフォミアの向けたアルフレドが問答無用でそうしたのだ。
『違――っ!!』
誤解を解こうとするが、既に彼は聞く耳持たず……。
「ボクはボクの世界再生の為に全てを捧げる! 命も良心も――――愛した女性さえボクはもう生け贄に捧げた男だ!」
『――え?』
「神、レイフォミア。敵対する事になっても貴女はボクの尊敬する方だ。命までは取りたくない――――が」
ふと何か聞き捨てならない重要な事を言い放った気がするが、レイフォミアにはそれを問質す暇は与えられない。そして――――決別は告げられる。
「世界再生を諦めた者にその祝福は相応しくない……!」
『――――ッ!』
「奪わせてもらいます、その“全知全能”の祝福を!」
――神の右腕と称される男が反旗を翻す。前代未聞の出来事、部下から見限られることを想定してなかったレイフォミアは放心している様で、ヨロッと身体をふらつかせる。レーレとレディが咄嗟にその身体を支えた。
『クソッタレ!』
「何やら予想以上に面倒な事になりましたね……。さて――――」
ギラついた瞳で迫ってくるアルフレドにレーレは舌打ちし、レディは彼を――――いや、背後をみて声をかけた。
「――どうします廣瀬さん?」
――と。その直後だった。
『ぬぉっ!』
『きゃあっ!?』
「な、何事だい?」
天空幻想城が大きく揺れ、轟音と共に寝室のドアが壁ごと破壊される。その瓦礫の下敷きになっている巨漢が――二人。
「――ぬぅぅ……」
「――ググ……無念……」
呻き後を上げたのはアインツとドゥエンツの門番兄弟であった。
「ア、アインツ? それにドゥエンツ――――彼等がボロボロでここに来たって事は……」
咄嗟の出来事で薄れた神の威圧を跳ね除け、アイザックが状況を把握しようとするが――。
「――――よぉ、待たせたな?」
――響いたその声によってする必要はないのだと悟った。
おっ、さっき確認したらブクマ増えてーラ!
やったぜ!