アウクリッドとファルール・クレンティアの関係
今回はちょっとやらかしてしまった為に短めです……。
詳細は後書きにて。
「クソっ、何だってんだこの剣は――!」
何度も刃を交差させながら、ファルールが使う剣の情報を侵入で取得しようとする。
しかし、この状況では攻撃にも力と意識を割かなければならない。戦闘に不慣れな悠理が二つを同時に行おうとするなら、自然と侵入の優先度が下がる。
もっと訓練すれば同時にこなすことも難しくはないと彼は思う――が、今は無理だ。
それに大体だがあの剣に何が施されているのかは推測出来た。
初撃を受けた際に、“虹色の視界”を使って相手をチェックしていたのだ。
彼女の姿は視界にはぼやけて映され、剣の姿はハッキリと映された。
精霊石が放つ力と似た流れ、そしてあの剣には複数の祝福が混在している。通常の視界では確認出来ないが、刀身に奇妙な紋様や文字が記されていた。恐らく、何かしらの術式による強化、それもかなりヤバイ系の。
「こりゃあ、早目に決着つけんと――なっ!」
今現在、廣瀬悠理が扱うことの出来る全てのエネルギーをグラディウスに注ぎ込む。
刀身の輝きが見る見る内に大きくなり、彼の身長の裕に三倍程の長さへ達する光の剣が創製された。
「――ふざけるなぁッ! 何としても貴様を倒すッ!」
対するファルールも自らの剣に最大の力を込める。
この剣――アウクリッドは精霊石の上位種である精霊結晶石を使って生み出されたもの。
世界に10もない名剣の一つ。その内には悠理が睨んだ通り、複数の祝福が宿っている。
だが、彼が感じたヤバイ系の正体はまさしくヤバイと称するに相応しい。
それは――――――持ち主の恐怖や憎悪を糧として力を増幅させる、と言うモノ。
ファルールが悠理とコルヴェイ王を重ねたのは、この効果の副作用によるもの。いや、副作用なんて生易しいモノではなかった。
簡潔に言えば、ファルール・クレンティアは――――アウクリッドに操られている。
精霊結晶石から生まれたアウクリッドも独自に意思を持つ。
――――何よりも強い存在であること。
その為に、使い手である彼女の精神を蝕み、ふとしたキッカケで感情を暴発させ、無意識に力を振るわせるように仕向けた。
グレフの攻撃をアウクリッドで防いだのも、彼の言葉に激昂し首を刎ねようとしたのも、コルヴェイ王への恐怖を悠理から感じたのも……。
――――全ては自分をより強くするべく、そのエサとなる恐怖と憎悪を産み出す為……。
最悪の悪循環と言えた。ファルールは恐怖を乗り越えようと力を振るう。だが、その恐怖は自身が握る剣から与えられた錯覚なのだ。
彼女はそれに気付かない、気付けない。既に操り人形と化しているのだから……。
何が怖くて何が憎いのか、彼女にはもう解っていないかも知れなかった。
「セイヤーーーーーーーッ!!」
悠理は渾身の力を込めて光の刃を振り下ろす!
「ハァァァァァァァァァッ!!」
怨嗟の叫びを上げながらアウクリッドで受け止めるファルール。ぶつかり合った瞬間に空間が爆ぜ、今まで以上の衝撃を放ち、スルハの街を破壊の余波が襲う。
(ヤベッ、街を守りに来たのにこのままじゃ逆にぶっ壊しちまうぞ……!)
危機感を覚えつつ、攻撃に意識を向けながらもう一作業、侵入を継続。
宝剣アウクリッド、材質は精霊結晶石、内包する祝福は――――現在ダウンロード中……。
―――――――やり方が悪かったと反省する。
二つの作業を同時にこなすのが難しいのなら、一つにまとめてしまえば良い。
即席ではあるが、この光の刃は攻撃と侵入を同時に行う為に造り上げたもの。欠点はどちらの特性も得てはいるが、各々単体で使うよりも効果が下がっていること。
だが、攻撃力低下と侵入に時間がかかる代わりに、隠密性と安全性が向上している。今、相手は何かされている事に気付けてもいまい。
そして安全性、レーレに侵入を行った際は一気に情報が流れ混んで来た為に悠理自身に負担がかかり過ぎた。
しかし、通常よりも効果が下がった事で、侵入によって得られる情報を任意に選択可能になり、負荷の軽減に成功したのだ。能力が低下した分、小回りが利くようになったと言ったところか。
(成程、そう言う事か……こいつはエグイな……)
アウクリッドの情報を取得するのと同時にファルール・クレンティアの状態を把握。精神状態が酷く不安定だ。このままでは危険領域に突入するのもそう遅くはあるまい。
あの剣は負の感情を糧として成長する。彼女が発狂でもしたらどんな事態を招くか――――想像も出来ない。その前に何とかしなければならないのだが……。
(書込みは無理、だな)
彼女とアウクリッドのどちらかを何とか出来れば勝機が見えて来る。書込みでは駄目だ、今のところ相手の気力も精神力も殆ど衰えていない。
いや、むしろアウクリッドの能力の性で無理矢理に力を底上げされている様なものだ。勝負に出るにはこちらが不利と言えた。
(このまま力押し――をすれば勝てなくはないだろうが、街とファルさんがどうなるか解らんな……)
勝つ事を目的とするなら達成するのは簡単、代わりに大きな代償を支払うことにはなるかも知れないが。
だが、先の事を考えれば被害は最小限が望ましい。
現状、自分の能力では手詰まりになりつつあると感じた悠理は――――。
「――めんどくさくなってきたな」
そう呟いて――――光の刃を解除した。
「――――なっ!?」
今まで拮抗していた力の片方が突然無くなった、そうなればどうなるか?
当然、標的目掛けてアウクリッドが振り下ろされていき――――。
「――ぐっ、ガハッ……!」
――――――広瀬悠理の身体を切り裂いた。
うん、また戦いに決着がつかなかったね。
と言うか、やる気をごっそり持っていかれてさ……。
執筆中、保存する前にウインドウを間違って消してしまうとは……!
まぁ、書いた内容は大体覚えてたけどそれでも時間がかかってしまってこのザマです。
土日で挽回しないとなー。