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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
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因縁は巡るもの

うおー、久々に本編更新だ~!


頭が働いてる気がしないけど、昨日よりは大分マシか……。

「そんな……、確かグレッセ城に居るハズじゃ……」

 ――カーニャは当惑した。これは眼前に立つ男の目をも欺く奇襲作戦だったハズだ。悠理は勿論、レディの力で彼女やレーレもかの祝福に探知されていない……らしい。だと言うに、アルフレド・デディロッソは何の悪戯かここ天空幻想城へと帰還しているではないか……!

「あれぇ? レーレ君だったよね? 確かに祝福を奪わせたのにどうして生きてるのかな?」

 驚く一行を余所に、アルフレドは実に堂々としている。皮肉を目一杯込めた顔でレーレを見つめニンマリと笑う。その見ていて吐き気すら覚える表情に瞳をぎらつかせながらレーレは怒りを漏らす。

『――――テメェに一泡吹かせなきゃ死ねなくてな』

 ――悔しい事に、彼女にはこうして怒りを込めて睨み付ける程度しか出来ない。この場においての弱者は己とカーニャのみ。力が、力があればその気色悪い笑い顔に一発入れてやれるのに……。

 そんなレーレの怒りを悟り、解ったからこそこの趣味の悪い神の側近はそれを嘲笑する。

「アッハハハッ、だったらもう十分驚いたよ! 得体の知れない存在と一緒とは言えここに侵入したんだからねぇ――――ん?」

「――何よ?」

 機嫌良さそうに笑い声をあげるアルフレドだが、ふと、カーニャに視線が行って止まる。真っ直ぐ自分を凝視された事に対してカーニャは悪寒を感じた。好奇心に満ち満ちた瞳、まるで檻の中に閉じ込めれ観察されている気分。

 不快だ、不快極まりない……。しかし、怯んでなるものかと勇気を奮い立たせ抵抗する――が、彼の次の一言でその抵抗も無意味なものにされた。


「おやおや、誰かと思ったらお姫様じゃないか。どーも初めまして、アルフレド・デディロッソだよ」

 仰々しく頭を垂れたアルフレドにカーニャはビクッと体を震わせた。――知っている。こいつはアタシの過去を知っている……! 警鐘が鳴り響く、今まで悠理にすら黙っていた自身の過去……それを語らせてはいけない。

「いやー、君のお父さんは良く働いてくれて助かってるよ」

「――――っ、何を言ってるか解らないわね」

 ――間違いなく己の過去を知っている。これ以上語らせるな! と本能は叫ぶのに身体も口も思う様に動いてくれない。

 解っている……恐ろしいのだ。過去を暴かれるのが怖くて怖くて堪らない。嫌な汗が次々と流れ、呼吸は荒くなっていき、喉が渇いて息苦しい……。

 それを見て満足そうにまたあの悪趣味な笑いを浮かべるアルフレド。しかし、こう言うのを調子に乗ったと言うのか? はたまた地雷を踏んだと言えばいいのか……。どちらにせよ、彼は対応を誤ったと言う事。カーニャにとって一番訊きたくない単語を平然と投げかけたのだから。

「つれないねぇ……、えーと、確か……カーナリー――――」

「――ッ!? その名でアタシを呼ぶなッ!!」

 それは本当に一瞬の出来事だった。先程まで感じていた恐怖心など粉微塵に吹き飛んだ――いや、胸の内から湧き上がる怒りと言うマグマに溶かされた。気付けば身体が怒りに突き動かされ、護身用に持っていたナイフを素早く抜きアルフレドに向かって投擲!

「おや?」

 それは閃光――――と称するには遅いものの、目にも止まらぬ速度であったのには違いない。真っ直ぐに飛んだナイフはアルフレドの頬をザックリと切り裂いていた。ダラダラと真っ赤な血が流れ、カーニャはぼんやりと『神の側近も血は赤いのね……』、なんて無意識に思う。


「――フッ、フフフ……、いやぁ、自分の血なんて久々に見たね……」

 流れる血を見て愉快そうに笑った後、アルフレドの顔からは笑みが消える。ここに来て初めて彼は遊び心を捨てる。所謂、戦う気になった、戦闘態勢に入ったと言うヤツだ。

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 膨れ上がるアルフレドの敵意に中てられたのか、それとも恐怖を振り切った一撃に気力を全て持っていかれたのか、カーニャの消耗が激しい。ぽたぽたと滝の様に汗を流し、がくがくとみっともない位に膝が震えていた……が、何よりも消耗していたのはその精神と言えるかも知れない。

 ――本名を呼ばれかけた。たったそれだけの事で恐怖に打ち勝って一撃を放つ闘志を手に入れられたが、それとは逆に本名を呼ばれそうになった事は彼女の精神に大きなショックを与えていたのだ。

 絶対に隠し通さねばならない。今のカーニャにとって、どんな攻撃よりもその名を呼ばれる、たったそれだけの行為が彼女の胸を深く抉る一撃と成り得るのだから……。

「落ち着いて下さいカーニャさん。レーレさんも後ろに下がって、ここは私が」

『応、頼んだぜ! ほら、こっち来いカーニャ!』

 短刀を構え、アルフレドと対峙するレディ。レーレはその言葉に素直に従って、ふらふらなカーニャに肩を貸しながら後退する。――と言っても、背にしているのはレイフォミアの入った生命維持装置なるガラスの球体……。退路など無い。


「ふーん、君が居たからここへ侵入出来たみたいだね――――何が目的だい?」

 レディを瞳に捉えながらアルフレドはカチャリ、と眼鏡の位置を修正する。これは彼が考え事をしている時の仕草。今彼はレディが何者かを見定めようとしている。恐らくこの世界の住人ではなく、とてつもない高いレベルの存在である事は想像に難くない。

 何故ならここ天空幻想城の結界を突破することは生身の人間には到底出来ない事なのだ。それを軽々とドアを開くように易々と入り込んだ相手を警戒しない訳が無い。

 突き止めなければならない、彼女が何の目的を持っているのかを。

「嫌がらせ……ですかね」

「僕が君に何か迷惑を?」

「ええ、20年前に――ねっ!!」

「――ッ!? アイザックッ」

 ――20年前、その単語を訊いて今度はアルフレドがカーニャの様に混乱するハメになった。その性で生まれた致命的な隙。対峙する謎の女性がその隙を見逃してくれる訳も無く、あっさりと隙を突かれて先手を許してしまう。

 こちらの懐に踏み込んで一撃! 彼女の行動を読んだとしてももう自分には防ぐ方法などない。だからこそ、彼の名を呼ぶ。

 その瞬間、一陣の風がアルフレドの横を通過しレディへと吶喊した!


「――っ、速いですね……」

 ガキィィィンッ! 鋼同士がぶつかり合う甲高い音が響いたかと思うと、レディの目の前には長剣を構えた少年が一人。その瞳は驚きに見開かれている。

「――僕の速度に対応した!?」

 レディへと突撃していった風は少年ことアイザック、チーフことアルフレド・デディロッソの腹心であった。

「な、なにアイツ! 急に現れたわよ!?」

 カーニャの目にはアイザックが突然現れたように見えた。先程彼女がアルフレドに投擲したナイフ、あれも目にも止まらぬ速度であったが、それとは全く次元の違う何かにしか見えないが……。

『チッ、“神速のアイザック”か……』

 だが、レーレの発言にそうではないと知る。アイザックは唯――全力で走ってきただけだ。奇襲を察知されぬように部屋の外で待機していたのだが、レディの前では無意味だったらしい。

「片手では不便です……ねッ……カーニャさん!」

 ギリギリと短刀で長剣を力任せに無理矢理押し返すレディ。押し返されたアイザックが飛びずさったのを確認すると彼女はポーンと手に持っていた玉をカーニャに向けて放り投げた。それはキラキラと淡い光を発する深紅の宝玉、今回の侵入作戦最大の戦果――――神の精神と力(一部)が入った精霊石だ!


「へっ? ちょっ! 大事なモノなのに投げて良いのコレ!?」

 未だにヘロヘロ状態であるカーニャの疲れも吹っ飛ぶ緊急事態。素早く動いた左手が何とか精霊石をキャッチ! ――何とか事なきを得たから良い様なものの一歩間違えれば第三次になるところであった……。

「これでやり易くなりました」

 悪びれた風も無く、これで戦闘に集中できると言わんばかりにレディは前を向いて臨戦態勢に移っていたのだった。

『カーニャ! 落とすなよ? 絶対に落とすなよっ!?』

「解ってるわよ! 変に煽らないでったら!!」

 仮にも友人の精神が入っている器だ。レーレがつい煽るような発言をするのも仕方ないと言えばそうなのだが……。何か妙なプレッシャーがかかってカーニャは何とも言えない緊張感に包まれていくのを感じた。

「やれやれ……、想定の範囲内だけど、あっさりアイザックに対応しちゃうとはね」

「チーフ、どうしますか?」

 アルフレドの横に並んだアイザックが指示を求める。視線は絶えずレディの監視し、四肢はいつでも動きに対応できる様に準備は万端。あと必要なのは作戦方針のみ。

「全員生け捕りに出来るかな?」

「――祝福の負荷で僕が死んでも構わないのなら」

「……それは困るねぇ。じゃ、死なない程度に頑張ってその人を抑えといて」

 まるで軽口の様な作戦会議、そのいつも通りのやり取りと雰囲気に、アルフレドの口調にも遊び心が帰ってきていた。

「了解、油断しないで下さいね?」

「アハハッ、面白い冗談――――だッ!」

 そうして笑いながら、二人並んでレディへと吶喊する!

そう言えば、近々タイトルを変更してみようと思っています。


暫くしたら、後書きと、活動記事にて告知すると思うので、お手数ですがご確認をお願いいたします。

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