番外編・夜空を見つめる少女は何に祈るのか?
友人に誘われて大宮へ買いものに出かけたら帰るのが遅くなってしまったので番外編で!
――ユーリとカーニャ、ノーレが消えて30分後。アルフトレーンにて待つ少女達はその頃……。
「ん? どうしたんだノーレどの?」
主と共に二人の仲間が消えた後、どうにも落ち着かなかったファルールは屋敷の廊下を歩いていた。
そんな時、ふとか細い歌声が聞こえてきたのでその場所へ向かうと、中庭で空へ向け祈りの歌を捧げるノーレの姿を見つける。
無粋、かとも思ったがそのあまりに熱心な姿に自然と声をかけていたのだ。
「あっ、ファルールさん」
背後から届いた声に驚いた風も無く、歌声を聴かれたとも考えていないのかノーレの様子はいたって普通の反応。
むしろ、ファルールが来た事に対してどこかホッとした様な表情を見せる。
「何やら熱心に祈っていたようだが……」
「はい、ユーリさん達の無事をか――その……、星に……」
「――そうか」
何かを言いかけて修正した彼女。危うく『神』と言ってしまいそうになったから……。現状では敵――と認識せざるを得ない相手だ。そんな相手に祈りを捧げる――と言うのも奇妙だろう。そう思ったからこそ、ノーレは今まで見上げていた星々を祈りの対象にする。
きっと星には敵とか味方とかは関係なく、生きとし生けるものを平等に照らしてくれるから……だと思う。
「ファルールさんこそ眠れないのですか?」
「ん……、そうだな。私も付いて行けば良かったと思ってな……」
「そう……、ですよね。自分の君主が危険な場所に赴いたとあっては騎士として心配ですよね?」
「おおっ、解ってくれるのかノーレどの!」
「は、はい、何となく、ですが」
騎士としての自分の気持ちを察してくれた事が嬉しかったのか、妙に彼女の機嫌が良くなるのを感じたノーレ。しかし次の瞬間には何処か落ち込んだ様にファルールは溜息を吐く。
「――だが同時に、付いていかなくて良かったとも思うのだ……」
「えっ?」
思わず聞き返して彼女をじっと見つめる。表情は不安気、普段白風騎士団を纏める団長姿の印象が強い為か、ファルールが漂わせる気弱な雰囲気は新鮮で、どこか痛ましさすら感じた。
「もしも、もしもだ。付いていって、自分の力が何一つ通じなかったら――――そう思うと……、な?」
「…………」
――付いて行こうと思えば行けた。その事に対する後悔。
だがしかし、付いて行ったとしても足手まといにならない保証はどこにあるのか?
そんな風に物事を悪い方に考えてしまうと、どうしても心は弱さを曝け出してしまうもの。だから、ファルールは付いて行かなくて良かったと思った。不安を現実のものにしてしまう恐怖に彼女は確かに膝をついてしまったのだ……。
「――でも……」
弱音を吐く騎士に星に歌を捧げる少女は言う。胸の内に救う不安を払拭する為に。
「うん?」
「でもきっと、こうなった事には理由があると思います。姉さんと彼女がユーリさんに付いていった事も、私達が付いていけなかった事にも理由が……」
「レーレどの……」
「今は無事を信じて待ちましょう。それが今私達に出来る唯一の……そして最大の行動です」
真っ直ぐに、騎士の瞳に映る歌姫は力強ささえその双眸にたたえながら騎士に告げる。無力ではないと、決して、決してだ。物事すべてに意味があるなんて言い切れないが……。こと今回に至っては意味も理由もあるのだとノーレは思う。いや、信じている。
「――フッ……フハハッ!」
「え、あ、あの、私何かおかしな事を言いました……、か?」
「ハハハッ……、いやなに……改めてノーレどのはノーレどのなりに強いのだと思ってね」
「は、はぁ?」
――騎士は笑う。守るべき存在であると考えていた歌姫はまったくもって逞しい存在だったのだと。
「うむ、それでは私も祈るとしよう。星よ、我が主と友に祝福を……」
「――祝福を」
二人して夜空を見上げ祈りを捧ぐ。どうか守り給え、とひたすら心に念じる。
騎士と歌姫の少女が捧げた祈りに呼応してか、何処か遠くで星が光った様な気がした……。
――彼女達の祈りを受け止めた星は果たして願いを叶えてくれるのだろうか?
うぅっ、土日はやる事多くて他のサイトでの活動も全然だったなぁ……。
ら、来週の休日挽回だ!