番外編・眠れる神の心は何を感じて、何を思うのか?
うぅっ……、職場の人とたこ焼き喰いながら談笑してたら遅くなってしまった……。
(誰……? 誰かやってきたの……?)
天空幻想城、ノレッセアの神であるレイフォミア・エルルンシャードの寝室。その一番奥に安置された巨大な球体……それはレイフォミアの生命を維持する為に異世界の技術を手に入れて作り上げた異質の器。
緑色の液体で満たされたそこに浮かぶ少女こそがレイフォミアである。今、彼女はぼんやりと何者かが我が城に潜り込んだのを知覚していた。しかし、頭がぼんやりとして思考が上手く纏まらない……。
それもそのハズ、この液体は彼女の生命を維持させるのと同時に行動を制限する為のものだ。
どうして神である彼女を監禁まがいの方法で治癒しているのだろうか? それはレイフォミア自身にも解らぬ事。全てはチーフこと、アルフレド・デディロッソが指示をした事である。
彼はもう彼女の手から遠く離れた存在へと変わり果ててしまった。悲しい……と、思う。思うけれども、頭の中はふわふわとまどろみにどっぷり浸かっていてまともな状態ではなかった。何かを考えてもすぐさまふわふわとした忘却に包まれて消えて行く……。
(これは……あの子達が戦っているのね?)
あの子達――――それはレイフォミアを護衛するあの門番兄弟のこと。彼女が眠りに就く200年前にはまだ名前が付いていなかった。しかし、見た目に反して中身は無邪気な心を持つ子供として可愛がっていた――――気がする。
ふわふわ、ゆらゆらと絶えず揺れている様な感覚。身体は一ミリも動いていないのにずっと千鳥足で歩いているみたい。そんな感覚に思考を攫われてしまい、次の瞬間には門番兄弟について考えていたこと全ては忘却の彼方……。
(ああ、誰かが戦っている……これ、は――)
ボコボコと口から大量の空気が溢れ出る。今までこの装置に入って20年間微動だにしなかったのに。
それを見た医療スタッフとも取れそう人員たちが慌てふためく。神は感じ取っていた。自分がこの世界を救う為に力を与えた存在が命を賭けて戦っていることを……。
(――もう、ここまで来てしまったのですか)
不意に、そう不意に。靄が掛かっていた意識が晴れ渡る。まるで自身の半身が返ってきたかの様な気分。
――だが、いくらなんでも早すぎる。確かに彼には破格な能力を授けたとも、一足飛びで世界を塗り替えるようなとんでもないヤツを。
しかし、そうだとしても到着が早過ぎるのだ。ここに至るには艱難辛苦のオンパレードを繰り返し、強くなっていくのを繰り返さなきゃならないのに……。
(――えっ、こ、この力の波動は……)
強烈な、狂おしいまでの衝撃がレイフォミアの心に刻みつけられた。あまりにも唐突に。
(“生命神秘の気”!? どうして――)
その心に鮮烈なまでに叩きつけられた力の波動。それは――。
(アレは私ですらロクに扱えないのに! 何でなのっ!?)
――“生命神秘の気”……。神が悠理に渡したと思われていた力の一端……。
(どうして、どうして、どうしてッ!!)
でも実際はそうではない。心が乱れている事が何よりの証拠。
(どう……し……て……)
疑問を胸に抱き続けながら、彼女の意識は突然暗闇に落ちていく。
――廣瀬悠理とレイフォミア、その両者の関係性は噛み合わないまま……。
ダメだ……眠くて頭が働かないぞ……。
一旦投稿するけど、明日あたりにでも加筆修正しようかな……。
――――ね、寝ます……。