虹とは天高くにて輝くものと知れ・後編
――申し訳ねぇ!
頭が全然働かないので短めにさせてもらいました……。
本当は門番兄弟との決着まで書きたかったんでですけどね……。
『成程、どうやら大変な事になっているらしい』
自身の置かれた状況を客観的に捉える悠理。今まさにアインツが雷を纏った槍を投げつけようとしている所。しかしこの状況――ドゥエンツの嵐に身体を弄ばれながら冷静そのもの。――しかも、今彼は気を失っている。
この事態に対してそんな態度を貫ける状態ではないハズだ。
『さぁ、行けよ俺!』
だがしかし、悠理は肉体の中には居ない。意識は身体の外――――周囲に煌く虹色の羽根。
それは彼の身体、その周囲を高速で飛行し、真空刃の嵐からその身を守っているかの様。
悠理の意思によって羽根は動き、嵐を形成するエネルギーを少しずつ喰らっていく。目に見えて解るものではないが確実に嵐の威力は落ちてきていた。
――何故この様な事になったのか? それは紛れも無く彼の願い故に、だ。
門番兄弟の前で限界を超え気絶した悠理だが、『戦う』と言う意思は決して折れていなかった。なら……後は簡単な話。廣瀬悠理を裏切らない破格の能力……“千変万化”!
かの力は悠理の願いに呼応し、意識が途絶えていても戦う為の術を編み出す。肉体が動かないのであれば代わりの器に意識を移せばいい。そうして生まれた新たな能力、その名を“自由暴食の羽根”。
“生命神秘の気”を高圧縮した虹色の羽根、あらゆるエネルギーを喰い散らかす特性を持つ攻撃的なチカラ。元々、“生命神秘の気”を過剰使用した為に気絶した訳であるが……精神だけになったこの状態であれば、いくら力を使おうが無視できる。勿論、後で肉体にキッチリとツケが回ってくるのだが。
――だがここでひよる様な男ではない。廣瀬悠理はやるったらやる。例えどれ程の命を浪費する事になろうとも。
『来るならきやがれ! 俺が――俺達が相手だぁぁぁッ!』
俺達……そう、ドゥエンツの嵐を喰らって得たエネルギーにより羽根は増殖している。最初は3体だったのが今では8体。全てに悠理の意思が宿っている訳ではないが、万が一羽が破壊されても他の羽に意識を移せるのだがらお得なものだ。
――余りのも暢気な考え方をしているとその瞬間が……来る。
投擲された槍が悠理の身体にぶち当たる――様に見えて羽が一枚、彼と槍の間に挟まった――――直後。
ズガァァァァンッ、と大きな音を立てて雷が落ちてくる。でも悠理は決して取り乱したりはしない。
羽根達に命令を下し、真正面からぶち当たって行く。けれど神の雷とも言えるアインツの鉄槌の前には羽根はあまりにも、小さく、無力。落ちて来たその紫光にあっさりと飲み込まれて消えしまう。
悠理はその神の鉄槌を受け無残にもその命を散らす――。
『――んな訳ねーだろうが!』
落雷によって世界が真っ白に染まっていく中、その色は確かな存在を主張し始めていた。
当たっていない。悠理を葬る為に放たれた一撃は目標を眼前にして停止。丁度三角形の様に並んだ三枚の羽根が、落雷のエネルギーを喰らっているのだ。言わば食事中、新たに得たエネルギーのよって再び羽根が生まれる。
残った5体に加えて新たに10体の羽根は直ぐ様行動を開始。 各々に好き勝手飛び周って雷を喰らい、嵐を蹂躙していく。
それはまるで永遠に終わらない捕食の様な光景……。その力を喰われ、真っ白に染め上げた世界を虹色に塗りつぶされていく様は悪夢と称するべきか? それに悪夢はそこでは終わらない。羽根は増え続けあっと言う間に、エネルギーを喰い尽してしまったのだ。
アインツとドゥエンツがそんな異常な事態に気付くのが遅れるほどに猛スピードで悪夢は完成を見る。
――それは虹色の世界、空間一面が虹色で構成されている。そして、悪夢を悪夢足らしめる由縁がゆっくりと空から降りてくる
『…………』
それは虹色の翼を広げた――魔王。廣瀬悠理と言う名の悪夢の支配者であった……。
ダメだ……疲れてやる気が湧かない……。