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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
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虹とは天高くにて輝くものと知れ・中編

あー、ダメだ……熱くて頭が働かない……。


中途半端でいつもよりもグダグダ&ムチャクチャですが、今回はなにとぞこれでご容赦をお願いしていただきたく……。

(――身体が動かねぇ……)

 時は少し遡って、門番兄弟に『チーフを知っているのか?』と尋ねられたところ。

 強敵が目の前に健在なのにも関わらず、身体は硬直したように動かない上に、今にも悠理の意識は遠のきつつあった。

(そうか、使いすぎたって事か――――命を)

 ――此処に至り、悠理は自身がどうして“生命神秘の気”を操る事が可能なのか?――と言う、考えた様で今まで考えていなかった問題にようやく解を見出だしていた。

 “生命神秘の気”はどんな世界にも必ず存在するエネルギー。しかし、生命に“変質と進化を与える”この能力が、万人の手に渡って良いハズがない。

 故にこの力は一部の限られた者にしか扱う才を与えられず、人々の目に留まる事のない幻のエネルギーとして唯そこに存在している……。

 そんな力を悠理が操れるのは何故か? 他でもない、それが彼の能力だから――――と言ってしまえば話はそこで終わってしまう。だが違う、廣瀬悠理が幻の力を使用できる資格者だとしてもこれはそんな単純なことではない。

 結論から言おう、彼は“生命神秘の気”を扱う度にその命を削っている、と。


 唐突だが最初の事を覚えているだろうか?

 レーレと対峙した時のことだ。最初、悠理の身体から発せられる生命エネルギーの色を虹色だと見抜いたのは他ならぬ彼女……。

 ――だが、忘れてはならない。悠理の生命エネルギーは最初は白……祝福喪失者と同じ色だったと言う事を。

 あれはレーレの思い違いでも、“生命神秘の気”を操る術を知らなかったから――と言う訳でもない。白――――それは虹を形成する為には不必要な色。

 しかしこう考えてみてはどうだろうか?

 ――その白を太陽に例えてみるのは?

 太陽は虹が虹として輝く為に必要不可欠なもの――――水もなくてはならないのだが、その話は次の機会にしておく。

 ――話を纏めよう、悠理は自身の生命エネルギーを媒介……“太陽”と見立て、“生命神秘の気”の存在を照らしている。つまり彼は生命エネルギーを放出し、それを“生命神秘の気”と混ぜ合わせる事で初めてその力を行使できるのだ。

 だから彼は使う度にその寿命を大きく減らしている。大きな力を使った際に良く倒れるのはその反動。だが――だがそれでも話はまだ終わらない。

 生命の変質と進化を司る超常のチカラ、それを自身の命を代価として手綱を握る事は、肉体、精神に関わらず大きくダメージを与え、最終的には“魂”すらも磨耗せしめる。悠理の背中に走るうっすらとしたヒビの様なものはその証。

 こうして力を使う度にその全てが傷つき、次第に壊れ、いつかバラバラに砕け散っていく……。

 今、身体の自由が効かないのはその末路の一端。短時間で限界以上に能力を使用し、大幅に命を削った事に対するツケ。肉体を動かそうとする為の精神が追いつかない。精神を奮い立たせる為の魂は活力不足だ。


(――あれ? 何かやばくねぇか?)

目の前が段々と暗くなっていき、何も見えなくなる。それから数秒後に膨れがある攻撃の気配。

 意識も視界も途絶えていると言うのに感覚だけがやけに鮮明。だから何処から攻撃が仕掛けられるかも明白である。

(――――ッ! グフッ!?)

 予測通り前後左右を特大の衝撃が襲う。ドゥエンツの放った真空刃の嵐は悠理の体をズタズタに切り裂きながら、より大きな嵐となって悠理の身体を宙へ放り投げる。渦巻く嵐に翻弄される姿はさながら一輪の名も無き花。

 強大な力の前にはまるで無意味だとでも様に、その存在を嘲笑い弄ぶ。

(不味い、な……。大きいのが……来る)

 最悪な事に予感は当たっている。今まさにアインツが雷を蓄積させた槍を投擲しようと構えていた。

(あー、こりゃ死ぬかもな……)

 ますます高まる攻撃の予兆に死が脳裏を掠めていく。ぼんやりと、何を恐れる事も無く、何を焦る必要も無く、唯ぼんやりと死を想う。

 死んだら己の魂はどうなるのだろうか? 魂だけは地球に還れるのだろうか?

(俺が死んだら――)

 皆はどう思うのだろうか? ノレッセアに来てからは早4週間――――それなりに多くの人と出会ったが、彼等は自分の死に対してどう思うだろうか?

 悲しむだろうか、それとも何も感じないだろうか。

(それはどっちもやだなぁ……)

 何の反応が無いのも物悲しく、自分の死に心を掻き乱されてほしくないとも想う。

(――俺が死んだら?)

 自分の死に顔をくしゃくしゃに歪ませたレーレやカーニャ達――――を想像したところでハッとする。こんな風にぼうっとしている場合ではないぞ廣瀬悠理!


(――っ!? 俺がやられたらレーレ達が……!)

 最も恐れる悲劇とは自分の死ではなく、己にとって大切な存在の死。少なくとも悠理にとってはそう。

 その最悪の未来を阻止するべく、悠理は行動を起こす為に足掻く。

(動け、動けッ!)

 念じる、或いは呪詛すらも込めて身体の自由を取り戻そうとする。しかし既に肉体は大きすぎるダメージを負っていて、主の命令を訊く事が出来ない。

(クソッ、動け動け動け動け動けッ!)

 ふわり、と何かが動いた気がする。しかし、指一本動かせてはいないと気付き、再び己を奮い立たせる為に足掻く。

(動けぇぇぇぇぇっ!!)

 ヒュッ、シュン、と今度も何かを動かした感覚に襲われるが、やはり肉体は反応を示さない。

(クソッ、動けうご――――ん?)

 シュンシュンシュン、ヒュンヒュンヒュン、シュッシュッシュッ、ヒュッヒュッヒュッ……。

 再び何かを動かしている感覚に気付く。そしてそれはどうやら幻でも無いらしい。

(何かが舞っているのか?)

 相変わらず感覚はあれど、視界も意識も失ったまま――――なのにどうして思考する事が出来ている?

 何故こうも何かを操作している感覚に襲われているのだ?


(この何かを俺が操作している?)

 相変わらず身体は嵐の渦に成されるがまま――――だがちょっと待て。

 ここで悠理は重大な事に気付く、身体の感覚は確かにある。ただ、それを動かせないのも、未だに意識が戻らないのも事実――――のハズなのに……。

(さっき感じてた身体の痛みもない、それに今だって……)

 最初に真空刃の嵐をその身に受けた時は確かに痛覚があった。しかし今は非常に曖昧。

 あれほど強力な力で構成された嵐、今尚悠理の肉体を弄びながら肉体を切り裂いていてもおかしくないのに……それが、ない。

(ま、まさか、俺は――――)

 気付いて、身体を動かそうとする。すると――――シュッ、ヒュンッ!

 確かに思い描いた様に鋭い動きする何か……悠理はそれが何なのか大凡理解しかけて来た。

(今、俺は――)

 ――――肉体の外に居るナニかだ!

――限界です、寝ます。


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