虹とは天高くにて輝くものと知れ・前編
うわー、ダメだぁぁぁ! 頭がぜんっぜん、はたらいてないよぉぉぉぉッ!
でも例の如く投稿はする。そしていつか修正もする。
毎日良い物が書けるとは限らないし、悪いものを覆い隠したって何処かでボロがでるだろうから。
ありのままの自分を見てもらうのも勉強の一つですよね――ぶひぃっ!!
――悠理と門番兄弟――アインツとドゥエンズの戦いはやはり兄弟に分があった。
先程の攻防で悠理は、アインツの槍に宿った祝福を損傷させ、ドゥエンツの祝福で作られた腕を破壊するという戦果を上げた――が、それは一時的なものに過ぎない。何よりも悠理本人がそう痛感している。
さっきは何とか二人を圧倒して見せたが決定的なアドバンテージにはならない……。
「この男――――紛れもない侵入者であるな弟者」
「ああ、確実に目的を成す為に訪れた様だな兄者」
敵対する相手の力量と決して折れない強靭な意志。それらを直に感じた事で兄弟は悠理の存在を認めつつあった。
「――――だが」
「――――しかし」
――それは同時に完全な排除対象として認定されたと言うこと。二人が纏う空気が根こそぎ闘気と言う名の圧力へと変換されていく……。
『我等が居る以上、貴様の命運は尽きた! 見よ、震えよッ、この雄々しき姿を前に!』
溢れんばかりの闘気を放ちながら、兄弟はその身に秘められた真の力を解放する。
先ずはアインツ、彼の周囲に漂う空気がバチバチと音を立て爆ぜる。音の正体は紫の光、天空から地上へ向けて落とされる神の鉄槌にして自然が振るう絶対的な猛威――――名を雷。
紫色に輝きバチバチと空気を爆ぜらせながら、雷はアインツの背後に結集し、幾つかの球体となって浮遊する。それはさながら雷神の雷太鼓……。これぞ彼の祝福、門番としての本領・本性。
――汝は神の鉄槌を借りて愚者に裁きを与える者なれば。
そして兄がそこまでの変化を遂げたのならば弟であるドゥエンツもまた然り。彼を包むように風が渦巻く。纏いし風は徐々に回転を早め、やがて真空の刃となり、嵐となる。
嵐は螺旋運動を続けながら四つに別れ、ドゥエンツの背後へと移動した。成程、先程の祝福の腕は空気をエネルギーと共に圧縮したものだったらしい。全く同じ要領で今、新たな腕が作られた訳だ。
ただし今度は、触れたもの全てをミキサーにかけて粉微塵に粉砕する嵐の腕だが。
兄が雷神ならば、弟はまさに風神――阿修羅の風神!
――汝は人の手にあまり、か弱き者達を飲み込む災害そのものなれば。
「我等兄弟に――――」
「――――倒せぬ敵なし!」
か弱き一人の人間の前に雷神、風神が聳え立つ。この時点で既に今まで悠理が戦った中で最強の敵。カーネスがあの時、全力を持って挑んでいたのか解らないが、もうその域は軽く超えている。
「――――――――スゥゥゥ」
――立ちはだかる強敵を前にして悠理は深く息を吸う。足りない、どれほど吸っても足りないという感覚に襲われ、何度も深呼吸を繰り返す。何度も、何度も……。
「むっ、この姿を前にして深呼吸とは」
「剛毅な男よ――――ん?」
「――俺はお前等に恨みなんてねぇんだ……でもな、先に喧嘩を売ってきたのはチーフって野郎だ。テメェ等の大将だ……だから――――」
兄弟は暫しその光景に対し呆気に取られていた様だが、ドゥエンツが何かに気づいた様に繭を潜めた。 それは微かな呟き、誰に宣言する訳でも聴かせる訳でもない唯の呟き。
対峙する雷神の雷鳴と、風神の風切音の前では掻き消されて当然の小さな雑音でしかない。
「何をぶつぶつと――」
「待て兄者、貴様……アルフレド様を知っているのか?」
しかし、その雑音には聞き捨てならない名があった。アインツは気付かなかった様だが、ドゥエンツは兄よりも悠理に対して警戒心を強く抱いていた。己の祝福の一端である圧縮空気の腕を破った事に対する敬意からである。
そんな警戒すべき者の言葉に些細な疑問を抱き、故に問う。これから葬る相手だが、現在彼等の先導者たる男の名を出した理由は尋ねねばならない。疑問を解消する為にも。
「俺は……負けね…………たら…………から――――」
だが返って来たのは問いに関係ない何かしら。声は先程よりも更に小さくなり、注意深く意識を向けていたドゥエンツにもその全ては聞き取れなかった。ただ『負けられない』、その一言だけはやけにハッキリ聞こえ、何故だか彼の耳に残った。そこにはとてつもない力がありったけ込められている様な……。
「おい、質問に答えぬか!」
「――兄者、こやつ気絶しおった」
反応の無い悠理にアインツは声を荒げるが、それをドゥエンツは手で待ったをかける。
穏やかな眼差しで悠理をじっと見つめる弟に兄も釣られてその姿を見やった。
――気絶。グランディアーレを杖代わりにして立ったまま。何があっても決して負けないと言う意思を全神経に張り巡らせたまま、気絶……。
「立ったまま気絶とは……その意気は良し。だが――」
「――侵入者には鉄槌を!」
どこか残念そうな声色。如何にその姿に敬意を覚えても敵として現れ者に容赦はしない。
それが門番たる兄弟の矜持にして意地。
「安心せい、苦しまぬよう一瞬で楽にしてやる」
「お主の協力者も直ぐに後を追わせてやる。淋しがる必要は無いぞ?」
アインツの雷太鼓が輝き、放電を放つ。迸る雷は双頭槍の先端へと集まり紫の光を宿す。
ドゥエンツの真空嵐の腕が唸りを上げ、竜頭の如き動きを見せながらミキサーの口が一斉に唸りを上げて悠理へと向けられる。
「――――――――」
対する悠理は絶対絶命。何の反応もする事が出来ない。そしてその隙を見逃すほど門番達は甘くはない。
「――ではさらばだ」
「――名も知らぬ強き者よ」
二人は動き、悠理は動けない。
そうして一撃が放たれる。回避出来ぬ死の一撃が。
『嵐にてその身を翻弄され、雷の前にて汝の罪と共にその魂までも貫かれるが良い!』
ドゥエンツの四本腕がその背後から射出され、悠理の四方から襲い掛かる、気絶して居る彼に回避の術は無く、その身を切り刻まれる。しかしそれで終わるはずも無い。
放たれた四つの嵐は一つの巨大な嵐となってその場でうねり、暴れる。巻き込まれた悠理の身体はその渦に捕まり宙へ投げ出され、嵐に翻弄されるがままだ。
この状態で既に悠理は瀕死の状態。だがまだ終わらない。アインツの鉄槌がまだ残っている。彼は槍の先端に雷を蓄積させ、それを悠理目掛けて投擲した!
弓矢の様に高速で真っ直ぐ飛んでいく槍はドゥエンツの発生させた嵐をあっさり突き破り……。
――実にあっさりと目標に突き刺さった。
ドォォンッ! と、強烈な雷が悠理の身体に激しくぶち当たり、雷鳴とも爆発音とも取れる音を鳴り響かせ、周囲を真っ白に染める。
「終わったな弟者よ」
数十秒に渡りまだ止まらぬ落雷の中、勝負は終わったとばかりにアインツは背を向ける。
同じくドゥエンツも背を向け――。
「いや、まだ協力者が残っているぞ兄――」
戦いの終わりに若干気を緩めた兄を叱責しようとするドゥエンツだが……。
――何かがおかしいと気付く。真っ白に染まっていた世界にどうも別の色が混ざり始めてきている。そして爆発音の中にも別の音が聞こえ始めていた。
「どうした、弟――ッ、この虹の光は!?」
弟の妙な反応にふと後ろを向けばそこにあったのは異変。真っ白に染まったハズの世界は虹色に侵食されている。未だに降り注ぎ続けている落雷も虹に取り込まれようとしていた。
「まさか、奴はまだ生きて――っ!」
そうしてドゥエンツは異変が虹色の何かだけでないと知る。先程彼は何か音を聴いた。それが幻聴でないと知ったのはたった今。――何かが高速で駆け抜ける音……。いや、その姿も微かだが見える。とても小さな――小さな大群が宙を駆け回っている。
そしてそれが次々と雷へ突撃し、虹色へと侵食させている元凶だと悟るが――――もう遅い。
――真っ白の世界は既に虹の世界へと生まれ変わったのだから……。
「…………」
――廣瀬悠理と言う名の支配者が君臨する世界に!
次回は説明回のヨ・カ・ン!