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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
151/3919

天空に漂う城にその存在を刻め!

ぬぅーん、今日は調子が出ない日だったらしく、分割になってしまったぞ。

決して、今更衝動買いしたシフトトライドロンで遊んでた訳じゃないからな!

「くっ、やっぱ強ぇ、なっ!」

 背後から繰り出された一撃を横に飛んで回避――したのも束の間、反対側からも繰り出される十文字槍。

 悠理はグランディアーレでそれを受け止め、勢いを利用して後方へ飛ぶ。兄弟との距離は僅か6m、安全圏とは言い難いが一先ず距離を稼ぐ事に成功した。

 ――悠理が門番兄弟と戦闘に入ってから約15分程度。天空幻想城内を駆け回って、二人を寝室から遠ざける作戦は成功。レディ達がどうなっているか心配ではある、だが今は信じて彼も役目を果たすのみ。

「おのれ、ちょこまかと!」

「しかし、我等兄弟を前にして中々良い動きをする。貴様、何者!」

「へっ、言ったろ! 俺は侵入者だってな!」

 気が付くとやけに広い空間に辿り着いていた。円形のドーム―-いや、ホールと称する方が適切かも知れない。廊下よりも幅広いそんな戦場(ぶたい)で悠理は追いすがって来た門番達と対峙する。

 機動力は悠理の方がやや上、そのお陰で15分間も追い駆けっこしたのにも関わらず、ほぼダメージはゼロ。――ただし、疲労は大分溜まってきている。

 攻撃力は完全に向こう側に分がある。振るう一撃一撃がまさに一撃必殺。見た目通りの武人、想像以上の攻撃のキレとスピード。そして何より厄介なのはコンビネーションプレイ……。

 何度か相手の隙を縫ってこちらも攻めようとしたが……隙が無い。片方がピンチになればすぐさまフォローが飛んできて、再びこちらが攻め込まれる。決定打の不足が痛いところ。


「ぬぅ、まだ戯れ言を――」

「いや兄者、存外本当の事やも知れぬ。若い衆にはこの男は止められまい」

「むっ、弟者よ。ならばこの男がこの幻想城へ侵入できた理由は何とする」

「ふむ、確かに謎だな兄者よ。この者は強くとも結界を超える程ではなく、結界が破壊された気配もない」

 ――不味い、相手がこちらを分析し始めた。今までは感情に任せて悠理を追ってきた兄弟が冷静になり始めた証拠。

「――――となれば、だ」

「うむ、協力者が居る、と言う事になる。ルカ様風に言うのなら――イレギュラー、と言った存在が、な」

(やっぱり、ルカってのは召喚された地球人か?)

 ルカ、と呼ばれる存在の情報が思わぬ状況から手に入るが、今はそれを精査する暇はない。

 敵が冷静さを取り戻したと言うことはつまり――。

「成程、だとするとこやつは――――囮!」

 ――悠理がこうして二人と対峙している意味も理由も勘付かれる、と言うこと。

「本命は寝室の方か! 行け兄者! ここは――――」

「おいおい、そう簡単に行かせると思ってんのか?」

 目の前の自分を無視し、門番としての本来の役目に立ち返ろうとする門番兄弟に待ったをかける。

 身体から虹の光を溢れさせて相手の気を引く。


「むっ?」

「何だ、この虹色の光は――」

「悪いがもう少し付き合ってくれよ。じゃないと――――」

 目論見通り、悠理へ釘付けになる二人。ここからは彼も死に物狂いで戦わねばならない。

 今までの逃走劇には自分の命しか天秤に乗っていなかったから、どこか気楽な気持ちでいた。だが今度は違う。門番兄弟を行かせると言う事は天秤にレーレ達の命も乗っかるということ。

「――囮の面目が立たないんでなぁッ!」

 ――それだけは阻止せねばならない。その一心で悠理は自分が想像したよりも爆発的な速度で一気にアインツへと接近した。

「グッ!?」

 予測を遥かに超えたスピードで突っ込んでくる悠理に、一瞬だけ反応が遅れるアインツ。槍で受け止めたものの、覚悟を決めた悠理の一撃は重く、その気迫と衝撃に堪らず後方へ弾き飛ばされてしまう。悠理は追撃をかけようとするが――。

「兄者っ、おのれぇい!」

 同じく反応が遅れてしまったドゥエンツだが、すかさず兄の援護を行う為に祝福を発動させる。その巨体――背中から半透明の腕が現れ始め、あっと言う間にドゥエンツの腕が四本増え、合計六本となった。その出で立ちはまさに阿修羅。


「――――祝福か!」

「喰らえぇぇぇぇいっ!」

「チィッ……!」

 突進をかけながら増やした四本の腕で殴りかかってくるドゥエンツに対し、悠理はありったけの虹の光をぶつける。祝福の力で増やされた腕は実体はあっても血肉で構成されたモノではない。――であるなら、構成するエネルギーに“自由”を与えよう!

「ムッ、こやつ祝福殺しか!? ……だが!」

 虹の光を浴びた腕は見る見る内に空中で解ける――――いや、それも完全ではない。エネルギーの密度が濃いのかその全てを分解できていない。四本中二本は何とか――しかし、もう二本は残っており変わらず悠理目掛けて振り下ろされている!

「――盾よ!」

 精霊剣リバティーアを掲げ、虹の盾を形成。その攻撃を何とか受け止めるが――。

「我を忘れたかぁっ!」

 アインツが叫びながら槍を振りかざして飛び掛ってくる!

「――刃よ!」

 こちらには粉砕剣グランディアーレを思いっきり叩き付けた。全身に響きわたる衝撃に筋肉が、骨格が悲鳴を上げるが負けるものかと左腕を肥大化させ、これに応戦する。

『ヌゥゥゥゥンッ!』

 兄弟は悠理の防御を突破せんと更に力を込め、腕を押し出していく。

「ハァァァァァァッ! セイヤァァァァァァッ!!」

 しかし悠理は怯まない。それ所か彼の力を象徴する虹の輝きは更に強まり、次第に兄弟の腕を押し返していき――――遂には逆に二人を弾き飛ばしたのだ!


「む、むぅ、この剣……我が槍の祝福を」

「ぬ、ぬぅ、この盾……我が祝福の腕を」

「――――切り裂きおった!」

「――――喰らいおった!」

 彼等が驚愕と共に吐き出した言葉の通り、アインツの槍に組み込まれた精霊石はその輝きを曇らせ機能不全を起こし、ドゥエンツが祝福によって生やした腕は拳から肘までが消失していたのだった。

 前者はグランディアーレの力によって、後者は虹の盾の新技によってだ。盾は攻撃を防いだのではない、喰らったのだ。盾を大きな顎の形へと変え、腕を形成するエネルギーを丸ごと包みこむ。この時、盾の顎には大きな牙が付いていて、それが対象のエネルギーに食い込む事で“自由を与える”効果をより深く浸透させ、威力を高める結果となったのだった。

 ――確実に進化を重ねている。エミリー戦では肉体の強化を最優先としたが、今回は“生命神秘の気”を今以上に使いこなす事が必要なのだ。この戦いを制する為にも……。

「ゼェ……ハッ……ゼー……」

 何とか二人を圧倒したが悠理の消耗は激しい。全身で酸素を欲して居るかのように上下に激しく揺れる身体……。いくら息を吸い込んでも決して楽にはならない。何かが、何かがもう決定的におかしくなっている。

 身体の不調……、もっと悪い言い方で機能不全。もう、廣瀬悠理の身体は限界をとっくに超えているのだ。でも――――。

(まだだ、まだ終わってねぇ……!)

 ――そうだ、終わっていない。この二人を打倒してレーレ達と合流しなければならないのだから。

 悠理は苦しそうな呼吸を繰り返しながらも、眼前で腕組をする門番達を睨み据えた。

 ――お前達に勝つ! そう揺ぎ無い意思を込めて……。

次回、“生命神秘の気”の力が加速する!

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