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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
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剣と鎧と自由の意味

「良いねぇ! 盛り上がって来たぜ!」

 視界に広がる景色を目に焼き付ける。ここが戦場だと言うことを忘れない為に。

 傷ついた住民を見ても心は乱れない。それどころか――――不謹慎だと思われるかも知れないが。

 ――廣瀬悠理は嬉しかった。傷を負った彼等は街を守る為に戦ったのだと解るから。ここに居る皆は力には屈さなかった。街の思い出を破壊されて悲しみ、怒り、誇りを守る為に戦う決断をした。

 そんな彼等をひたすら賞賛し、尊敬する。何故なら、自分も彼等の様な生き方を望んでいるから。

 現代社会では歯を食いしばって必死に生きる者を嘲笑う輩が居る。勿論、暖かい声援を送ってくれる者だって居るが。

 悠理は戦いのある世界に生まれたかった、と何度も、今でも思う。

 当たり前の様に争いがあって、日々を生きていくのもやっと……そんな世界に生きたい、と。

 それならきっと笑われない、唯唯我武者羅に、精一杯生きる事が出来るかも知れない。

 ――この世界で自分は願いを叶えられるだろうか? 存在するのではなく、生きていると、胸を張って言える日が来るだろうか?

 その為に――――今こそ戦おう。


「貴様、何者だ!」

 女騎士や白ずくめが動揺しているのが解る。この集団は何だ? この街の警備兵は全員気絶させ拘束してある。彼等が唯一の戦力と呼べるものだったのではないか?

 事前に調べた情報にはない、未知の脅威。得体が知れないだけに慎重さをきするべきだ。

「俺は自由を何より愛する漢、ミスターフリーダム! スルハの職人によって産み出された鎧達の魂の叫びに応え、助太刀させてもらう!」

 対する悠理は臆する事無く大声で存在を名乗りあげる。彼の応答に女騎士達が怪訝な表情を浮かべた。

 名のある傭兵でも戦士でもなんでもない、唯、自由を愛する男、だと?

 そんな男が何をしに来たのだ、この街を守るだと? そんな疑問に一瞬、彼等は思考を絡め取られた。

 明らかな隙だ、それは。この好機を悠理は逃さない。

「――行くぞぉぉぉぉぉぉぉッ!」

 腹の底から、ありったけの勇気を込めて、叫ぶ。鋼の魂を強く打ち奮わせ鼓舞する力となれ、と願いながら。

『オォォォォォォォォォォォォォッッ!』

 願いが届いたのか、鋼達が叫びに呼応し駆け出す。『街を守りたい』、己が手で望みを叶えるべく白ずくめと交戦状態に入る。


「くっ、このっ!」

 得体の知れない集団に焦りつつも、いつも通りに剣を振るう白ずくめ。

 対するモブアーマーは自身の剣で受け止め、弾き返す――――のだが。

『うわぁっ、う、腕が取れちゃった!』

 間接部分のつなぎ目に問題があったのか、勢いに負けて左腕が転がる。

 勿論、中は空洞、誰も入っては居ない。彼等は精霊石を中心として、鎧の各所に書かれた紋様を媒介に命令を送り身体を動かしている。

 この紋様は本来精霊石の効果を高める役割がある。現在は身体を動かす為の力を送る中継地点と言う訳だ。

「だ、団長! こいつら中に人が居ません! う――うわぁぁぁぁッ!」

『よいしょー!』

 相手が怯んだ隙にモブアーマーが接近し、そのまま片手で白ずくめを張り手で吹き飛ばす。

 その力は単純な物理的衝撃では収まらない、祝福の力を利用しての攻撃だ。白ずくめは何かの屋台に突っ込んで意識を失っていた。

「これは守る為の戦いだ! 殺すなよ!」

 恐らく、この戦いで彼等が人を殺めることは無いと思うが、念には念を、だ。

『解っておりますミスター!』

 吹き飛んだ腕を回収しつつモブアーマーが頷いた。他の鎧達も腕を掲げたりして了承の意を示している。


「さて連中はモブアーマーズに任せて――」

 前を向く、黄金騎士と女騎士の一騎打ち。

 状況はゴルドの不利、如何せん相手の武器が強力過ぎる。

 負けじと攻撃を繰り出すが、強力な武器は防御手段としても優秀だ。尽くを剣で防がれている。

「俺達はゴルドの加勢だ」

 スラリと鞘から剣を抜く、地球で言うところのグラディウスに近い形状、ゴルドから借り受けた精霊石の剣だ。

『了解ですミスター!』

 白銀剣士シルバが長剣を引き抜き。

『無茶すんなよミスター!』

 青銅戦士ブロンも斧を構えた。

 二人(二体)ともやる気は十分。あとは戦って勝利するのみ。

「応、お前等もな!」

 ――俺はちゃんと戦えるだろうか? この剣で道を切り開けるのだろうか。

 手にかかる剣の重みを噛み締めつつ、迷いを振り切ってゴルドの元へ駆けて行く。


――――――――

――――――

――――


「おっさんは無事かゴルド?」

 辿り着けたのは悠理だけであった。途中、白ずくめの妨害が入った為、シルバとブロンが対処にあたっている。今は後方で50を超える敵と大立ち回りを演じていた。

『ええ、間一髪でした……。ヤツの剣は得体が知れません、お気をつけ下さいミスター』

 そう言うゴルドはボロボロであった。幾度と無く切り裂かれ、ぶつかり合った為か、鎧も盾もランスも傷だらけで、出会った当初の美麗さはない。

 けれども、悠理はこちらの方が美しいと思う。誰かを守る為に戦うと言うのはこういう事だ。

 それこそが、騎士として名に恥じない勲章だろう。

「任せろ、借りた剣も良い感じだしな」

 手には淡い光を放つ精霊石のグラディウス。ここに辿り着くまでの間に()()()()の使い方は見つけた。やれるはずだ――柄を強く握り締め正道に構える。

「――ゴルド、産みの親を守ってやれ」

『……了解致しました』

 ――私も共に戦います! 出掛けた言葉を飲み込んで一歩下がり、女騎士との戦いで疲労した主の傍に控えた。

 今のぶつかり合いで満身創痍の自分ではミスターの足でまといだ。冷静にそう判断し、後を自由の使者と名乗った男に託す。

 実戦は初めてだと言っていたのが不安ではあるが、最早信じて送り出すより他はない。


「美しいお嬢さんお名前は?」

 何かの参考になるかと思って、学生時代授業でやった剣道の足運びを思い出しながらジリジリと近づく。

 素人が戦闘のプロ相手に自分から突っ込んで行くのは愚の骨頂。理解しつつもあえて実行する。

「――ふざけているのか貴様?」

 女騎士が不機嫌そうに殺気を漲らせた。構えはど素人、ろくに訓練もしていない。身体もそうだ、鍛錬をしたことも無い一般人のそれ。

 なのにいっちょ前に自分に対し戦いを挑もうという蛮勇さ。愚かにも程がある。

 そして――――何より気に食わないのは……。

「おいおい、俺は名乗ったのに自分は名乗らないってのか?」

 余裕を含んだその態度、だ。

「――ファルール・クレンティアだ……!」

 ――何故だ、何故そんなにも堂々としていられる? どうして私はこんなにも苛々しているのだ……。

 まるで――自分の方が追い詰められている様な錯覚を抱く。

「じゃあ、ファルさん。お願いが一つある――――この街から手を引け」

 突然の命令口調、それに伴って眼前の男から強い光が迸る。

 いつか、子供の頃に故郷で家族と共に見た―――――虹の色。

「――――ッ!」

 とっさに剣を構える。危険だ()()は。

 今までにも何度か感じたことのある感覚……。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 これは、これはまさか……!

(コルヴェイ王ッ……!?)

 憎き男、圧倒的な強さで瞬く間に故郷を燃やし、その恐怖で自分を従わせた男……。

 何故か、相対する男とヤツが重なって見えた。そんなモノは錯覚に過ぎない……が。

「――――ふざけるな、ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 刻み込まれた恐怖は錯覚に過ぎない幻を現実のものと誤認させた。

 彼女にとってのトラウマ、簡単には癒えるハズもない傷が狂気を孕ませ膨れ上がり――――。

「死ねぇぇぇぇぇッ! コルヴェイィィィィィィッッッ!!」

 剣の能力を完全解放した。

 目の前の恐怖を――――拭い去る為に……。

あれ、これ次回で終わるかな?


次回、悠理は相手の剣をどう攻略するのか?


精霊石のグラディウスの彼なりの使い方とは?


お楽しみにー!

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