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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
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飛び込み参加とデンジャラスゾーン

お、おー、分割を覚悟したんだけど間に合ったみたい?


 悠理が謎の女性と会っている頃。

 屋敷の影から二人を凝視する二つの影アリ。

『クッソ~、何か楽しそうに会話しやがって~!』

 一つはレーレ。悠理達の視界と気配察知から逃れる為に十分に距離はとってある。けれどその性で二人が何を話しているかは聞き取れない。でも楽しそうな気配は何となく伝わってきて、レーレは謎の女性に嫉妬心を燃やす。

「――ねぇ、どうすんのよ?」

 もう一つはカーニャであった。しかし彼女はレーレの姿を見かけたから付いて来たのであって、悠理達を覗きに来た訳ではないと伝えておく。

 ――そして実はこの時、本来なら悠理が謎の女性用に仕掛けたセンサー内にレーレ達も入っていたのだが……。今の所はそれが発動した形跡はなく、悠理もそちらに気づいた節はない。

 それは何故か? 答えはそう遠くない内に知ることが出来るだろう……。

『決まってんだろ。大人しく待ってられるか、付いていくさ』

 迷いなく告げるレーレの顔は真剣そのもの。揺ぎ無い意思の元に彼女が行動を起こした事が伺える。決して、悠理と見知らぬ女が二人っきりになるのが嫌だったと言う妬みからではないとも。ああ、決して。

「でも……アタシ達が付いて行っても役に立たないんじゃ……」

 カーニャの意見は正鵠を射ている。完全武装を求められた悠理のことを考えれば、これから二人がする行動、向かう先には確実に戦いの気配……。その渦中に飛び込んだとて自分達に何が出来ようか?

 祝福を持たぬカーニャ、戦う力を失った元死神のレーレ。

 歯に衣着せぬ言い方を用いるならば――――足手まとい。


『だったらお前は帰りな。役立たずが減る分には問題ねぇだろ』

 されど、自分が足を引っ張る存在に成り得るとしても、彼女が今更退くわけもない。ここで退く位なら元より始めから後を付けなかっただろうとも。

「――――嫌、絶対付いてくわ」

 そしてそれはカーニャも同じ。彼女にも引けない理由がある。レーレが付いて行くのなら、自分も付いて行く。口には決して出さないが彼女はそう決めていた。

 ――レーレを守らなければ。彼女が傷付けば悠理もまた傷つき悲しむ、それはもう深く、深く。

 嫌だそれは。そんな彼は見たくない。悠理をそんな思いにさせたりなんかするものか。カーニャの胸の奥深く、言葉に出来ぬ熱いモノが渦巻き体を突き動かしている。

 カーネスとの戦い、そしてレーレの復活を経て彼女は彼女なりに無力を痛感していた。だからもう嫌なのだ。何も出来ないのは、何もしないでいるのには。故に動かねば、悠理もレーレも守る為に……。

『ヘッ、そうかい……ってあーッ!』

 言葉にしなくとも並々ならぬカーニャの想いは確かに伝わったのか、レーレは何処か嬉しそうに笑ったが――――その表情も一瞬で消え失せた。

「ど、どうしたのよ!」

 突然の叫び声にギョッとする。隠れていることを忘れていなかったのだろう、驚きの叫びはそれほど大きなボリュームではなく、悠理達に気付かれる事もない。

『あ、あいつら手ぇ握ってんぞ!』

「別にそんなの良いじゃ――――が、ガッチリ握ってるわね……」

 怒りでプルプルと震えるレーレ。その指摘に当初は『別に良いんじゃない?』とカーニャは余裕の構え。けれど実際にその姿を遠目から確認するば、そんな余裕など消える。

 突然だが、二人とも実に視力がいい。だから二人の位置からでも悠理達の動きはハッキリと視認可能だ。

 ――なので、向かい合った悠理と謎の女性が互いの両手を指と指をも絡ませ、ガッチリに繋ぎあっているのもバッチリ確認出来たとも。

 レーレは『羨ましいことしやがって!』と言いたげで、カーニャは『な、何か恋人同士みたいね』とドキドキしながらその光景に釘付けであった。


『――って、そうか! アイツ等何処かへ飛ぶ気だ!!』

 ふと、正気に戻ったレーレがこの状況。二人の行為の意味を悟り慌てる。

「えぇっ!? じゃあどうすんのよ!」

 同じくカーニャも伝えられた事実に戸惑うばかりだ。

 ――だが。

『決まってんだろ?』

「まさか――」

 そうだ、既に何をするべきかなど決まっているではないか。

 付いて行くと決めているのだから、悩む必要など――。

『突っ込むんだよぉぉぉぉッ!』

 ――――無い!

「ちょ、ちょっと――えーい、もうどうにでもなりなさいよ!」

 意気揚々と物陰から猛ダッシュで飛び出したレーレをカーニャも慌てて追い駆けていく。

 前方を確認すると悠理達の姿が徐々に消えかかっている。

『ユーリィィィィッ!』

「ユーリィィィィッ!!」

 二人は叫びつつも全力ダッシュに加えて大ジャンプ! 勿論、悠理に抱きつけるように両腕は確りと広げて。

「……あ」

 ――謎の女性が『しまった』と口を開けた。このタイミングで乱入者が現れるなんて想定外。

 そしてそれはこの男も同じ。

「――えっ? あ、ちょっ、突っ込んでく――――ぶげっ!?」

 飛び込んで来る二人の姿を見て唖然――とする余裕も無く、レーレが首に、カーニャが腰目掛けて抱きつくる形で突っ込まれる。無論、両手が塞がっていた為にガード出来ず、回避行動など勿論不可能。

 まともに二人のタックルを喰らった悠理が真横に吹っ飛び、手を繋いでいた女性もそれに巻き込まれて共に吹っ飛ぶ。

 そうして……、宙に投げ出された不恰好な状態のまま、悠理達は地面に激突する事なく音も立てずに姿を消した。

 彼等が何処へ向けて飛んで行ったのか? それは神のみぞ知る――――と言うヤツだ。


――――――

――――

――


 ――悠理が謎の女性と空間転移を行おうとした矢先、そこへ割り込んだカーニャとレーレ……。

 一行は無事全員が何処か同じ場所へ転移を成功させた様である。

「いってて……」

『カーニャ、無事か?』

「一応……皆大丈夫みたいね」

「――足手まといが増えてしまいましたね」

 全員が仲良く倒れている中で、真っ先に起き上がる謎の女性。飛び込み参加の二人を『足手まとい』と称するが、そこには怒りも侮蔑も込められてはいない。感情を感じさせない話方と仮面の性で正確に『そうだ』とは言い切れないが、少なくとも当事者の二人にはそう思えたのだった。

「お前等――――やけにすんなり送り出したと思ったら……」

『ハッハッハッ、油断しやがったな!』

「アンタだけに面倒ごとを背負わせる訳にはいかないからね」

「――――はぁ、どうします?」

「戻ってる余裕はありません。このまま進みましょう」

 こんな無茶をしてまで付いて来た二人を悠理は咎める気にはならず、溜息を付きながら謎の女性へと意見を求めるが任務続行の様だ。


「解りました。それより――此処は何処なんです? やけに空調が効いてて快適な感じがしますけど……」

 これはかなり正確な見立てだが、ここへはそう何度も出入り可能ではない場所なんじゃないか? 彼女が言う『余裕がない』とはその事を指しているのだろう。

 それにこれは悠理だけが感じている事であるが――――ここはノレッセアであってもノレッセアの技術で作られた場所ではない気がする。

 見渡すと一面白い壁、近づいてみるとまるで回路の様に複雑で、キラキラとした半透明の模様が所せまましと刻まれている。先程、悠理は『空調が効いている』と発言した。現代人ならば何てことはない、これが人の手が加わった空気である事は明白。ノレッセアに来て3週間程度でも、これは行き過ぎていると断言しよう。

 何故って――――これは()()だ。中世程度の文明と祝福で成り立つこのノレッセアには不釣合い。いくら何でも一気に高度化し過ぎている……ここは一体……。

『――――おいおい、冗談だろ?』

「どうしたのレーレ?」

 悠理がそんな風に疑問を抱いていると、レーレが周囲を見て呆然と呟く。『夢でも見てんのか?』と言わんばかりに目をぱちくりさせている彼女は何だか新鮮な気がした。――――それがある意味、一種の危険を表しているという事にカーニャは気付けていないみたいだが。


『なぁアンタ――――』

「レディ。レディ・ミステリアです」

 ここで初めて彼女が名乗る――――が、結局はその正体は秘密であるらしい。

『じゃあレディ、アンタはどうしてここに侵入できた? 俺等死神が20年前強行突破して以来、ここには部外者が入り込めない強力な結界が張られていたハズだぜ?』

 遠慮せずに最大の威嚇を込めてレディを睨み付けるレーレ。改めて目の前に居る存在が謎過ぎて警戒心が遅れてやってきた様な錯覚さえ感じるほどに。

 一方、この発言でカーニャもようやく事態の深刻さを飲み込む。ここが何処であるかは見当が付いていないのは悠理も同じだが、複数の死神が攻め込む様なヤバイ場所であるのは間違いない。

「それが私の能力だからですよ」

 レーレの威嚇にも動じず、レディは彼女の問いにシンプルな答えを返してみせた。

 しかしそれでは、その答えではレーレは満足できる訳がなく――。

『――ユーリに何をさせる気だ?』

 ――より一層彼女の警戒を強めるだけであった。

 だがやはりレディは落ち着いてこう答える。

「貴女方が置かれている状況を打開する切り札――――ここにはそれがあります」

『――――まさか……!』

「…………」

 ハッとした表情のレーレだが、レディは解っているのならそれ以上は問答不要とばかりに口を噤む。


『おい、アンタは――――』

「ちょ、ちょっと待ちなさい! レーレは此処が何処なのか知ってるのね?」

 尚もレディに問いかけようとするレーレをカーニャが慌てて止めた。二人の会話が何を意味するか全く解らない。何しろ彼女達が知っている情報を、カーニャと悠理は持ち得ないのだから。

『ああ、この女とんでもないところに連れて来やがった』

「そうなのか?」

 珍しく、汗と焦りを表情一杯に浮かべるレーレの姿に、成り行きを静かに見守っていた悠理もここが頃合かと話に加わる。レーレが一度目を瞑って意を決したように口を開く。その間僅か二秒。

『ユーリ、此処はな――――』

「――――天空幻想城」

 悠理へと伝え様とした言葉をレディが無理矢理引き継ぐ。その事にレーレが抗議する間もなく決定的な情報が悠理とカーニャに明かされた。

「この世界の神、レイフォミア・エルルンシャードの居城ですよ。つまり――」

 ――敵対しているチーフのホームグラウンドですね。

 

さぁ、一応の超展開!

いきなり神様の陣地に飛び込んでどうする悠理!

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