二人はどこへランデブー?
うーむ、新しく登録したサイトのガイドライン見てたら遅くなってしまった……。
――しまった、超展開シーンまで書けなかったではないか!
「――――ってて、アイツ等容赦なくボコボコにしやがって……」
あの会議の後、悠理はそれはもう容赦なく怒られ、叩かれ、もう二度と勝手な真似はしないようにと釘をさされ、『俺は自由の使者だから断る!』と余計なことを言って再び説教へ……。
そんな事を数回繰り返している内にもうすっかり夜。悠理は謎の女性に言われた通り、完全武装で屋敷の裏側で待機中である。
(しかし何だかんだで送り出してくれるのはなんつーか……)
――嬉しいものだと思う。あの説教だって悠理の身を案じてくれていたからこそ。
そう釘も刺しつつも、彼女達はこちらの意思を尊重してくれた。廣瀬悠理が自由でいる為にはそうした誰かの支えが時に必要になるのだ。
自由だからと止まり木が必要ないと言う訳ではないのだから。
「……へへっ」
「――――何か良いことでもありましたか?」
皆の優しさに感謝すると思わず笑みが零れたと同時、背後から待ち人の声。スッと、或いはフッと、全く前兆もなく急に現れた。佇んでいた。存在していた。
悠理は念の為に半径30mへ“生命神秘の気”をばら撒き、センサーの様に張り巡らせていたが、全く反応せず……。間違いなく突然そこへピンポイントで転移しているとみて間違いはなさそうだ。
「お待たせしました廣瀬さん」
「いえそれほど待ってま――――せんよ?」
「? どうかしましたか?」
声の方へ振り返った悠理は首を傾げる事になった。そこに居たのは黒髪セミロングの女性。
顔は黒い面をつけていて確認できない。面は頬にある白い肉球マークと目の部分が白で丸く塗られているのが特徴的。何となく少し抜けた――――そう、ゆるキャラ的デザイン。
だが抜けていると言えば、それは面よりも……。
「あの――――随分セクシーな御格好なんですが……それは……」
――彼女の格好であった。セクシーと褒め称えたその姿はピンク色のフリフリネグリジェ一枚のみ。
雰囲気からして大人の女性と思っていたが、その身体は未成熟と称していいもの。胸は小振りで、体躯は標準的だがやけにほっそりとしている。
しかしそれが返ってミステリアスな雰囲気を醸し出し、顔が隠れていることもあり想像力を掻き立ててくる。無意識系子悪魔と、悠理は心の中で褒めちぎって新ジャンルとして認定した。
「……あら?」
(て、天然?)
女性は恥ずかしがる素振りもなく、慌てる訳でもなく首を傾げた。どうも部屋でくつろいでてたら着替えるのを忘れてそのままの格好で来てしまった……そんな感じだ。
「申し訳ありません、お見苦しいモノを……」
丁寧に頭を下げて謝罪――――するが、彼女は気付いていない。ネグリジェが大きいのか、使い込んで伸びていたのかは解らないが……。
「大変眼福です!」
悠理は満面の笑みでサムズアップ! その視線は頭を下げた事で生まれた空間――――つまり、服の隙間からチラチラと覗く胸に注がれていた。胸の突起が見えるか見えないかちょうどギリギリのラインだが、それが生み出すドキドキ感がまた素晴らしいと言えよう。
「……直ぐに着替えてきます」
いやらしい獣の様な視線に少しだけ恥ずかしそうな声で、自分の身体を守るように抱きしめた彼女の姿がスーッと透明になって消えて行く。
「――――ッ、やっぱり自由に往き来可能なのか……」
エミリーの身体に憑依した事や、こちらの感知能力に引っかからず現れ、こうして目の前で完全にその姿を消した。
悠理は“虹色の視界”を発動させていたが、それでも彼女の姿はまったく見つけられない。レーレの透明化能力や、認識を阻害するセレイナの力はこれで看破出来たというのに。
これはますます彼女の能力が“世界を自由に行き来可能な能力”である可能性が高い。
「――――お待たせしました」
そうして自分なりに彼女の能力を推測していると、着替えが終わったようで再び悠理の前へ姿を現した――――のだが。
「…………」
「またどこかおかしいですか?」
「好きなんですか特撮?」
彼女が着てきたのは黒いライダースーツ。しかし普通のライダースーツではない。特撮番組よろしく装飾品が沢山着いている。既存のヒーローのデザインに対するリスペクトなのか、悠理も何処かで見たことのあるマークや装飾品に思わず目が行く。
「――――割りと。似合いませんか?」
「いや格好いいですよ! 俺も着たいッス!」
同じく特撮好きの悠理は良いものが見れたと嬉しそう。
「一着しかありませんので……あっ、そうでした、これを」
彼女が悠理へと手渡したのは――――Tシャツ。
そのシャツを広げてみると、胸に大きな文字で――――“自由人”。そう書かれていた。
「これって――――プッ……アハハッ!」
それは彼が好んで着ているもの――――と言うか、この世界に召喚された日に着ていたものであり、悠理のトレードマークだった。
先日のカーネス戦で穴が空いた上に血みどろになった為、以前の物は処分してしまったのでこれは素直に嬉しい補充だ。
「気に入ってもらえた様でなにより、ではそろそろ行きましょうか?」
「はい、えっと――――俺はどうすれば?」
受け取ったTシャツを丁寧に畳んで、同じく召喚時に穿いていた作業ズボンの太腿ポケットに押し込みつつ悠理は尋ねる。そういえば行くも何も、彼はまだ何をしに何処へ行くのかも聴いていない。
その問いに彼女は頷いて実にシンプルにこう応えた。
「手を握って居てください。目的地まで飛んで、転移して、侵入します」
――――と。
ダメだ……寝る!