番外編・黒き騎士は何を思う?
まさか、三週間連続で飯食いに行くことになるなんて……。
そ、そんな訳で帰りが遅くなったから番外編なんダナ。
アルフトレーンでのレーレ襲撃から数時間後……。任務を終えたカーネスはグレッセ王都へ続く道を自身と同じく真っ黒な二本角のディーノスに乗って駆け抜けていく。
「――――あの男……」
道を急ぐ中、カーネスは数時間前に戦った一人の男を思い出していた。
『ギー?』
背に乗る主が何処か上の空であるのを不思議に思ったのか、彼のディーノス――――“エスタラ”は走りながらも首を傾げた。しかし、カーネスがそれに応えることはない。
(あの男、一体何者だ?)
右手を見つめながら胸中には疑問。その手は数時間前に悠理と打ち合わせた時から痺れたままなのを、果たして彼等は気付けただろうか?
悠理の一撃は間違いなくカーネスへ届いていた。――いや、レーレの祝福を閉じ込めた精霊石を盾にするような事態に陥った時点で劣勢であっただろうとも。
いくら、自分の専用装備を持ってきていないからと言ってそれは言い訳にはならない。
あの時、確実にカーネスは悠理と言う存在に恐れを抱いていた。それは彼の強さを直感的に悟り、また更なる可能性を秘めた人物であるのを見抜いたと言うこと。
「――あの男なら止められるかも知れない……」
速度を上げてグレッセ城へと向かう中、カーネスの呟きは風に掻き消され誰も拾うことは出来ない。
エスタラも特に反応する事無く、黙々と走り続けている。
一体、彼の言葉が何を意味しているのか……。それを知る者はやはり彼一人。
他の誰にも理解できない――――いや、騎士であった頃の主君なら自身を理解してくれたかも知れない。
だがグレッセ王はもう居ない。故にもう、彼の心にあるモノを見抜ける者はどこにも居ない。
「――――――」
任務として奪った死神の祝福を閉じ込めた精霊石を握り締め、カーネスは口をつぐむ。
そしてエスタラに無言でエネルギー供給を行う。
『ギィアァァァァァ!』
獰猛な叫び声を上げて加速していくエスタラ。
騎士は唯々無言で手綱を握り、目的のグレッセ城へとひた走る。
――黒き騎士が何を胸に秘めたのか、それはもう神ですら解らない……。
あまりの眠気で頭が回らない。今回はこれで精一杯だ……。
土日で挽回できると――良いよね!