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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
125/3922

強敵は黒い騎士

※アナタは『あれ? 俺一話飛ばして読んでるかな?』と思うかも知れませんが、大丈夫です。


唐突にクライマックスで始まりますが、次が説明回となる予定です。


先ずは結果からお楽しみください……。

 非常に陳腐な言い回しであるが――――それは一瞬の出来事だったのだ。

『――しく……った、ぜ……』

 うめき声を漏らしたのはレーレ。処刑鎌“シュマイツァヒ”が手から零れ、地面に落ちる直前で光となって雲散霧消した。彼女は苦痛に顔を歪ませ、その場に倒れ込む。

 外傷はない、唯――――その背後。いつの間にかそこに居た、佇んでいた? 何れとも付かぬ奇妙な存在感をたたえる黒い甲冑の騎士……、その手に確りと握られた妖しい光を放つ精霊石が唯事ではないと告げていた。

「レ――――」

 レーレが異変に気付き、倒れ込むまで僅か8秒。この時、悠理は彼女から10m程離れていた。それがこの様な緊急事態を引き起こす結果――その一端を担ってしまったのだ。

「――レーレェェェェェェェェッ!!」

 ――ガラにもない。自由を愛し、いつでも自分の姿勢を崩さなかったあの廣瀬悠理が……絶叫した。

 そして気付いた時には黒い騎士へと踊りかかっていた。全力だった、考える暇も無く渾身の力を両足込めて地面を蹴り、飛び掛る。あっと言う間に獲物に近づいて狩りを終わらせる獣の様に、獰猛で、無駄がなく、的確な動きで。

 既に無意識の内に左手が精霊剣“リバティーア”を握り、右手は破砕剣“グランディアーレ”を各々に引き抜いていた。

 感情の赴くままグランディアーレを横薙ぎに振るう。黒き刀身の剣がブオンと空気を唸らせて、標的である黒い騎士へと伸びる――――が、騎士はソレをしゃがんで避けた!

 驚異的と言わざるを得ない。今の悠理は普通の状態ではないのだ。暴走していると言ってもいい。

 今までどんな相手だろうと殺意を持って戦いを挑んだ事など無かった。だが今回は違う、殺すつもりで振るったのだ。それは手加減など微塵もされていない本気の本気……限界ギリギリのパフォーマンス。

 圧倒的殺意の一撃……それを――――避けた!


「――――ッ!」

 ――いや、まだ終わっていない。殺すつもりで振りぬいたそれは避けられた時点でピタリと静止している。悠理が右腕の筋力にモノを言わせて無理矢理止めたのだ。あの完全に仕留める気で放った最速の一撃を……。

 だが驚くべき点はそこではない。左腕は既に騎士を捕捉しており、十分に引き絞られた弓矢の如く高速の突きを繰り出す!

「――――チッ」

 小さく舌を鳴らす騎士、こうなると一撃目をしゃがんで避けたのは明らかに失敗。この状態ではロクに回避行動は取れない。軽装であればジャンプして避ける事も可能ではあったが、今は甲冑を着込んでいる

 故に――。

「――ヌゥ……!」

「チッ、野郎!」

 騎士は腰から短剣を引き抜き、それでリバティーアを受け流した。激しくぶつかり合う鉄と鉄が火花を散す。攻撃を凌ぎきった彼はそのまま後方へ飛び、悠理との距離を稼ぐ。

「……てめぇ」

「…………」

 そのまま互いに敵意をぶつけ合いながら対峙する。

 悠理は改めて剣を構えなおし、騎士は腰から長剣を抜き放って構えた。

 ――きしくも同じスタイル、二刀流である。


「ッ!? レーレッ!」

 二人の戦闘が唐突に始まって約10秒あまり……。ファルールですらここでようやく敵の奇襲を受けたと気付き、襲われたレーレの元へと駆け寄っていく。

「えっ、ちょっ、何がどうなってんのよ!」

「そんな――――さっきまで何の気配も……!」

 騎士として訓練を積んだ者ですらあまりに壮絶なる戦いに気圧されてしまうのだから、近くに居た仲間達が反応出来なかったのは仕方ないこと。

 カーニャとノーレは特に混乱気味で、目の前で行われた戦いに唖然とするしかない。

「リスディア様、エミリーの後ろへ……」

「わ、解ったのじゃ!」

『ごぉぉっ!』

 マーリィも気付く事自体は遅れたが立ち直りは早かった。主であるリスディアをエミリーに守らせて自身も戦闘態勢を取る。

 勝つ――――いや、戦いになるとさえ思わないが、もしもの時に備え敵の一挙手一投足を逃さないように意識を集中させていく……。

「セ、セレイナ様! まさかあれは――」

「ああ、間違いねぇ……。アイツは――――」

 ヨーハとセレイナは嫌な予感が的中した事に唯々恐れを抱くばかり。

「カーネス! カーネス・ゴートライッ!! お前ッ、一体何のつもりだ!」

 胸を締め付けるような苦しみを振り払ってその名を呼ぶ。グレッセ一の騎士と謳われた彼の名を。

「――セレイナ様……」

 ぼそり、と黒い騎士が反応を示したが、その性で一瞬だけ意識が逸れたの言うまでも無く、対峙する怒れる獣がその隙を逃すなど有り得ない。

「レーレに何をしたぁぁぁッ! 答えろッ!!」

 渾身の力を込めて振り下ろしたグランディアーレを、カーネスは先程とは違って避けず、至極あっさりと長剣で受け止めて鍔迫り合いの様相を呈す両者。

 互いに一歩も退かない、力比べにおいては互角。しかし、その均衡も直ぐに崩れる事となる。それは実に意外な形で。


「……命令により、祝福を奪わせてもらった。この精霊石をチーフへ届けるのが私の仕事だ」

 淡々と悠理の質問に答える声に感情はない。律儀にも対応してくれたのは気まぐれか、それとも何か別の考えでもあるか……。

 だがしかし、そんな事は彼にはどうでも良かった。

「――――っざっけんなぁッッッ!!!!」

 悠理の右腕が丸太の如く肥大化し、カーネスの剣を一気に押し切り、弾く。

 力比べの均衡は――火に油を注ぐ、そんな行為によって破れたのだった。

「……やるな、だが――――」

 右手の長剣を失ったカーネスは完全に無防備状態。一瞬の隙を迷わず突こうとする悠理に、彼はある物を掲げた。

「終わりだ、カーネ――――ッ!?」

 再度振り下ろそうとしたグランディアーレを、直感に従い全身全霊の力を持って止める。

 刀身が軽く触れそうになる距離に掲げられたのは――――一つの精霊石……。

「感が良いらしいな……、これを砕いたら祝福が消える所だったぞ?」

「て、テメェ……! ――――ぐぅぅ……!?」

 今度は悠理が無防備な姿を晒す。そして同じ様にその隙を見過ごすハズがないカーネス。

 決着は――――だから着いた。カーネスの左手に握られた短剣が悠理の脇腹へ深く突き刺さっている。

「く、そ……ぐふっ!?」

 短剣に何か毒でも塗られていたのだろう。まるで身体の内側から炙られている様な感覚が悠理を苛む。

 そして身動きが取れない所を容赦なく蹴り飛ばされ、悠理は無様に倒れるしかない。

「――――」

 カーネスは彼を冷たく見下ろすと踵を返す。

「ま、待てよ! カーネス! お前は本当に――」

 ――洗脳されてしまったのか? そう聞く事はセレイナには出来なかった。肯定にしろ否定にしろ、どう返事をされても怖いからだ。

「…………」

 彼の男もまたそれに応えず、アルフトレーンの街角へゆらりと消えて行く。

 ――誰も追うことが出来ない。レーレが襲われてからまだ五分と経ってない――にも関わらず、彼等は圧倒的なまでに打ちのめされていた。

「ぐ、ぐぅぅ、ぐあっ……」

 唯一、悠理だけが負傷した身体を引き摺って追いかけようとしたが、時既に遅し。標的はの影はもう、無い。

「一体……、何でこんな事に……」

 カーニャの呟きはこの場に居る全員の心情を表していた。

 ――――そう、全ては彼等がこのアルフトレーンに到着した30分前まで遡らねばならない……。

――超展開です。

一体アルフトレーンで何があったかは、前書きの通り次回で説明されるので少々お待ちください。

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