相対する神とは?
ふぅ、何とか更新出来たぞ、っと。
プロローグに登場して以来だったあのキャラの名前が今明かされる!
※後書きにお知らせを追加。
作戦会議用のテント内に重い苦しい雰囲気が流れた。
クヴォリアでその存在が明らかになった謎の男“チーフ”。
その正体が、ここノレッセアの“神”だと言うのだからそれも当然の反応。
悠理、レーレ、ヨーハ以外の三人は信じられないと言う表情で固まっている。
「か、神様ってあの神様? “全知全能”の祝福与えられたって――――あの?」
「おいおい……、またお伽噺じゃねぇかよ……」
ノレッセアにおいて人間以外の人型種族は全て祝福による変異体である。死神であるレーレもそう。
その法則に例外はない――――無論、神さえも。
神と多種族においての違いは唯一つ。それは神だけが唯一無二の存在であること。
かつては“神”と呼ばれる存在も複数居たらしいが……それはまた別の話、悠理が遭遇する事のない遥か古の物語……。
――話を元に戻そう。“全知全能”と呼ばれる祝福を与えられ者が神となって世界の先導者となる。
ここノレッセアにはそんな御伽噺とも言われる伝説がまことしやかに伝えられている、所謂民間伝承と言うヤツだ。
セレイナは勇者に続いて神の存在が明らかになった事に『もう付いて行けねぇ』と辟易している。
――カーニャは一度、レーレ本人からこの話を聴いたハズなのだが――――何故驚いているのだろうか?
「正確に言うとチーフは神様の側近――――で良いんだよな?」
『ああ、チーフ――ええと、確かアルフレド・デディロッソって名前だったか……。アイツは“世界を観測”して神様の活動を支援する立場にあるんだ』
「あの……、世界を観測するって?」
控えめに手を上げたのはノーレ、どうやら興味心が疼いた様だ。どこか好奇心で緊張したようなワクワクとした表情をほんの少しだけ覗かせている。
『言葉通りさ、アルフレドの祝福は“見渡す”こと。大陸の端から端まで覗き放題だぜ? その力で世界に異変が起きたらレイ――お前らが神様って呼んでる女の事だが――――』
――――レイフォミア・エルルンシャード。それが、ノレッセアにおける“神”と呼ばれる存在。
空の彼方(宇宙)と雲の合間を絶えず移動する宙に浮く城――――“天空幻想城”の主。
雪の様に真っ白な肌を持ち、黄金に輝く長い髪が特徴的な少女だと言う。
彼女はそこから様々な方法で、けれどあくまで間接的に、地上へ住む人々のサポートを行っていたらしい。
アルフレドは地上を監視し、異変が起きたらレイへ報告して、彼女が匿名で事件解決のヒントを送る――まるで薬で少年の姿に若返った某高校生探偵の様だ……。とまぁ、そんな感じで神様は地上へ間接的な干渉をしてきたとのこと。
レーレの話によれば200年ほど前から突如彼女の動きが感じられなくなり、それから大陸には戦いが頻発し始めたと言う。
『――とまぁ、そんな感じなんだが……どうしたユーリ?』
自分の知りえる大体の情報を提示し終えたレーレが見たのは眉間に皺を寄せる悠理。
彼にしては珍しく反応に困っている様子。少なくとも彼女にはそんな風に感じられた。
しかし、彼が口を開いた事により、レーレ自身も同じ様な表情をする事となってしまう。
「――なぁ、その子は瞳が銀色だったりするか?」
『………………何で知ってんだよ?』
神様と呼ばれる少女の特徴の一つ、先程レーレがワザと開示しなかったそれを当てられ、驚きと戸惑い、またはそれ以外の反応。その中のどれを選択すべきか迷い、眉間に皺が寄る。
――成程、彼はこんな気持ちだったのか。そう悟りはしても納得は出来ない。何故、悠理はその情報を知り得たのか? 一体、何時、何処で?
「実は向こうで――俺が居た世界でそれらしき子に会ったんだよ」
「えぇっ!? ユーリ様は神様と会ったのですか!」
「ああ、何かいきなりぶん殴られて気絶しちゃってさ。目覚めたらこの世界に来てたんだ」
「暴力的な神様だなオイ」
――答えは思いの外に単純。既に邂逅して居たとなれば合点がいく。だがしかし、更にレーレは思考する。異世界に彼女が赴いた理由とは何ぞや?、と。
「え、ちょ、ちょっと待って下さいユーリさん。それって……」
ノーレが決定的な違和感に気付き声を上げる。それを見て姉のカーニャも同じ考えに至ったのか、その言葉を引き継ぐ。
「――つまり、ユーリがこの世界に来たのは私達が召喚儀式に成功したからじゃなくて……。神様が一枚噛んでたから――ってこと?」
彼の話が事実であれば、召喚のキッカケは自分達の儀式ではなく、その神様に寄るものだったのではないか? 彼女達にしてみればそれは由々しき事態、何故って自分達がした苦労の果てに行った儀式が全くの無意味だった――――かも知れないのだ。
結果的にこうして悠理に出会い、行動を共にしているのならばそれでも良いのかも知れない。――だが、やはり納得はしかねる。
何せカーニャとノーレ数年間を賭けた召喚儀式だ。それが誰かの手が加えられたものだったなど――――考えたくも無い。
「いや、俺に聞かれても困るんだが……」
むしろそれを聴きたいのは悠理も同じ。こちらに来てから急展開ばかりでついぞ忘れていたが、あの少女――神様についてはずっと気になっていたのだ。
――主に何で俺は殴られたのだろうか? と言う、割とどうでも良い疑問だったりするのだけど。
『……成程な』
「レーレは何か気付いたの?」
『ん? ああ、色々とな』
「ほぅ、是非とも聞かせてくれないか?」
一人納得顔のレーレにカーニャが問い、悠理もその流れに乗る。
そもそも、この中で神様に詳しいのは彼女だけ。となると、その口からでる言葉、推測、仮説はとても重要なものであった。
『先ず一つ、お前達姉妹がやった召喚儀式はちゃんと成功してたよ。力を貸した俺が言うんだから間違いない』
カーニャ達が欲しかった情報を真っ先に伝える辺り、レーレなりに気を遣ったのかも知れない。もしかしたら、レイフォミアが手を出していた可能性も十分にある――――が、ホッとした表情の姉妹にそれを言うのは野暮だろうと思い、胸の中に閉まっておく。
『……それともう一つ――――ユーリの能力の事さ』
「俺の?」
『ずっと疑問に思ってたんだ。お前の力は祝福とは違うモノ、一体何処からそんな力を拾ってきたのか……ってな』
最初に悠理と彼女が対峙した時のこと。レーレは彼の力を神に近しいモノがあると感じた。
相手の生命エネルギーにさえ干渉しうるあの能力。それはまさに神から与えられたモノだったのではないだろうか?
「――あー、その子が俺に力を与えたって事か?」
言わんとしていることを理解する。他ならぬ彼自身も、己に与えられた力が破格である事は重々承知していることだ。――神様に与えられた能力だとすると、少し――所かかなりの反感を覚えた事は皆には内緒にしておこうと誓う。
――自由を愛し尊重する彼にとって、神と言う存在は人の目を曇らせ、その心を束縛する悪でしかないのだから。
『十中八九そうだろう。――でもそうなると……解らねぇな……』
「――あっ、そうですよね。ユーリさんに力を与えたのが神様だとするなら何か目的があるハズ……でも、接触を図って来ないっていうのは……」
「はっ? 確かに! チーフって人のやった事を邪魔しても何にも言われないし、ユーリ様は放って置かれたままですもんね」
「おー、確かにそいつは妙だよな……。チーフって奴も側近なんだから神様の行動くらいは把握してそうだが」
浮かび上がった共通の違和感に皆が疑問をぶつけ始める。それは大いなる謎とチグハグな動きについて。
神様とその一味の内情を暴く為の一欠片。
「んー、こいつは仮説だが、チーフは俺の事を知らな――――ってなんだカーニャ?」
話題のキッカケとなった悠理もまたその事には気付いている。故に積極的に話へ加わろうとするのだが……、服の背中を引っ張る手に止められてしまう。
振り向けばカーニャが困った様に苦笑して――。
「あ、あのさ……皆して何の話してるの?」
――大人しいと思ったら全く理解できていないお嬢さんが約一名。
カーニャ以外の全員が溜息を付くと、出来の悪い生徒への説明会が急遽開始された。
――それが終わったのは約30分後のことである。
――と言う訳で、次回は出来の悪いカーニャの為の説明会でござい。
そう言えば、ポイントが98になってました! 後一人ブクマすれば100だぜヤッター!!
これもひとえに、俺の世界へ付き合ってくれている皆様方のお陰であります。
この場を借りて感謝させていただきます!
では今後とも、“召喚者は究極自由人”をよろしくお願いしますね!
※活動報告を更新致しました。
目を通して頂ければ幸いです。