番外編・姫様たちの会話?
――ダメダァァァッ!?
頭が全く働かない上に眠い……。
ここ、今回は雑な上に短い番外編でご容赦を……。
――聞こえる、狂いし者の慟哭が。
――聴こえる、国の崩れ行く音が……。
彼女達はグレッセ城の秘密通路に隠れ、これからの行く末を決めるべく話し合っていた。
「――姫様、こうれからどうなさるのですか?」
「決まっています、ワタクシ達だけでも生き延び無ければなりません姫様」
城から外へと通ずる抜け穴は幼き日に二人が幼馴染と一緒に造り上げたもの。整備されていないその暗く狭い通路に、光源として持ってきたランタンによって浮かび上がる二つの影。一つは髪を後ろに束ねた短いポニーテール、もう一つは腰ほどの長さまで伸びたロングストレート。
背中合わせの彼女達は奇妙な会話を交わす。
どちらも相手側を『お姫様』と呼んでいて実に不可解。グレッセ王国の王位継承権を持つのは一人娘のセレイナ姫のみ。
この時期に他国の姫様を招きいれていると言った話もない。ならばこの会話に現れた『姫様』とは一体……。
――実に不可解である。
「ですが……! アテなど何処にも……」
「――それでも、今はこの命を長らえさせなければなりません」
影は揺れず、お互い背中合わせの状況から動こうとしない。まるで鏡の中に居る自分と会話するかの如く、各々が真正面を見つめる。
――国を捨てて逃げなければならないのか?
――そうだ、この命ある限り、グレッセが膝を付いたことにはならない。生き延びなければ、何としても。
その為にグレッセ王――父は時間稼ぎを自ら買ってでたのだ。操られたかの騎士に勝てる見込みなど無いと知りつつも、それでも退かなかった。
そこに宿る意思を、志を無駄にしてはならない……生き延びなければ!
「……はい、ではグレフ・ベントナー様を訪ねましょう」
ロングヘアーは姫様の決意を受け止める。今は彼女の言う事に一理あると解っていれば、自分は共に行くのみだ。元より二人は一蓮托生、切っても切れぬ縁……。その糸が二人をしっかりと結んで決して離さない。
「はい、ワタクシもそれが得策だと思います。あの方は老いたと言えどこの国の英雄と言われた人……きっと良い知恵を貸してくれるに違いありません」
「しかし、彼に敵う力を未だに有しているとは……」
同意はしても希望は持てない、あの敵に対抗し得る力を持つ者に心当たりなどない。
「そうかも知れませんね……。ですが、その時は――――新たな英雄がこの地に現れるでしょう……」
不意にどちらかの影が笑った。穏やかな、穏やかな声。逃走する敗者が発するにしては希望に満ち溢れた願い。
「……姫様の祝福ですか?」
「姫様の祝福ですよ?」
問い掛けるのが影ならば、答える者もまた……影。
やはり、そのやり取りは意味不明。どんな意味を持つのか、どの様な狙いがあるのか全く透けてこない。
――そして、その会話もここで幕を閉じる。一際大きい振動がグレッセ城を激しく揺さぶったからだ。
戦っている、闘って居るのだ……王と狂った騎士が。
「ここも、もう持ちそうにありませんね……。準備はよろしいですか姫様?」
「ええ、既に準備は出来て居ますわ姫様」
二つの影はそっと手を繋ぎ、抜け道を走って行く。
――どうかこの逃亡劇の果てに希望が見つかることをひたすら願って……。
今日はいつも以上に情緒不安定だったな俺。
うん、結局ブクマも一件減っちゃったしな……。