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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
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兵士の質、曲げられぬ意地

えーっと、ちょっとだけ間に合わないんで先に投稿しまーす。

24:30迄には完成したモノが見れると思うので、それ位にまた見にきて頂ければ幸いです。


後書きもその時に。

「――あー、やっぱ囲まれてたか……」

 ヨーハを抱えて悠理がテントを出た時には既に包囲網は完成済み。

 ルンバ・ララ隊約280名が勢ぞろいである。

「ヨーハとお前が遊んでたせいだろうが!」

 窮地に立たされ怒声を浴びせつつもセレイナは戦鎚“ヘレンツァ”を構え即戦闘態勢へ移行。

 元からお姫様と言う単語に相応しい印象が無かったが(主に外見と言動の性で)、この堂々たる姿を見れば百戦錬磨の兵士も裸足で逃げ出すのではないか? そう感じさせるほどの気迫と戦意。

 戦い慣れしている。少なくともこの場において彼女を庇う必要はなさそうだ。むしろ、戦闘経験の差では彼女に分があり、悠理はむしろサポートされる立場にあるかも知れない。

「ひえぇぇぇ、こんな数相手にしたら今度こそ滅茶苦茶に……ゴクリ……」

 一方、悠理の腕に抱きかかえられたヨーハは相変わらず。淫らな妄想をしては顔を紅潮させている。

 ――この状況で平常運転を保つ事が可能な時点で、彼女もある意味豪傑と言えるのかも知れない。

 とにかく、変にパニくられるよりも遥かにマシ。何はともあれ、足手まといにはならなそうだった。

「――――まさかお前が裏切るとはな……新入り!」

 周囲を警戒し、いつでも迎撃態勢が取れる様に集中する彼等の元に一人の男がゆっくりと近づいて来る。隻眼の男――――ルンバ・ララだ。

 その表情は険しく、だがそこに怒りは見られず。至って平常通りに見える。自分の部下――を装っていた男が裏切ったのだから、もう少し感情を露にしてもよさそうなモノなのだが……。

 理性で感情を律しているのか、それとも戦いに身を置く者としてこんな光景は日常茶飯事なのか。

 実際にどうなのか確かめる手段はない、唯一つ確かなのは油断も慢心もしていないと言うこと。

 百獣の王が兎を狩るのにも全力を尽くす様に。

 ――ルンバ・ララは至極当然、アッサリと悠理を敵と認識していた。


「いーや、俺は元からこっち側の人間っすよルンバ隊長――――騙して悪いとは思いますけどね……」

 ポロリと口をつく本音。彼等は敵として相対するには惜しい連中だ……素直に言うなら、戦わずして済むならそうしたいほど。

「そうか……、ならばこちら側へ来いユーリライト。我等を退けたとてこの先で待つ戦いに勝つのは不可能だ。お前程の人材をみすみす失うのは惜しい」

 ――どうやらルンバもそう思っていてくれていたらしい。――が、いくら評価されていたとしても、悠理も簡単には靡かない。そんな男では断じてない。何故なら彼は自由を掲げる者なのだから。

「アンタ達こそ俺達に協力してくださいよ。好きでコルヴェイ王についてる訳じゃないでしょう?」

 自分を評価してくれた相手に言葉を弄する必要ナシ。その思いに応えこちらも本心をぶつける、愚直としか表せないほど真っ直ぐに。しかし、その愚直さが怒りを買う事も……ある。

「――抜かすな小僧っ! 例え好まない相手だろうと圧倒的な力を持つ者に刃向かえば死! 個人ならいざ知らず、部下をそんな無謀な戦いに連れて行けるか!!」

 それは弱肉強食の世界における処世術とでも言えばいいのだろうか? 少なくとも他者を思いやって自己を殺すその思想は美しい。

 だがその言葉が意味するところは『何の力も示さない者に何かを説く資格など無い!』と言う事だ。ルンバの突き刺す様な鋭い眼光がそう物語っている。


「望むなら……、アンタの様な上司がいる職場が良かったよ――――レーレッ!」

 今のルンバに何を言っても無駄……ならば示すのみ。廣瀬悠理の力を!

 既にここの何処かへ隠れている相棒の名を呼ぶ。すると音も無く彼等の上空にフワリと現れる死神。

 だが、ここへ来たのは悠理にある物を届ける為であって戦いに参加する事ではない。 

『応よ! 受け取れぇぇぇっ!!』

 布に包まれた巨大な何かを投擲。狙いはまったく逸れず、それはすっぽりと悠理の手に収まった。

「手ぇ出すなよ相棒? ここは俺一人でやるぜ!」

 これは潜入の際に邪魔だからと置いて来た装備。徒手空拳でも戦うには十分だ。しかし、唯勝つだけでは不十分。圧倒的な力――ソレを魅せ付けなければ。

「はぁ? おい、俺様も手だ――――っととっ!?」

 この数を一人で相手するのは至難の技と見たのだろう。セレイナは助太刀を申し出るも、彼が腕に抱いたヨーハを無言で投げ渡して来た為に咄嗟に受け止めざるを得なかった。

「きゃぁぁぁんっ♪ セレイナ様にもお姫様抱っこされるなんて……ヨーハ、か・ん・げ――――ぎゃふんっ!?」

 ――が、いつも通りのふざけた発言が主の不況を買ったのか、慈悲も無く落とされ盛大に尻餅をつくヨーハ。――心なしかぞんざいな扱いを受けて恍惚としていた様な気がしたが見なかった事にしておく。

「お前らもよーく見てな、仮にもスルハを救った俺の――――力を!」

 ありったけの気合と気迫を込めて、その手に収まった得物に撒きついた布を引き剥がす!

「!? お、おいおい、それってまさか!」

 それが何であるか気付いたセレイナは無意識に一歩退いた。

 ――破砕剣“グランディアーレ”……。

 グレフ・ベントナーが造りし最高傑作にして、あまりの力故に封印されていたはず代物。

 その剣の存在と力を知るものは数少なく、知っている少数は皆一様にそれを畏怖する。

「うひぃッ!? そそそ、そんな危ないもの、持ち出してどうする気ですかぁ!」

 ヨーハも見るからに動揺し、セレイナの足に抱きついてガタガタと震え上がっていた。

 この場においてのその少数とはセレイナとヨーハ。彼女達は忘れてはいない、その剣を振るった英雄のことを。黒く分厚い刀身の片刃、しかし刃は潰れ、何も斬ることは出来ない。

 剣として生まれたにも関わらずこの矛盾。けれどそんなモノが何の慰めにもならない事は知っている。

 一振りすれば、あらゆるものを砕き……。

 二振りすれば、命持つ者は必ず悲鳴を発し……。

 三振りすれば、圧倒的な力と絶望の足音を眼前に示され死を覚悟する。

 それが破砕剣“グランディアーレ”。

 またの名を――――――“祝福の切り裂き魔”!


「決まってんだろ? 俺の力――――見せつけてやる!」

 両手でグランディアーレで掴み、肩に担ぐ。そしてそのまま――振りぬく!

「――――いかんッ、伏せろっ!!」

 この時、危険を察知したルンバは咄嗟にそう叫ぶが、反応できた者は多くない。

 悠理達と周囲を固めている兵士達との距離は約6m。先ず剣を振るったところでどうにかなる距離ではない――にも関わらず……。 

「うおぉぉぉりゃぁぁぁあッ」

「う、うおぉぉぉっ!?」

「いーやー、飛ばされちゃう~!」

 思いっきり振り払った一撃が暴風を産む。正面に居た兵士達はそれをモロに喰らい、その場で跪く。

 唯の剣風がこの威力。まるで嵐の中に放り込まれた様な感覚に一同唖然。

『おお、いきなり全開とか容赦ねぇなぁ……』

 上空に居たレーレだけはその影響を逃れていた為に暢気なものだった。

「――ぐっ、新入り……お前ぇぇぇぇぇぇぇっ――――ぐ、か、身体が……」

 暴風が過ぎ去った隙に悠理を捕らえ様と動いたのは、街で行動を共にした先輩兵士。ルンバと違って彼は自分達を騙していた悠理に怒り心頭らしい。――しかし、その怒りは届かない。

 身体に一切の力が入らず、指一本動かせないのだ。

「無理っすよ先輩。今の一撃でアンタ等の自由は奪わせてもらった」

 先程の暴風には悠理の“生命神秘の気”が混じって飛散していた。兵士達の身体にはその光が大量に付着している。それが彼等の自由を奪っているのだ。

 これは新たな武器によって手に入れた力であると同時に、悠理が成長している事を示している。

「――――むぅぅ、これが貴様の力かユーリライト!」

 一瞬早く地面に伏せたルンバには殆ど光が付着していなかった。その為、多少動きが鈍る程度で済んだらしい。

「そうさ隊長、この力で俺はグレッセも救い、いつの日にかコルヴェイ王をも打倒する!」

 言い切る。何の迷いも、疑いも無く。不可能であるとは微塵も考えずに高らかに!


「ほざけ! この程度でぇッ!!」

 腰から斧を引き抜いたルンバが、見た目とは裏腹に俊敏な動きを見せ、悠理に肉薄する!

「――コルヴェイ王の足元にも及ぶと思うのか!!」

 ガキン、と金属がぶつかり合う重い音。

 振り下ろされた斧は容易くグランディアーレに受け止められていた。

 全体重を乗せての一撃、今尚力を込め続けていると言うのにビクともしない。

 その事にルンバは戦慄を覚えていた。そして悟る、自分と悠理では武器も含めてスペックに差が有りすぎる。

 ――しかし、だからと言って退く事は兵士としての意地が許さない。限界ギリギリまで行く!

「……へっ、解ってねぇな隊長。及ぶ及ばないじゃないのさ……、届かせるんだよぉっ!」

 悠理もまたここで手心など加えない。男同士の一対一。実力差は大人と子供――もしくはそれ以上の戦いだとしても、本気でぶつかり合った相手への敬意として、がら空きのボディ目掛け膝を叩き込む!

「ぐほぉっ、一体、何がお前を――――そこまで……」

 そのたった一撃でルンバの意識が飛びかけるが、歯を食いしばって何とか耐える。

 決して退かぬ強い意志と決意は確かにルンバへと伝わっていた。それでも解せない、何故強大な敵を前に臆せず前へと進めるのか?

 それは多分、自分が一度屈してしまったからだ。だから、彼はファルール達と同じ様に生きる事を最優先にした。

 自分の決断は多くの部下の命を救ったが、一人の兵士として――男としては間違っていたのかも知れない……。

 だから悠理へ憧れさえ抱き、ルンバは問う。


「――――俺はさ、隊長。本当に大した事の無い奴なんだよ。居なくなっても代わりはいくらでも居る――――そんな平凡以下の男なんだ」

 実際、地球に居た頃はそうだ。ただ何となく生きて社会の歯車になっていた日々。

 でも自分と言う歯車が無くても世界は周ってしまう。しかも、この歯車は酷く安価で、代わりはいくらでも調達できてしまう。

 それが当たり前の世界でも、目の前にハッキリと突きつけられれば捻くれるし腐りもする。

 だから、一度抜け出したのだ。会社を辞めて自分と言う歯車を代えの効かない一級品に仕上げる為に。

 ――その結果、今悠理はこんな異世界に居る訳だけど。

「でもさ、そんな大した事のできない奴を頼りにしてくれる女の子達が居るんだ……。奴隷解放と言う夢――――その為に必要な勇者として期待してくれてる子がさ」

 正直、カーニャ達に求められた事は涙が出る位に嬉しかったのだ。悠理が何の躊躇いなく彼女達に力を貸し、ここに居るのはソレが理由。

「――あんなに可愛らしい子から求められたら期待に応えるのが男ってモンだろ?」

 ――必要としてくれた事への恩返し。

 他にも理由はあるが、一番はそれだ。廣瀬悠理はカーニャ達が考えている以上に、彼女達を大切に思っているし、交わした約束を絶対に叶えると誓っている。

 コルヴェイ王に立ち向かうのはたったそれだけの感情的な理由で良い。

 ――それこそが悠理の揺るがぬ意思の原点。

「――フフッ、面白い、小僧だ……」

 とある少女達との約束だから――――と、満面の笑みを浮かべる悠理。

 その姿を眩しそうに見つめてルンバの意識は遠くなっていく。

 ――ああ、年を取ると大事なことを忘れてしまってイカンな……そう、苦笑しながら……。

おうふ、結局24:40まで掛かってしまった……。


しかも、頭全然働いてないなー。


次回、あっさりやられてあっさり仲間になるルンバさん達の巻。

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