完璧に見えて実は性格は残念な姉系侍女さんって良いと思う
明日の決戦に備えてバトスピのデッキ調整してたらこんな時間に……。
長くなりそうだったので区切りまーす。
――メレッセリアに居たコルヴェイ軍の意図を探る為、単身敵の部隊に紛れ込んだ悠理。
部隊長“ルンバ・ララ”の話によれば、逃げ出したグレッセ王女“セレイナ”(とその侍女)を追って来たと言う。
彼等よりも先に二人を保護するべく、悠理はその後も敵兵士を装いながら捜索を続けていた……。
レーレ達と別れてから実に二時間が経過し、もう完全に日が沈みかけている。それでも街中くまなく探しても見つからず、『やはりもうこの街には居ないのでは?』と兵士達が口々に呟き始めた頃――――――事態は急変する。
「おーい! 侍女の方は見つかったってよ!」
他の方面を探していた一人の兵士が報告にやって来る。先輩兵士と悠理、その場に居た数人の兵士達が驚きでざわつく。
無理も無い、ルンバ隊の面々は隊長による教育が行き届いている為、住民に手荒な真似こそしなかったが、民家、路地裏、下水道……、入れる箇所は全て調べた。
――にも関わらず、王女と侍女の痕跡は一切無かったのだ。
「何、侍女の方だけか?」
二人は一組でセット、主とその従者なのだからこれは当たり前。
しかし、連絡兵の言い方では侍女だけが発見されたと聴こえる――――つまり、王女の姿は未だに確認されていないと言うこと。
――何故、侍女だけがその姿を現したのだろう?
「これから隊長が尋問するらしいぜ」
尋問……と言っても、ルンバ・ララと言う男は紳士だ。決して侍女に危害を加える事もないだろう。
だが、彼等より先に見つけて保護――と言う計画はとにかくおじゃんだ。
とにかく、隙を見つけて侍女を救出せねばならないが……。上手い具合にそのチャンスを見極められるかどうか……。
「――ふむ、おい新入り。俺達も同伴させてもらおう」
――と、悩む悠理にチャンス到来。思わぬ所からの渡りに船に驚きを隠せない。
「えっ、王女捜索は良いんですか?」
でもここでがっついたら妙に思われるかも知れない。脳裏を過ぎった用心深さから、あえて職務熱心な部下を演出した――――のではなく、これはあくまで悠理の素。普通なら一般兵士が任務を放り出して、隊長の尋問に居合わせて良いハズがない。部課長会議に仕事を放り出して平社員が出席する様なものだ。
常識なら有り得ない、いくら彼が常識に囚われないフリーダムな男と言っても、無法者でも無知でもないのだから、そんな当たり前は予測出来る。
この部隊の規律が緩いのか? それとも自分の常識がそもそもこの世界に合わないのか?
幾つかの仮説は立てたが、どれも解には程遠そうだった。
(ばっか、お前も二人の事気になってただろ? 隊長が手荒な真似をするとは思わないが、尋問中頭に血が上って――なんて事もある。そんな時、部下の目があったら冷静になれるってもんだろ?)
コソコソと耳元で伝えられた返答は――――あえて言うのなら感情論。部隊の規律が整っていない訳じゃない。世界が自分の思う常識から外れている訳でもなかった。
単純に感情、或いは人情。コルヴェイ軍の兵士――――そんな肩書きが目立ってしまう所為で、彼等が同じ人間であることをうっかり忘れていたのかも知れない。
(ああ、成程。先輩優しいっすね)
(――よ、よせよ! 照るだろうが……)
先輩兵士は恥ずかしそうに頬を掻いてそっぽを向く。隊長と言い、彼と言い、ここの部隊はどうも人間味溢れていると言うか、何と言うか……。少なくとも、その人間臭さは悠理にとって好感が持てる部分だ。
「――しかし、これだけの人数でも数時間かけても見つからなかったのに、何でこんな突然捕まったんですかね?」
途中参加の悠理には正確な捜索開始時刻は解らないが、紛れ込んだ時には既に1時間近く捜索していたハズ。
今はもう完全に日が落ちているから、更に難易度は上がっていた……なのに何故?
「ああ、その事なんだが……何か腹を下したウチの兵士をそれと知らずに介抱してくれてたらしい」
「え、メッチャ良い人だけど、スゲェドジじゃないですか!」
「――むしろ、何で今まで見つけられなかったんだ……」
事の顛末に対して衝撃を隠せない一同……。『そんな相手を数時間かけても見つけられなかったのか……』と、落ち込む先輩兵士を慰めながら、悠理は隊長の元へと向かった。
――そのドジな侍女の顔を拝みに!
次回こそ、侍女さん登場!