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私だけ  作者: snowman
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2ページ目

 

 彼の行動すべて、私の想いを強くするようなことばかりに思える。


 誕生日が迫った金曜日。

「来週の月曜日。誕生日なんですよ〜」

と冗談交じりで彼に伝えると

「なんだ催促か?俺小遣い少ないから物なんてやれねぇぞ?」

とその場はサラリと流れた。

 お小遣いが少ないのは知っていた。

バイクが大好きな彼は、維持費の為にうちの店にバイトとして手伝いに来ていたくらい。


 自分の店ではチーフとして頭に立っているにも関わらず、うちの店に来ている時は

「俺はあくまでバイトでお前が社員なんだから、仕込みでも何でも俺に指示しろ」

と言って決して偉そうな態度をとったことなど無かった。

そんな態度が、余計彼を頼れる存在にしていた。


 そして私の誕生日当日。

当然私は仕事で、月曜日だから彼に会うことは無いと思っていた。

開店前の午後4時。

仕込みや皆の賄いを作っている中に彼が現れた。

休憩中にわざわざ来てくれた彼の手には白い箱。

「何か買ったりしてやれねぇけど」

と言って手渡されたのは大きなバースデーケーキ。

当日の朝、早く出勤して自分の店で作ってきてくれたそうだ。

真っ白なケーキの真ん中に、私の名前とhappy birthday という文字。

胸が一杯になって、この気持ちをどう伝えていいか分からなくて

「凄く凄く嬉しいです。ありがとうございます」

とのぼせ上がったように言う事しか出来なかった。

仕事も終わり、一人の帰り道。

始めて過ごす一人きりの誕生日もちっとも淋しくなくて、彼が作ってくれたケーキをゆっくりゆっくり味わった。


 

 この時感じた。もう止めよう。

好きなら好きでいい。

どうせならこのまま一生片思いでも構わない。

想い合うことは出来なくても、好きでいることは許されるはず。


 それがどんなに切ないことか。

私は、底の見えない湖に沈んで往くことの辛さを分かってはいなかった。


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