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なにも、知らない。

数日後。

野々村が、ケロッとした顔でやって来た。


クラスメイトが面白がって、野々村の周りに集まる。

「オマエ何やってんだよー胃腸炎とか、食い過ぎ?」

「そうだねー成長期だからねー食いまくりだしねー」

「今日から部活行けるか?」

「おー行くぜーキャプテン居なかったらみんなダレまくりだろ」


良く言うよ全く。


会話を片耳で聞きながら、私は持ってきた教科書類を机にしまう。

その視界に、紺色の制服が入ってきた。


「みーやのっち、おはよ」

「……おはよ。治った?」

「おーよ、全快バリバリ」

「ヨカッタネー」

「その心こもってない返事止めろよな」

そう言って。

私の頭にポン、と乗せられたのは。


先日、直子に預けたノート。

「サンキュ。スッゲ見やすかった。みやのっちノート取るの上手い」

「そう?褒められて光栄だわ」

自分の顔と声と表情が、変じゃない事を祈る。


褒められると、弱い。

いつも自分に、自信がないから。


頭も悪くはないけど、賢いとは思ってない。

でも、授業はついていける。

テストの点も、平均以上をキープしてるし。


だけど、ここにいる野々村はもちろん、

直子も、その他の子たちも大勢は

塾に通っていて。

勉強なんて、できて当たり前。


だから。

私を褒めるなんて場違いなんだよ、と思うけど

やっぱり素直に嬉しい。



「けどさーなんで来なかったの?家」

ギクリとした。


「……なんでアタシが行かないとダメなんだよ。直子が行ったでしょ」

「そーだけど」

「じゃ、いいじゃん。」

「オマエ、そんな風に思ってるの」

「何が。」

「……ふーん、ま、いいわ。来たらよかったのに」

「何で」


野々村は少し真顔で止まる。

「おーい、野々村大丈夫?」

と、私が目の前で手を振って意識を確認してたら。


「……美味いプリンを見舞いでもらって余ったから食べさせてやろーと思っただけ」

真顔でそう、言われた。


「あっ」

それはしまった。

プリン食べたかった。


「ま、直子と優子にやったからもうないけどな。残念」


ガッカリ。

ま、しょうがない。


私が自分で拒否したんだから。

コイツの家に行く事を。


もう、これ以上、

直子の前で仲良くしたら、ダメなんじゃないかと思ってる。


だからこそ

こうして、同じクラスでよかったと思った。


クラスメイトなら、やましくない。


そして、このまま

何も起こらず、楽しく笑って過ごせればいいや。

そう思っていた。


私からは、何もしないし

何も言わない


最低限の『友達ライン』を保てば、大丈夫。





そうして。くだらない言葉の応酬で毎日は過ぎ。

私達は三年という立場に急かされ、

夏の集大成に向けて必死で部活に集中した。



そして。

最後の試合を一ヶ月前に控えたある日。


部室で。

優子から、聞いた。



「直子、野々村とつき合う事になったらしいよ」



ふーん、そうなんだ。

よかったじゃん。


と、私は思ったし、そう言った。


恋が実ったか。

それは良かった。


あれから、何となく気まずくて。

直子と野々村が揃う時は

それとなく予定を入れてみたりして

私は、二人と一緒に居るのを極力避けていた。


私がいたら、ややこしいのかもしれない。

変に仲がいい分、直子は不安がる。

教室では、野々村もいつもどおりだった。


休み時間にバカ言って

ノートやペンの貸し借りをしたりして。


フツーに楽しく過ごしていた。



だからこそ。

放課後まで一緒にいなくていいかと思い。


私は部活に集中すると同時に。

部活のない日は別の友達と帰る約束をし、

優子には早く宮迫とくっつけと急かし。



宮迫と優子がつき合い出したのも、この話を聞く少し前だった。


「そっかー、じゃ、優子と直子はダブルデートができるね」

私は面白がって、そう祝った。

優子も嬉しそうに、それいいかも!とニコニコしている。


お似合いじゃん。


可愛い二人とイケメン二人のダブルデート。

絵になるよ。



もう、私はいいよね。

そこに行かなくて。


内心、ホッとした。


いつまでこの黒い気持ちとつき合わないとダメなんだろう

そう思っていた。


彼女たちは、悪くない。

私の心が、狭いだけ。


分かっていても

どうにもならないモノがある。



だから。

こうして、部活で優子と仲良くできるだけで

私は充分だった。

宮迫との仲睦まじい可愛い話を聞くのも、嫌ではなかった。


羨ましいくらいだ。


私も、いつかそんな経験ができればいいな、と。




こんなフツーよりちょっと下な私でも

いいよ、って言ってくれる人がいたらいいのに。


そんな都合のいい話は、あるワケないか。

と、一人で笑って。



しばらくは。優子の楽しそうな話に

幸せを分けてもらった。




これで、いいんだ。

よかったんだ。


何も知らなくていい。

みんな。


私も直子と野々村がどうなったとかは

もう知らなくていいと思うし

(友達の遊び程度に耳にするのは構わないけど)

アイツらも私が誰とどうなろうと

知らなくていいと、思う。



とにかく。

楽しそうな話で、よかった。


私はとりあえず、引退までは部活に集中する事にした。






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