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世界の始まりがどうであったかなんて、知る者は一人も居ない。
正確には「居なくなった」と言うべきなんだろうけど、僕にはさほど興味がないこと。
世界は廻り続ける。同じ歯車の上で、同じ歴史をいつまでも。
それが認識できるのは、僕のような存在だけ。
認識をして、その先に何を求めるのかは人それぞれで。僕が願うのは、たった一つだけ。
「……。それなのに、いつまで僕に付き纏うつもりなの?」
「いつまでも。……と言いたいところだけど、そろそろ良い返事が欲しいね?」
「君も、同じ「存在」なら分かるはずだと思ったけど」
何度も現れては、何度も僕に返事を求める。
色良い返事で無ければ、いつだって消されそうになる。
――だけど消されはしない。僕はまだやるべきことさえ、果たしていない。
「分からないよ。……君は何を望み、何を欲する? 何のために目覚めた?」
「君は一つ勘違いをしている。……僕は何も望まないし、何も欲しない」
そう、何も望まないし、何も欲しない。
僕には彼の存在さえ在ればいい。それ以上もそれ以下もない。
願うのは、彼の存在が在ることだけ。彼の存在だけが、今の僕を作り上げている。
「ふむ……。なら、その「存在」をこちらに招き入れてみようか?」
「……!」
「近々、試そうと思っていたんだ。……丁度良い」
「……っ、待て! 彼に手を出すことだけは……!」
「もう種は芽吹いている。……後は蕾を付けるだけ。そしてその後に花を咲かせるかは、お楽しみ、というところかな?」
「っ……彼、は……彼だけは……!」
「分かっているはずだよ、君が良く一番。だからこそ、逸早く行動をした。そうだろう? ――じゃあ、また出逢えるのを楽しみにしてるよ」
今まで話していた存在が消えたことを感じながら、身体が震えているのが分かった。
言われなくても分かってる。……全てが遅かったことぐらい、知っている。
でも、本当は僕が願ってしまったのかも知れない。傍に在りたいから、同じ「存在」になることを。
――ごめん。
僕が「僕」で居る限り、君の存在が必要で。
この先の時間で、君が悩み、苦しみ、時に傷付くことを知りながらも。
同じ「存在」になって欲しいと願う。
「……本当に、ごめんね」
謝っても、謝っても。もう全ての準備が整った後で、全てが遅いのも分かってるけど。
それでも僕は、君を護るから。
これから先の時間で、出来る限り、君が傷付かないように。君が幸せであれるように。
だから、どうか。
――君の傍に、僕の存在が在れますように。