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9話・伯父さんの背中に乗って移動?



「あの婆さんにそのような過去があったとは。大変だっただろうな。お腹に子供がいたのに夫がいなくなるなんて……」

「本当にね。許せない話よ」


 アコダに説明している中で、スターシャの夫を許せない気持ちが再発した。


「そうしていると、サーラはシグルドに似ている。あいつも正義感が強かった」


 懐かしむようにアコダが言えば、カルロッタさんもそうそうと頷いた。


「カルロッタさんも、父のことを知っているのですか?」

「勿論。私はアコダの許嫁だったから、彼の幼い頃から交流があったのよ。ジグルドが少年の頃は、それは、それは可愛い男の子だった」

「何か焼けるな」

「妬かないでよ。相手はあなたの弟よ」


 アコダがカルロッタの腰を引く。カルロッタはアコダの額を軽く弾いた。仲が良さそうだ。目も当てられないと言うのは、こう言うことを言うのだろうか?


「サーラ。済まないが陛下から王命が下りた。明日にはラーウル地方へ向かわなくてはならない。今回は二人で仕事となりそうだ。よろしく頼む。さっそくだが出かける支度をしてもらえるか? 私は自分の分は用意するから、きみの分だけでいい」

「分かりました。ラーウル地方へは何日くらいかかりますか?」

「そうだな。馬車で……」

「夜中の飛行なら一時間程度で済むぞ」


 ノアールに聞いていたら、アコダが割り込んでくる。ノアールは顔を顰めた。


「二人は休暇中だろう?」

「いえ。同行せよと陛下より命じられております」

「同行?」

「はい。私もクリュサオルの仕事の手伝いをするようにと言われました」


 目を丸くするノアールに、カルロッタが自分達も同行することになっていると言い出した。


「今回は賑やかでいいな。四人でラーウル地方か。カミさんの背には載せられないが、二人は俺の背に乗って行けばいいさ」


 唖然とするノアールの隣で、鼻歌でも歌いそうなほど機嫌のよいアコダが提案する。私には意味が分からなかったけど、カルロッタと目があうと彼女も嬉しそうな顔をしていた。その意味が分かったのは一時間後の事だった。

 支度が出来たか? と、アコダが呼びに来て、建物の屋上に連れ出され大きな竜となった彼の姿に驚くことになった。


──竜体のアコダの背中に乗って移動? 聞いてないです。無理、無理──!

 

 反論する暇も与えられず、気が付けばカルロッタさんに抱き上げられて一緒に乗っていた。ノアールは私の前に座っている。


「振り落とされないように、しっかり捕まっていてね」

「……!」


 急浮上した動きに驚いて、慌ててカルロッタに縋りつくと、彼女はしっかり私の体を抱きしめてくれた。前方のノアールは慣れているのか平気そうだ。このような体験は初めてで恐れのような気持ちが湧いてくる。屋上から離れ竜は空へと飛び出したようだ。風が頬に当たる感覚に目を瞑る。とても怖くて目が開けられない。今まで陸で育ってきた自分には、そこから離れると言う感覚が恐ろしく感じられるものなのだと知った。楽しいことを考えようとしたら誕生祭が、今この下で行われていることを思い出した。


──いいな。陛下からの指令がなかったら今頃、ノアールと夜の王都巡りしていたはずなのに。


 屋台巡りでお腹いっぱいになったので、一度部屋に帰ろうと言われて戻ったが、アコダ達がいなければ、しばらく昼寝して夜にまた夜の誕生祭に繰り出すことになっていた。それが思わぬ形で潰されて、残念に思った。



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