8話・突然の王命
「ここでの暮らしには慣れてきた?」
「はい。伯父さんやノアールさまにも良くしてもらっていますし、家政婦さんのビルナさんも優しいです」
「それは良かったわ。私とも仲良くしてくれると嬉しいわ。伯母さんと呼んでね」
「良いのですか? でも、伯母さんだなんて──」
「嫌かしら?」
カルロッタからの提案は嬉しいが、呼び名が気になった。するとカルロッタが寂しそうな顔をしたので、そんな顔をさせたくなくて思ったことを口にしていた。
「いえ。カルロッタさまはお姉さんにしか見えないなと思って……」
「では、お姉さまでも良いわよ」
「はい」
「おいおい、それはさすがに──、ぐっ……!?」
何か言いかけたアコダだったが、何故かカルロッタからお腹に肘付きされて悶絶していた。大丈夫だろうか? ノアールは冷静にアコダを一瞥してからカルロッタに言った。
「カルロッタ。おまえがここに来たということは、あのお方から託されてきたのだろう?」
それを聞いてカルロッタは、顔つきが変わった。きりっと直立姿勢を取る。アコダも姿勢を正した。
「王命である。ノースデン山で12人の石工達が行方不明となっている。それを調査せよ」
「拝命仕りました」
この場に女王陛下がいなくとも、カルロッタから告げられたと言うことは、彼女は陛下代理として告げたと言うことなのだろう。ノアールや、アコダが深々と頭を下げているのを見て慌てて頭を下げた。突然、王命が下ったのでびっくりした。
「サーラちゃん、驚かせてごめんなさいね。陛下よりノアールさまへと言伝を頼まれたものだから」
ノアール達が頭を上げたのを見て、私も頭を上げるとカルロッタが済まなそうに言ってきた。いきなり始まったので驚いたけど、仕方ないことなのかもしれない。でも、ノアールは不服そうだった。
「誕生祭だって言うのに。ラーウル地方まで行かなくてはならないとは……」
「ラーウル地方?」
「ノースデン山はラーウル地方にある」
誕生祭を楽しもうと思っていた矢先の仕事に、彼はツイていないとでも言いたそうだった。私も少しだけ残念に思った。もっとノアールと色々と見て回りたい思いがあった。それでもどこかで聞いたような地名が出た気がして、聞き返すとノアールが教えてくれた。そう言えば、ダニールがスターシャと、その夫がラーウル地方の田舎町から王都に出てきたと、言っていたような気がする。そのラーウル地方へ向かうことになる?
「じゃあ、スターシャさんの故郷へ向かうことになるのね」
「スターシャさん?」
アコダが何の話だ?と、言う顔をするので、スターシャが噴水前の広場でおかしくなっていて、その原因が夫のステパンとの別れにあるらしいと話すと、神妙な顔をしていた。




