48話・あなたは王子さま?
「おや。目が覚めましたかな?」
「ロージイさん? ここはロージイさんの家?」
「サーラ。気が付いたか?」
「ノアールさん」
目が覚めると、こちらを窺うロージイとノアールが側にいた。ノアールの手を借りて体を起こすと、天井と壁がオパールで出きている部屋にいた。見覚えのある部屋はロージイ宅のリビングのようだ。ふかふかの絨毯の上に置かれていた、床座椅子の上に寝かされていた。近くには絨毯の上に直接座るアコダ夫妻もいた。
「サーラちゃん。気が付いたのね? 良かった」
「突然、倒れるから心配したぞ」
「迷惑かけてごめんなさい」
「別に謝らなくてもいい」
アコダとカルロッタが心配していた。今まで気を失っていたようだ。自分は非力な方ではないと思っていたが、緊張状態が続く中で思いがけないことが続いたので、体よりも脳の方が一時休止状態に入ってしまったみたいだ。
皆に心配をかけて申し訳なく思っていると、リビングの奥から話し声が聞こえた。
「懐かしいわ。何もかも変わっていない」
「あの日が昨日のことのように思い出されます」
「そうね。初めてあなた方と会って、わたくし興奮したものよ」
チムと話をしていた陛下は、私が起きたことに気が付いたようだ。話を止めて影のように従う公爵を連れて側にやってきた。その姿を見て思った。誕生祭で陛下の護衛官であるカルロッタらが離れて大丈夫なのか? と、ノアールに聞いた時に、最強の護衛がやってくるから大丈夫と言っていた。
その最強の護衛とは、アイオライト公爵のことだったらしい。確かに竜人の王である公爵相手ならば、不穏な者は誰一人陛下に近づけなさそうだ。
「気が付いたのね?」
「陛下」
「驚かせてしまったみたいね。ごめんなさい」
「と、とんでもありません。私が勝手に倒れた次第で……」
私の前で陛下が頭を下げて来たので驚いた。
「娘。そんなことで驚いていたら体がもたないぞ」
「ノク。そういう言い方は良くない。サーラ嬢は何も知らなかったのだから驚くのは当然よ」
アイオライト公爵の指摘はもっともだった。クリュサオルであるノアールの助手をしていく上で、これからも色々な真実と向き合うことになるだろう。その度に倒れていては仕事にならないと忠告されたように感じた。
視線は鋭かったが、そこに悪意のようなものは感じられなかった。陛下は執り成してくれたが、公爵には「ご忠告痛み入ります」と、言えば、頷かれた。やはり忠告だったようだ。
「そなたは人魚と、竜人の血を引く。いつの日かそのことでけりをつけなくてはならないことがあるだろう。しっかり生きよ」
「はい」
アイオライト公爵は、私を一目見ただけで人魚と竜人の間に生まれた子だと分かったようだ。もしかしたらアコダ達から何か報告が上がっていたかも知れないが、リョクショウをヤモリだと見て取ったように、私のことも見ただけで察したのかも知れなかった。
私は皆が揃ったところで、ノアールに聞いた。
「さっきの話だけど……、あなたは王子さまだったの?」
「王子ではないが、あのふたりの息子だ」
ノアールは、陛下と公爵を見て言った。女王陛下は表向きには独身とされている。そうなると未婚でノアールを産み、彼を認知していないことになる? でも、アイオライト公爵ならば、陛下の配偶者となっても問題はなさそうなのに、どうして二人は婚姻していないのだろう?




