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42話・アイオライト公爵



「もしやあの方達は──?」

「アイオライト公爵と、アルテミシア女王陛下だ」


 思った通りの答えが、ノアールから返ってきた。ぎょっとした。アイオライト公爵と言えば、ノアール達の話に出て来たこの山の持ち主。青金さまと呼ばれる竜人たちの王でもある。その人は濃紺色の髪に金色の瞳を持つ美丈夫で、その隣に佇む美女は、金髪に青い目の聡明な女性。私達、国民が敬愛するお方。滅多にお会いする機会はなくて、話に聞くだけの存在が目の前にいた。

 

 ノアールが跪き、リョクショウも頭を下げた。私も慌ててそれに続いた。ブルーノも何が何だか分からないようだったが、皆に合わせて頭を下げていた。アイオライト公爵は、麗しい女王陛下の騎士のように前に進み出て言った。


「クリュサオルよ。報告をせよ」

「はっ。此度の石工の件ですが、竜胆の後継者を名乗る者リョクショウが彼らを魅了し、この山へ呼び寄せておりました」

「リョクショウ?」


 誰だ。それは? とでも言うような怪訝そうな声が公爵から返ってきた。


「ここにいる女性です」

「ふ~ん」


 つい、先ほどまで強気でいたリョクショウは急に大人しくなった。さすがにアイオライト公爵である青金さまに飛びつくような無礼はなかった。公爵は観察するように見ていた。


「竜胆が死んだらしいな?」

「はい」

「いつ頃の話だ?」

「昨年の秋にございます」

「そうか。あいつはしばらく持つと思ったのに。不測の事態が起きたようだ」


 そう言って公爵がリョクショウを睨みつける。金色の瞳に凄まれて、リョクショウは竦みあがったようだ。


「我の作り上げた最高傑作である竜胆が亡くなるとはな、そこの」

「は、……はい」

「おまえ、さては竜胆を害したな?」


 皆の目がリョクショウへ向く。リョクショウの話を聞いててっきり私は、本体の方が自然に枯れたとかで亡くなったのかと思い込んでいた。それが違っていたかも知れない?


「わ、わらわは……」

「何を隠している? 家守の娘」


 公爵の視線には鋭さがあって、下手な言い訳など通用しそうになかった。嘘など言えば、この場で切って捨てられそうだ。


「竜胆の本体をわざと害したであろう?」


 竜胆は花の精。青金さまであるアイオライト公爵が、魔石を与えて山の管理人としたとアコダ達に聞いていた。そのせいか竜胆の死に皆が驚いていたけど、竜胆が死ぬとは想定していなかったからかと、今、気が付いた。


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