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37話・危機一髪

 

 私に覆いかぶさった彼の背に、斧が迫っていた。このままではノアールさんが!


──いやあああああああああああっ。止めて! 


 そう思ったら、声なのか、悲鳴なのか良く分からない声が出た。それを、斧を振りかぶった石工に目掛けて思い切りぶつけた。咄嗟の行動だった。自分でも良く分からないけど、効き目はあったようだ。男は斧を手放し、頭を抑えて呻き出した。周囲の石工達も次々、膝をつき頭を抱えて地面を転がった。


──サーラ。良く覚えておきなさい。あなたの声はね……。


 遠いあの日。フィロメーラさまが、幼い私に教えてくれた。私の声には力が宿ると。だから感情に任せて声を出しては駄目よ。と、今更ながら言われていたことを思い出した。

 もう相手にぶつけてしまった後だけど、後悔はない。


「ノアールさん。大丈夫?」

「大丈夫だ。心配はいらない」

「良かった。無事で……」


 私の身を庇ってくれたノアールも無事だった。安心したらふと、頭の中に浮かんできた歌があった。それを唇に乗せて歌い出すと、頭を抱えていた石工達に変化があった。



「あれ? 俺、どうしてここに?」

「ここはどこだ?」

「確か、家にいたはずなのに?」


  石工達が次々我に返ったように立ち上がり周囲を見渡す。今まで斧を振りかざし、襲い掛かって来たとは信じられないほど、人相が変わっていた。穏やかな顔つきになっている。先ほどの彼らとは全く様子が違っていた。


「どういうことだ?」


 石工達の変わりようには驚いた。


「君たち、この山へ入り込んだ自覚はあるか?」

「ここはどこですか?」


 石工の一人が聞いてくる。ノースデン山だとノアールが教えると、目を剥いていた。


「えっ? あの、青金さまがお住まいになられていると言うノースデン山? 本当に?」

「嘘だろう?」

「何で、俺がここに?」

「ちっとも意味が分かんねぇ」


 皆、今までの記憶がないようで、周囲をキョロキョロと見回していた。そこに嘘はないように思われた。その彼らは知らない間に、ノースデン山に入り込んでしまっていたことに対し、恐れを抱き始めた。


「俺たち、立ち入り禁止の場所へ入り込んで、罰せられるのか?」


 記憶はないとはいえ、彼らのした破壊行動は許されるものではないかも知れない。でも、自覚を取り戻した彼らには常識があったようで、このノースデン山に許可なく入り込んだことに対し、取り返しのつかないことをしたと思い始めたようだった。


「申し訳ない。どうか罰せられるのは俺だけでお願いします。家族は見逃して下さい」

「俺も。お願いします」

「俺はどうなってもいい。家族だけは見逃して下さい」


一人の石工がその場に跪き、皆がそれに続いた。石工達は家族が連座となって罪を償うことを恐れていた。必死に何度も処罰なら自分だけをと、訴え出た。


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