30話・リョクショウは何者?
「どこで彼らは会ったのだろう? 会ってもいない人物をいきなり見染めるのは難しい」
「ブルーノさんも不思議がっていました。リョクショウさんは目立ちすぎるから、あまり外に出歩かないはずなのにって」
リョクショウは美人だとは思う。それもちょっと異様なぐらいの美しさが感じられた。人外とでもいうような──? リョクショウの家を訪れた時に、アコダは何と言っていた? 確か──。
──おまえさんからは竜胆の気配が感じられる。まさかおまえさん、竜胆を食らったのか。
「そう言えば、リョクショウさんって何者なのでしょう? 伯父さんはリョクショウさんに、竜胆の花の精である竜胆さんを食したのか?って、彼女に聞いていましたよね?」
「ああ。あの女からは竜胆の匂いがしていたからな。同族でないことは確かだ」
「そうなると、花の精ではない他の妖精?」
妖精って共食いしたりするのかしら? 少し、ゾッとした。その恐れのような気持ちが顔に現れていた様で、アコダに言われた。
「安心しろ。妖精たちは共食いしない。もしも、そんなことをしたら妖精界を追われる。妖精にとって妖精界は永遠の楽園のようなものだ。そこから追われることを死ぬほど嫌っている」
安心しろとは言われたが、リョクショウは妖精でないとなると、その本性は? 共に暮らしているブルーノの安否が気になって来た。大丈夫だろうか?
「伯父さんは、妖精事情に詳しいのですね」
「竜人族と妖精界は、隣り合っている世界だからな。人間から見れば、隣国の感じだ」
人間界で言うなら、隣同士の国ってことらしい。
「それにしてもおかしなことばかりだ。ノースデン山には、青金さまの結界が張られているというのに、どうやって石工達は山に入り込んだ?」
青金さまの許しがなければ、誰も入れないはずなのに。と、アコダは唸る。
「結界? 私達は入れましたよね?」
「ノアールがまじないをしてくれただろう? あれのおかげで俺たちは何ともなかったんだ」
「おまじない?」
言われてみれば、ノアールは山に入る前に、指で皆の額に触れていた。何だろうと思ったら、アコダが「おまじないのようなものだ」と、言ったのを覚えている。
「あの、指で額に触れた?」
「そうそう。それだよ。ノアールは青金さまに認められた存在だからな。不在の折には託されている」
アコダの話で、ノースデン山には許可がなくては入れない意味が分かった。つまり普段は結界が張ってあるので、誰もが中に入ることが出来ないという事なのだろう。そうなるとアコダも言っていたが、謎は残る。石工もそうだけど、あのブルーノも外から来た者のように思える。外からは入れなくても、もしかしたら──?
「伯父さん。中から誰かが呼んだ? いえ、招いた可能性はないですか?」
「招く?」
「ノースデン山が、外から侵入出来ないのは分かりましたが、絶対ではないですよね?」
「ああ。何かのきっかけで穴が開いたりするし、傷がつく場合もある。それを踏まえて山の管理人を置いていたはずだから……?」
山の管理人は、山の中だけではなく侵入者を防ぐ役目もあったようだ。
「サーラは、あのノースデン山に住む者が、外に住む者を招いていると言いたいのか?」
「はい」
アコダと話しているのを聞いていたノアールが、私の言いたいことに気が付いてくれたようだ。




