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29話・リョクショウの求婚者?


「あなた達──」

「おまえ達。まだ反省が足りないようだな?」


 私が前に進み出ようとしたのを、カルロッタが引き留め、彼女が前に出た。彼女の声音は低く、普段、私にかけてくれるような優しい声音とは違っていた。凄みを帯びた声だった。その声音に驚いたのか、男たちは怯んでいた。


「な、なんだ。おまえ」

「この間の女?」

「とにかく俺たちの邪魔だけはするなよ」


 二人の男はカルロッタを見ると顔色を変えて、後退りした。絡んでいた男に投げ捨てるように言い放つと、慌てて立ち去った。その時にふと、一瞬だけどこかで嗅いだような匂いが鼻を突いたが、すぐに霧散した。



「大丈夫ですか?」

「助けて頂き有難うございました」

「あなたはリョクショウさまのお屋敷で会った?」

「あの時のお客さまでしたか? 何のお構いもなく失礼いたしました」


 カルロッタが二人の男に絡まれていた若者に声をかけると、その若者はリョクショウのお屋敷で会った、ブルーノと呼ばれていた男だった。彼は男たちが立ち去った方向を見て安堵した様子を見せた。


「あの男たちは石工か?」

「はい。彼らはこの辺りにある鉱石を根こそぎ掘り起こすので、それは困ると伝えているのですが、なかなか分かってもらえずにいます」

「リョクショウがさせているのではないのか?」

「彼らはリョクショウの求婚者です。何故か彼らはリョクショウが、孔雀石で作った物を差し出せば喜んでくれると思い込んでいるようでして、止めてはいるものの、聞いてくれないのです」

「彼らの名前は分かりますか?」

「はい。先ほどの者達はガリとギャリーで、ゲーナにイリヤ、ポール、ピーター、ペチャ、ペトル、シシ、レヴ、ワシリ、ザウルの12名ですね」

「……!?」


 ブルーノがあげた12名の名前は、失踪したと思われている石工の名前と同じだった。





「行方不明とされていた12名の石工は、リョクショウの求婚者だった?」

「ブルーノさんの話だと、石工達は皆、山の中にテントを張って暮らしているようで、石を掘り起こしては、勝手に宝飾品や小物を作ってリョクショウに献上にやってくるらしいの」

「勝手にねぇ」


 領主館に帰ってその晩、晩餐の席でブルーノに会い、聞いた話をすると、ノアールは怪訝な顔をした。


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