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27話・私の知らないこと?



「ロージイさん達は、人間の弟子を持ったことはある?」

「わしらは弟子を持つことはない。子供たちもそうじゃ」

「じゃあ、青金さまに魅せられてあなた方に近づきたいと接触してきた人はいない?」

「おらんな。人間がわしらに会いに来たことなどない」

「そう」


「それが何か?」

「知り合いのパン屋さんのお父さんなのだけど、腕の良い石工だったらしく、奥さんと結婚したばかりだったのに、ある日青金さまを見た。これは何かの啓示に違いない。あの人の下で修業をしたい。自分の力を試してみたいと言って家を出て行ったそうなの」


「いつぐらいのお話で?」


「奥さんのお腹にいたお子さんが今はパン屋のご主人をしているから、三十年か、四十年位前? の話だと思う」

「ほほう。初めて聞く話ですじゃ。青金さまはあまり人前に姿を現さないお方じゃ。その者が見たのは、果たして青金さまが微妙なところじゃのう」


 スターシャの夫が見た青金が、偽物だったかもしれない可能性が出て来た。そうなるとスターシャの夫は、どこに行ってしまったのだろう?


「サーラ。その話は母と別れるために、父がついた嘘かも知れないってダニールが言っていただろう?」

「ノアールさん。あの時、見せてもらった青い鳥は、石で作られているのに、まるで生きているようで精巧だったじゃないですか。この地方に住む石工達は「伝説の石工」の話を聞いて育っているのでしょう? あれぐらいの腕前を持っていた人なら、自分の力を試してみたいって思うのは当然じゃないかと思うのです」

「ほほう。生きているような青い鳥ですと?」


 ロージイが、ダニールの父が作った鳥に興味を示したようだ。


「一度、その作品を見てみたいものじゃ」

「それは王都のパン屋さんにあって」

「では、王都に伺った時にこっそり覗かせて……」

「旦那さま。いけませんよ。王都なんて人間の多い場所じゃないですか。人間に見つかったら何をされるか分かりません」


 ロージイが王都にちょっくら行って見てこようと言い出したら、チムがきっと睨みつけた。余計なことを言ってしまったかもしれない。


「ごめんなさい。私が変なことを言ったから」


 チムは人間のことを良く思っていないようだった。私も一応、人間よりなのでそういう発言を聞くと申し訳なくなる。


「あの、サーラさまは関係ありませんよ。あなたさまは今、人の姿はしておられるけど、人魚の姫なのでしょう?」

「いえ、お姫さまだなんて。ただ、人魚の血を引くだけです」

「まあ、なんて謙虚なお方でしょう」


 正直に話しただけなのに、チムは涙ぐんでいた。感激屋さんなのかな?


「そうじゃろう? わしなんて目の前に現れても嫌な顔一つされなかったぞ」

「ロージイさんも、チムさんも大変可愛らしいと思いますが?」

「可愛らしい? 汚らわしいではなくて?」

「えっ? そんな酷いことを思ったこともないです」


 どういうことなのか分からない。そこには私の知らない事情が隠されているようだ。アコダがチムに言った。


「チム。この子は何も知らない。今まで人間として、貴族に使用人として仕えてきた。人魚の暮らしを知らない」

「使用人として……? 大層、苦労されてきたのですね」



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