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21話・青金さまは竜人でした



「どうして止めるのですじゃ? 坊ちゃん?」

「今は誕生祭だぞ。おまえ、邪魔する気か?」

「ああ、そうでした」


急にがっかりしたようにロージイは動きを止め、ノアールはすぐに手を離した。



「ロージイが何も知らないという事は、恐らくあのリョクショウの独断だろう」

「竜胆の死を隠し、リョクショウにその後継を託すなど一体、ブルーノは何をしておったのじゃ」

「ブルーノ?」


 ブルーノと言えば、確か私達がリョクショウの前から辞するときに会った若者に違いない。


「竜胆が40年以上も前に保護した男じゃ。崖から落ちて足を捻っていた上に、記憶を亡くしていた。不憫に思って竜胆が連れて帰って世話をしたのじゃが、段々と親しくなったようでずっと共に暮らしていた」

「竜胆は結婚したのか?」

「いいや。恋人と言うか、内縁の夫という感じかのう。ブルーノには今までの記憶がないから、奴の過去を気にした竜胆がそれを望まなかったのじゃろうて」


竜胆の内縁の夫とされるブルーノはまだ、二十代としか思えない若者だった。40年以上も前に竜胆に会っていたなら、すでに40歳を超えていてもいいはずなのに、外見は若々しく中年男性には見えなかった。そしてそれとは別に気になることがあったので聞いてみた。


「竜胆さんとは何者なのですか?」


「竜胆は花の精なのじゃ。このノースデン山に群生する竜胆の花のな。青金さまは、その竜胆に力を与え、この山の管理をすることを命じられていた」

「青金さまって、本当にいるのですか?」

「何を馬鹿なことを。この山に住んでおられるぞ。このノースデン山の主人じゃから」


この山は魅力的だ。ノームに花の妖精? まだまだ未知の存在が現れそうでわくわくする。でも、それに青金さまが加わったことには疑いを持ってしまった。ダニールは架空の神さまのようなことを言っていたし、まさか実際にいるなんて思わなかった。

ロージイは、怪訝そうにノアールを見る。罰が悪そうにノアールは答えた。


「まだ、サーラには何も伝えていない」

「ヘタレですな」

「それは関係ない」


 ロージイが呆れたように言えば、アコダ夫婦もそうそうと頷き、ノアールは否定していた。



「このノースデン山って、アイオライト公爵家が所有しているのですよね? そうなると、その所有している山に、青金さまが住んでいるのですか?」

「そこはちょっと違うな。アイオライト公爵を名乗っているのが青金さまだ」

「アイオライト公爵が、青金さま? 青金さまは山の神さまなのですよね?」


疑問符が頭の中に増えていく。私の疑問に答えたのはアコダで、実際に青金さまは存在し、表向きにはアイオライト公爵を名乗っていると言った。


「山の神さまというのは、青金さまの正体を目撃した人間が、勝手に崇め奉り始めたらしい。人間たちにとっては俺たちの本性は驚異的に感じられるそうだから」


 アコダの意味深な言い方でピンときた。


「もしかして青金さまって竜人?」

「その通り。俺達の主でもある」

「それって竜人族の王さま?」

「そうだ。会ったら失礼のないようにな。こういう話は最初にしておくものだぞ。ノアール。サーラも竜人の血を引いているのだから」

「そうだな。済まなかった。サーラ」


 アコダに言われて、ノアールは素直に非を認めた。ようやく分かってきた。竜人族の王である青金は、このヴィジリタス国では人間の姿で暮らしていて、アイオライト公爵を名乗っているという事なのだろう。

 

「まあ、言いにくいのもあるよな? なんってたってノアールは青──、痛ででで……」


 何かを言いかけたアコダは、カルロッタに脇腹をつねられていた。


「それは本人から伝えるべきことよ」

「本人が言えないから、俺が代わりに──」

「そういうのを余計なお世話と言うのよ」


 はいはい。と、涙目になりながらアコダは口を閉じた。全然、何のことか分からないけど、アコダ達夫婦は仲が良くて羨ましくなる。自分もいずれ誰かと結婚したとしたら、アコダ達のように何でも言いあえる仲でありたいと思った。


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